パルコ・プロデュース2022「VAMP SHOW」 岡山天音 インタビュー

三谷幸喜 作の幻のホラー・コメディが、21年ぶりに復活する。とある秘密を抱えた陽気な若者5人が、さびれた山間の駅でひとりの女性と出会い、駅長も巻き込んで真夜中の騒動を繰り広げていくこの物語。演出を手掛けるのは河原雅彦、キャストには岡山天音、平埜生成、戸塚純貴、塩野瑛久、久保田紗友、菅原永二と、魅力的な面々がそろった。陽気でゾワゾワする本作に、岡山天音はどのように挑むのか。話を聞いた。


――本作は1992年初演で、21年ぶりの上演となります。ご出演にあたり、どんなお気持ちですか。

出演が発表になってから、自分とは離れた世代の方から「VAMP SHOWやるんだね!」とお声掛けいただくことが何度かあったんです。もともとこの作品の存在は知らなかったんですが、これだけ人の記憶に残っている作品なんだと感じましたし、そこに選んでいただいた喜びはありますね。とにかくポップなイメージを抱いていて、台本や概要を読ませていただいて自分がどんなふうに変貌していってしまうんだろう、と怖くもあり、楽しみでもあります。これまでの自分はシリアスな舞台が多かったので…。


――作品のどんなところに魅力を感じていますか?

ひたすら登場人物たち、ヒロインと駅員さんを含め7人の会話で成り立つ作品で、まだこの舞台がどんな色合いのものに仕上がっていくのかは正直なところ明確には見えていません。公演が始まってから変わっていくものかもしれないですし。ただ、演じる側の視点としては、もうほんとに派手な作品。河原雅彦さんが演出されることもそうですけど、それを割と年齢の近いキャストで、みんなで作っていく作品だと思ったので、そういう部分はプレイヤーとして興味がありますし、刺激的な仕事になるんじゃないかと魅力的に感じています。


――コメディ要素のある作品に出演されるという部分で、意気込みや気構えなどはありますか?

これまでは絵本が基になっている作品とかシリアスな内容が多くて、ここまでコメディの要素がある作品は初めて。でも、作品に臨む気持ちとしては正直あまり違いはありません。でも内容的には、台本の決められた枠からはみ出していく、はみ出していけるように作られている部分もあると思います。毎公演、台本に書かれていることを同じクオリティで再現するというよりも、即興的な瞬間が増えるんじゃないかという予感はあって、共演の”吸血鬼たち”と突発的な何か起こしてくれるんじゃないか。そこから新しい世界が広がるんじゃないか、という気がしています。スリリングで楽しみですね。
まだ昔のオリジナルの脚本をどれくらい忠実に再現するのか、それとも全く違うポップなものにしていくのか、みたいな部分がわからない段階なのですが、令和版VAMP SHOWとしてどれだけ新しい形にアップデート出来るのかは楽しみです。もちろん、ベースはあの当時のものを踏襲するんですが、当時のキャストの方はずっと舞台でお芝居をされてきた方が集まって作った作品なんですね。今回は映像を中心に活動している人が多くて、当時のビジュアル的なデコボコ感よりも割と系統のそろった今っぽい感じの俳優が集まっているんです。その時点で同じものにはならないと思うんですよね。そういう部分では現代版みたいなところになると思います。

 


――作の三谷幸喜さん、演出の河原雅彦さんの印象をお聞かせください。

三谷さんは、もう子どものころから存在を認識している方で、僕ら世代からすると家族で見に行く映画を作る人って印象です。『THE有頂天ホテル』ですとか、有名な方もたくさん出ていてお祭り感のある作品を作られる方っていうイメージです。今回の台本も、キャラクターの行動や展開のダイナミックさなど、そこに通じるものを感じましたね。河原さんは、何か底知れない印象ですね。稽古が始まって1週間くらいなんですが、ミステリアスで、まだまだ知り尽くせない何かを感じています。たぶん、いろんなチャンネルがあって掴み切れない感じなんですよ。とはいえ、捉えてしまおう、みたいな気負いもないんですけどね。


――本作には吸血鬼が出てきますが、吸血鬼のイメージって?

正直、吸血鬼そのもののイメージは自分の中になくて。時代は当時に書かれたものなので、ちょっと現代とはずれていると思うんですけど、出てくるキャラクターは、まさにこの日本で実生活を送っている若者の手触りなんです。生々しさがある5人なんですね。だから、ファンタジーの世界観で描かれた吸血鬼というよりも、日本の片隅に若い吸血鬼が居たら、みたいな感じなんですよ。ファンタジーと現実のギャップみたいな、その差はシュールで面白いと思います。
河原さんも、太陽の光を浴びれないとか、血しか飲めない葛藤とか、そういう実感を、コメディなんだけどシリアスな作品と同じように掘り下げてほしいといわれました。若者たちが、ファミレスでダベっているテンションで、血をすする話をしている、その具合が面白いなと思いますね。


――若者5人のワチャワチャしている感じも大きな魅力だと思いますが、岡山さんが演じる島はどんなキャラクターだと捉えていますか。

僕が演じる島だけが、あの中で同級生じゃなく年下なんですよ。大学のサークルの集まりなんですが、それぞれがぞれぞれ違う方向に突出してしまっている先輩ばかりで、非常にキャラが濃い。でも、それぞれにリスペクトしているところがあって、島はみんなのことが大好きなんです。基本的にみんなバカだけど、とっても尊敬している。でも、演じる人によって役の形は変わると思うし、せっかくやらせてもらうのであれば、過去のキャラクターに寄せるのではなく、自分たちがやる意味を見つけたいですね。横並びで舞台上に立つ芝居なので、それぞれの差というか、個性が見えるように。同世代で、遠目から見るとフォルムが似ている5人かもしれないけど、やっぱり人って全然違うんだな、と思ったりしています。


――コンセプトムービーも制作されていますが、撮影時の思い出は?

頭にコウモリの羽をつけているんですけど、あれが折れちゃったり落ちちゃったりして大変でした(笑)。動きの多い撮影で、渋谷PARCOが閉店してからの撮影だったので、深夜2時にみんなで踊ったりして、結構よく分からないようなトランス状態でした。時間的に、クラブ帰りのお客さんとかが居たりして、そこにあの衣装でワチャワチャやっていたので、だいぶ目立っていたと思います。通りかかったお兄さんに指さされたりしましたね(笑)


――現在、舞台やテレビ、映画などさまざまなお仕事をされていらっしゃいます。それぞれの現場の違いを実感されることはありますか

わかりやすいところだと、発声であったり、どう動いてどう体で表現していくのか、みたいなところはあるんですけど、作品ごとでの違いが大きいですね。舞台とドラマの差とかではなく。同じドラマでも、やっぱり作品によって体感が全然違いますし、今回は舞台でコメディというのは初めてですから。違う乗り物に乗り換えているような、乗用車からガンダムに乗り換えて操縦しているような感覚です(笑)。幕が上がるころにはガンダムからスポーツカーくらいの感覚になっているかもしれないですけどね。今回は思いっきりリミットを外した作品になりそうで、楽しみです。


――最後に、公演を楽しみにしていらっしゃる方にメッセージをお願いします!

ひたすら非日常を味わいに来ていただきたいです。夏の思い出になるようなエンターテインメントを、観に来てくださるみなさんにぶつけられたらと思っていますので、夏のイベントやテーマパークじゃないですけど、観終わったあとにそんな感覚になってほしいなと思っています。ぜひお越しください!

 

インタビュー・文/宮崎新之
スタイリスト/鹿野巧真
ヘアメイク/SUGANAKATA(GLEAM)