「クロス ジンジャー ハリケーン」は、小手先では作れない気持ちの熱さが必要な作品です (遠山)
梅棒15th “RE”PLAY『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』 梅棒より鶴野輝一、遠山晶司を迎えたオフィシャルインタビュー到着

©源 賀津己

11月18日(金)〜27日(日)に東京・サンシャイン劇場、12月3日(土)、4日(日)に名古屋市芸術創造センター、12月8日(木)〜10日(土)にCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて、梅棒15th “RE”PLAY『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』が上演される。今作は2015年8〜9月に俳優座劇場・ABCホールで上演した、梅棒 4th PLAY『クロス ジンジャー ハリケーン』の再演。
今回は、梅棒より鶴野輝⼀、遠⼭晶司を迎えたオフィシャルインタビューをお届け。

 

【オフィシャルインタビュー】

――今回の舞台は、2015年に上演した『クロス ジンジャー ハリケーン」の再演になります。まずは、7年前の初演のことからお伺いしたいのですが、再演とはいえ梅棒作品はネタバレNGな箇所が多いので、そのあたりは避けつつ、本編の思い出を教えてください。

鶴野「本編の思い出!? 言えない範囲の話や事件はいっぱいあるんですけど……(笑)。あ、あります!!ネタバレになるので詳細は避けますが、俺がうめさん(梅澤裕介)で初めて泣いたのが『クロス ジンジャー ハリケーン』かも。そういうシーンがあります。初めてというか唯⼀ですね。それ以外、うめさんで泣いたことはない(笑)。ただ、『クロス ジンジャー ハリケーン』にはあって、⼀番好きなシーンかも」

遠⼭「ずっと言ってるよね」

鶴野「今回も、うるっと来そうな気もしますね。知ってるのに(笑)」

――(笑)。そして、今回新たに『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』として上演となりますが、お二人が考えるこの作品の魅力は?

鶴野「今回で梅棒の公演は15回目になりますが、15回のなかで⼀番パワーのある作品ですね。あとは、中学男子校的な色が強い。そこが強みです」

遠⼭「あとはシンプルに、夏の出会いと別れをみんなで感じられるというか、青春のひとときみたいなものがあって、共感しやすい部分もあるのかな?って。舞台上も客席も⼀緒になって、夏の楽しさ、切なさを感じながら、⼀体になれる気がしてて、それが好きですね」

鶴野「作品を振り返ってみると、『クロス ジンジャー ハリケーン』って、梅棒の中では、結構レアな始まり方かもしれないです。⼀曲目って、世界観を伝える大事な役割があるんですけど、この作品は情緒を大事にしながらうまく取り入れてる」

遠⼭「オープニングから、情緒や情感、景色をじわっと想像しにいくというか、ゆっくり入る感じが、この作品はありますね」

鶴野「この始まり方は、『クロス ジンジャー ハリケーン』と、第⼀回公演の『スタンス』だけかもしれない。昔の(伊藤)今人さんっぽいというか、結構そういう感じが今人さんは好きだったから、いまとなってはレアなケースかも。どちらがいいとかはないけど、当時の今人さんの色と梅棒の色って、もしかしたら少し違う部分もあるのかも。今人色が出ているオープニングだなって、個人的に思いました」

遠⼭「確かに」

鶴野「これを本人が読まないことを願ってます……(笑)」

©源 賀津己

 
 

――そういう意味では最近梅棒を見始めた人に、少し新鮮に映るかもしれないですね。

鶴野「そうかもしれないですね。梅棒って、わちゃわちゃっと始まることが多いので。あと、『クロス ジンジャー ハリケーン』って、心臓を燃やす、熱くするタイプの作品というか」

遠⼭「大前提として、その心持ちじゃないと駄目だ、その心意気があって初めて「良い!」みたいなところがある。なぜそうなっているのかは分からないけど、それがないと絶対だめって思っているんですよね」

鶴野「僕、今回オープニングを担当するんですけど、いつもは振付の効率も考えるのに、この作品に関しては違うなと思ってて、多少の無茶が必要だと考えながら、振りを作ってます。そうしないと、これをやる意味がないなって」

遠⼭「ただ、稽古が始まったばかりの今のところは、大変だから全然ポジティブな感情が湧き上がってこない
(笑)。踊り終わってみんな両膝をついて、しんどそうなポーズをみんなしてる」

鶴野「これからこれから。これからです!(笑)」

 

――稽古のお話も伺いたいのですが、客演の方がいらっしゃるのと、梅棒だけでは、やはり違いますか?

