左より鈴木大河(IMPACTors/ジャニーズJr.)、小関裕太、三浦宏規、高野洸、牧島輝、神里優希
中国の春秋戦国時代を描く人気コミック『キングダム』が、TVアニメ、実写映画に続き舞台化されるのは既報のとおり。壮大な歴史絵巻であり、血湧き肉躍るアクション劇でもあり、青春群像劇でもある物語が、生身の人間が演じる舞台でどんな姿となって我々の前に現れるのか?期待は高まるばかり。
公演は2023年2月から東京・帝国劇場を皮切りに、大阪・梅田芸術劇場メインホール、福岡・博多座、北海道・札幌文化芸術劇場 hitaruにて上演予定。
本番に向けて、信役の三浦宏規と高野洸、嬴政・漂役の小関裕太と牧島輝、成蟜役の鈴木大河(IMPACTors/ジャニーズJr.)と神里優希、演出家の山田和也がインタビューに応えてくれた。
――まず、演出家の山田和也さんにお伺いします。アニメ化、映画化に続いての舞台化です。最初に話を聞いたときはどう思われましたか?
山田「最初、自分がやることを知らずにニュースで『キングダム』の舞台化を知ったのですが、そのときはあの『キングダム』を舞台化するなんて、どれだけ無茶なことをするんだろうと思いました。そのあと、自分がやると聞かされ途方に暮れましたね(笑)」
―― キャストのみなさんは原作を読まれてどのような感想を持たれましたか?
三浦(信役)「信役が決まってから原作を読ませていただいたのですが、まず世界観の壮大さに惹かれました。信を通して作品を読むことで、辛いときは辛くなるし、戦っているときは心から勝ってくれと思うし、信の気持ちになって読むことができました。きっと読者の方もハラハラドキドキしながら中華統一を目指して一緒に冒険している気持ちになっているんだろうなと思いました」
高野(信役)「今回のお話をいただく前に映画版は観ていて、ドロドロになりながらも凌ぎを削って戦う春秋戦国時代のストーリーに熱い気持ちになったのを覚えています。今回、信役のお話を頂き、原作も読ませていただいたのですが、もの凄いスピードで読みました(笑)。今はもう次の戦いが待ち遠しいです」
小関(嬴政・漂役)「この作品の面白さは、驚きがたくさん詰め込まれているところ。人情や愛、いろいろな要素がありますが特に“知略”の部分に惹かれました。(今回は登場しない)李牧というキャラクターがいるのですが、「こんな角度から攻めてくるんだ?」と思ったら、対抗する策ももの凄くて読者としてのめり込んでしまいました。今回はダブルキャストですけど、それぞれの組み合わせを見せることによって「こういう読み方があったんだ」、「こういう読解になるんだ」という面白さも“知略”の部分と似ているかなと思います。自分なりに『キングダム』の“知略”の面白さを見いだせたらと思います」
牧島(嬴政・漂役)「『キングダム』は本当に面白くて何度も読み返しています。信が大将軍になるとわかっているのに、めちゃくちゃハラハラしてドキドキしますからね。キャラクターの個性も強いので、ひとりひとりのキャラクターに思い入れも強くなっていきます。敵国にもそれぞれの正義があったりしますし、歴史を勉強したくなりました。あと、効果音が好きですね(笑)。みんなが一斉にひざまづくときの「ザッ」とか、音で画が想像できるのでマンガはそこが凄いなと思います」
鈴木(成蟜役)「このお話をいただく前からマンガも映画も観ているくらい好きです。基本は史実に基づいているんですけど、それ以上に登場人物の個性が立っているので、その人が実際に言っていない言葉も、そう言ったように感じさせてくれるんですよね。例えば壁というキャラクターは史実では死ぬと書いてあるんですけど、読解によって死ななかったかもしれないことにしたり。マンガならではの展開も楽しめるのが魅力です」
神里(成蟜役)「映画も原作も読んでいますけど、男の友情だったり、戦いだったり、常にワクワクさせてくれる展開が『キングダム』の魅力だなと思います」
山田「舞台は生身なので、向かい合って戦うことの臨場感、その結果、身体に起きる疲弊や汗や息遣いみたいなものはお見せできると思います。激しいアクションをいかに伝えるか?そこにいちばん手間暇をかけることで映像やコミックとは違う、観客の想像力を掻き立てる演出ができればいいなと思っています」
―― 演じる役柄についてお聞かせください。
三浦(信役)「信のいちばんの原動力は、目の前で漂を亡くしているということが大きいと思います。小さい頃から一緒に暮らしてきて、彼しか頼れる人がいなかったわけで。そんな大親友を目の前で亡くした信の気持ちは計り知れない。信は物語が進むにつれ成長していきますけど、漂の存在があるからこそ大変な出来事を乗り越えていける。そういう意味では(漂の死のシーン)は、信をやるうえで凄く重要だと思うので心を込めて大事にやりたいと思います」
高野(信役)「信はまっすぐ突き進むところがありますけど、内に秘めている人間力、例えば敵だとしても罪がない人は殺さないという感情を大事にしているところがついていきたいと思わせてくれてカッコいいです。味方の士気をあげるところも素敵ですし。演じる上でハードルが高いなと思いますけど、カッコいい信を見せたいですね」
―― 小関さんと牧島さんは、嬴政・漂役という二役を演じることになります。まず漂に関してはいかがですか?
