『フリー・コミティッド』稽古場レポート

2018.06.27

1人38役!実力派俳優成河が贈る、リアルタイム・ノンストップコメディ-「フリー・コミティッド」。今回は、6月28日に初日を迎える本作の稽古場を取材した。

 

売れない俳優サムは、マンハッタンの超人気レストランの予約電話受付係をしている。

金持ちの社交界夫人、レストラン支配人、日本人観光客、カリスマ・シェフ、サムの父親、変わり者のボーイ長、ドミニカ共和国出身のコック、大柄でタフなフランス女、医者、優しい性格のウェイトレス、下っ端のマフィアなど、様々な個性的な人物の難題、鳴りやまない電話に振り回されるサム。自らの夢を追いながら、予約電話受付係として必死に頑張るサムに、安らげる日は訪れるのだろうか…!

今回稽古をしていたシーンは、サムがとある大仕事を終えてへこんだ後の1シーン。陽気な客と、へこんだサムの対照的な二人のやり取りから始まるシーンである。始まる前には、一人38役が実際どのように表現されるのか不思議に思っていたが、稽古がスタートし、すぐに納得した。こんなにも勢いよく、テンポよく、正確に、複数の役を演じ分けることが出来るのか!至難の業だと思うが、成河はそれをやってのけている。
演出の千葉哲也と率直な意見を交わしあいながら、ますます豊かさを増していく成河の中の出演者たち。様々な役が目の前ではっきりと磨き上げられていく、二人の会話はとても興味深い。

主人公サムを動かすのは、四方でなり続ける電話のベル。右に行ったり左に行ったり、まさに電話に翻弄されるサムと、電話によってサムを翻弄する様々な人物を、成河1人で演じ分けているというから驚きである。
セットには、いかにもNYといったグッズたちが並べられ、超人気レストランといえどもその裏方の忙しさが伝わってくる。稽古場といえど、セットは隅々まで作り込まれており、「電話機のコードが長くなりました。」「ペンを少し太いものに変えました。」というような細かな気遣いも忘れない。スタッフ全員で細かに作り上げていく様子が見えていた。

38人それぞれの特徴を身体全身を使って表現をし、すべての動きに繊細な意味、イメージが付随している。彼のダイナミックで迫力のある動きは、その一つ一つが全て決まっているようで演じるたびに変わっていくのだが、そこには何度見ても飽きない面白さがある。

演出の千葉と主演の成河の二人によって考え抜かれた本作品、演劇を志す人にはもちろんのこと、コメディタッチに描かれているので演劇初心者も楽しめる作品となりそうだ。

ドタバタなNYで繰り広げられるヒューマンドラマ、極上のコメディを180席の超密着空間でご堪能あれ!

 

撮影/岡千里

 

≫成河 インタビューはこちら