遠⼭「僕は人見知りなところがあるので、客演さんに対して最初、毎回緊張するんですが、今回久しぶりに梅棒だけなので、ちょっと和気あいあいとしているというか(笑)。ダイレクトに「あ、楽しい!」って感じたり。序盤から意見も活発に出てるし、前までは動きをすり合わせながら、合ってる気がする、OK! みたいな感じだったりしたんですけど、今はそこで単純に笑ったりとか、やっぱおもろいねみたいな。(楢⽊)和也がひょうきんだなとか、そういうことを⼀つ⼀つ楽しんでいる自分がいますね」

鶴野「梅棒って構ってちゃんが多いので、頑張って盛り上げたり、笑い取りに行ったりして、客演さんが喜んでくれて嬉しい、みたいな部分があったんです。だけどいま、梅棒だけでやるもすごく楽しくなってきました。改めて思うのが、自分って梅棒が好きなんだなって。今回の作品を通じて、自分から生まれているエネルギーは、ダイレクトに梅棒に対してなんだなって感じがしています」

遠⼭「そういえば、『クロス ジンジャー ハリケーン』の話に戻るんですが、僕は留学で少し梅棒から離れていて、戻ってきたタイミングで参加したのがこの作品だったんです。僕が留学する前のつるちゃん(鶴野)って、今みたいにアグレッシブにコメディをやる子じゃなくて、恥ずかしがり屋っていう印象で。もちろん、熱く踊る子ではあったけど、笑かすとか、滑稽に演じるタイプではなかった。なのに、僕が梅棒に戻ってきたら、ものすごくアグレッシブになってて。受け身を考えずにすっころんでたり、絡んできてグイグイ引っ張ってる様子を見て、なんでこんな面白くなってんだ!?って思ったことをすごく覚えています」

鶴野「その感じはいまの方があるかもしれないですね。」

遠⼭「つるちゃんは、年を重ねていくうちに、笑いの打率が上がっていて、色んな角度からテクニックを駆使してシュートを決められるようになった。だから初演の時よりも、ゴール決定率が上がってるだろうなっていう期待値を僕は持っています。楽しみです」

鶴野「でも僕、ヒットしか打てないんです。ホームランじゃなくて……。うちの梅澤裕介とか、今は卒業した飯野高拓って、ホームランしか打てないんですよ! 僕が必死に考えて⼀生懸命やって、ヒットをずっと打ってるのに、この二人はホームランを瞬時に打てちゃうから……。僕が打つヒットは小笑いなんですよ。クスっていうのを、ずっと量産している……」

遠⼭「そんなことないよ。最近ホームランも打ってるよ。ふぉゆ棒(ふぉ〜ゆ〜 meets 梅棒『Only 1, NOT No.1』/2022年7〜8月上演)のとき打ってたよ。ホームラン!」

鶴野「違う違う!ふぉゆ棒のときは小笑いの量産!! ホームランじゃない!!(笑)」

©源 賀津己

 
 

――(笑)。それでは最後に、『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』の上演を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。

鶴野「7年前に見ていただいた方は、⼀緒に当時に戻って、「あ、梅棒変わってないな」って思ってもらえる部分もあるし、あ、7年経ったんだって感じる部分もあると思います。今回初めて梅棒を見る方には、梅棒ってこうなんだ、これがエンターテイメントだ、これが熱量だ!っていうものを、『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』でお届けしたいです」

遠⼭「『クロス ジンジャー ハリケーン』自体、梅棒の原点的な心の持ちよう、パッションを持っていないといけない作品だと思っています。僕たちがコンテストに挑戦していたときに、まず自分たちがどんな気持ちで踊っているのか、どういう風に取り組むのかが大事だと思ったことがあって。梅棒が言っている「踊りは気持ちだ」っていう部分が根源的にあって、その気持ちをぶつけて感動を届ける、泣くにせよ笑うにせよ、それがないと感動しないだろうなと。メンバーがどんだけ気持ちを込めてパフォーマンスをしてるのかが大事だと常々思ってるんですけど、『クロス ジンジャー ハリケーン』は、小手先では作れない気持ちの熱さが必要な作品です。どこかで、僕らの生き様を見てくださいというところもあります。自分たち自身も梅棒を続けてて、やっぱり大好きで、みんなそういう気持ちがあって、ここまでやれてるところがある。だから、自分を見てくださいというよりも、年甲斐もなく言いますけど、この素敵なメンバーを見て欲しくて。それを楽しんでほしいって思ってるんですね。手前味噌ですが、そんじょそこらのパフォーマンスとは違う、なんかやっぱり上手いとか下手とかじゃねえ、みたいな。気持ちが違うんだこいつらはっていうところで、それがやっぱり僕は面白いと思ってて。是非とも楽しんでいただけたらと思います」

©源 賀津己

 
 

取材・文=長澤香奈
撮影=源 賀津己