小関(嬴政・漂役)「政も漂も顔が同じだけでまったく違う人物なのはみなさんご存知だと思うのですが、どちらとも共通してミステリアスな人物だと思っています。漂は基本的に回想で出てくるんですけど、それは信の目線の漂なんですよね。だけど、実際に演じるときには漂はいったいどんな景色を見ていて、どんなふうに過ごしてきたのか? を考えます。そういう意味では凄く余白がある。まだ、どう演じるかの答えには至っていないのですが、作りがいがあるキャラクターなんじゃないかなと思っています」
牧島(嬴政・漂役)「漂はいつもニコニコしているけど、冷静なところもある。実際にいたら自分も好きになっちゃうなと思えるところが魅力的だと思うので、その愛される部分を大事に演じたいと思います」
―― 嬴政はのちに始皇帝になる存在です。漂とはどう演じ分けられますか?
小関(嬴政・漂役)「私たちは政が中華統一を果たすのを歴史で知っていますけど、当時、政が現実味のない夢に突き進んだ根源ってなんだったんだろう? と思うんですよね。信念を持った青年が自分と周りを信じることによって中華統一をしていく。そういう本人の精神状態ってどうなんだろうというのは僕にとって政を演じるにあたってミステリアスなところで、そこにちゃんと現実味を持たせられるか? 読解をするのが今から凄く楽しみです」
牧島(嬴政・漂役)「『キングダム』って国と国の争いの話なので、いろいろな王様が出てくるんですけど、そのなかで自分がどの国に住みたいかって考えると、僕はやっぱり政が収める国に住みたい。強いし、民のことを考えているし、いろんなものが身体のなかで渦巻いていて、常に戦っている。持ち上げられて王様になっているわけじゃなく、自分で先導して中華を統一しようと大きな夢を抱えて戦っているところは男としてカッコいいと思うので、そういう部分を上手く見せられたらと思います」
―― 嬴政の弟で、玉座を狙う成蟜役の鈴木さんと神山さんはいかがですか?
鈴木(成蟜役)「成蟜は読者が『キングダム』を読んでいちばん最初に嫌いになるキャラクターだと思います。僕も本当に嫌いでした。あ、今はめちゃくちゃ好きなんですけどね(笑)。でも、逆に考えれば成蟜がいなければ『キングダム』の物語がはじまらなかったともいえるくらい大事なキャラクターだと思うので、観ている人から「なんだあいつ?」って思って貰えるよう頑張りたいと思います」
神里(成蟜役)「とにかく性格が悪くて、理不尽な奴ですよね。でも、ちょっと寂しい部分もあるんだろうなと思います。純血の王族の血を引いているのに王になれなかったことは悔しかったと思います。僕も昔はすっごい生意気で、親に迷惑をかけるくらいのやんちゃ坊主だったので、いよいよそれを活かすときがきたなと。しっかり嫌われるように頑張ります」
―― 今回の『キングダム』はダブルキャストですが、様々な組み合わせで演じることの魅力や難しさは?特に三浦さんはミュージカルでダブルキャストの経験が豊富です。
三浦「ミュージカルの場合、決め事があったり、振り付けが決まっていたりするのですが、今回はミュージカルではないので、ダブルキャストでやることでけっこう(演技が)変わってくるのではないかと予測しています。僕と小関くんとの掛け合いと、僕と牧島くんの掛け合いでは、ふたりの演技が違うのは当然として、それによって僕の演技プランも変わってくると思うので。普通のミュージカルより、その違いというのは色濃く出るんじゃないでしょうか。それが面白いところでもあり醍醐味だと思います。早く稽古に入って、どんな風にやろうか考えたいですね」
高野「僕はダブルキャストでやらせてもらうのははじめてなので学ぶことが多いと思います。(三浦)宏規くんはダブルキャストの達人なので、いろいろ教えて貰いつつ楽しみたいですね。いろいろな組み合わせが何通りもあって、そこでしか生まれないものもあって、うん。きっと面白い作品になると思います」
―― 最後、演出家の山田さんから一言お願いします。
山田「私は40年近く帝国劇場にいて、たくさんの思い出があります。2025年で帝劇は一旦、クローズしますけど、次の帝劇に向けてふさわしい作品になっていければいいなと思っています。観終わったあと、清々しい力強さを持って帰っていただける舞台らしい『キングダム』をお見せしたいと思います」
―― ありがとうございました。
取材・文:高畠正人
写真:植田真紗美