“今月の”優先順位高めです【2023年2月号】

2023.02.01

つい先日「あけましておめでとうございます」「今年もよろしくお願いします」なんて言っていたのに、もう2月です。みなさま観劇はじめはいかがでしたでしょうか?今月もばしばし劇場に通いたい、そんな皆様の参考になれば幸いです。今月「優先順位高めです」です。今月より、高野ゆらこさんご参加です。

俳優・ 高野ゆらこの優先順位高め!

皆さまはじめまして。俳優の高野ゆらこと申します。
あの舞台で観たとか、チラシで名前見たことあるとか、全然知らないとか、色々な方がいると思います。普段は主に舞台をメインに活動しており『強くて物言う女性』の役をやることが多いです。
今回から「“今月の”優先順位高めです!」に参加させていただくことになりました。

いきなりですが、わたしは神奈川県横浜市に住んでいます。

生まれたのは埼玉県川口市、19歳で東京に出てきました。2015年に東京都世田谷区から神奈川県横浜市へ引っ越してきて、今年で8年になります。稽古や本番など、都内に通うのは若干不便になりましたが今の家は住み心地も良く、もう東京に住むことはないだろうなと思ってもいます。

2022年9月のことです。北千住駅目の前にあるシアター1010の稽古場1で、東葛スポーツ『パチンコ(上)』を観ました。そのときわたしは、なんで東京(の東側)に住んでいないんだ、とひどく落ち込みました。

自宅から北千住までは片道1時間15分。ずっと気になっていたのに東葛スポーツを観ていなかった理由、それは「行くのちょっとめんどくさい」という実に単純な理由です。チェックしていた限り大体いつも東京の東側でやっていたから、移動を億劫に感じていました。しかし、下北沢までは50分。プラス25分なぜ電車に乗れないのか。東葛スポーツ未見の時代に戻れるなら絶対に行きます。

『パチンコ(上)』を観たあと、知人にL I N Eで「面白すぎて辛い」と送りました。面白いと思う作品には時々出会えても、面白すぎて辛くなる作品は本当に稀です。

これまで観てこなかったことが悔しくて、出演している俳優が羨ましくて。観る前と観た後で街の見え方が変わるような。体重の乗ったラップに心を撃ち抜かれました。

というわけで、今月わたしがオススメするのは東葛スポーツ『ユキコ』

1時間15分かけて行きます。楽しみです。

高野ゆらこ
俳優。次回出演→ゆうめい新作公演『ハートランド』4月20日(木)〜 4月30日(日)@ 東京芸術劇場シアターイースト/明後日プロデュース『ピエタ』2023年夏
Twitter::@yuracco

俳優・田代明の優先順位高め!

ミュージカル『バンズ・ヴィジット-迷子の警察音楽隊-』
2018年トニー賞10部門を独占するという快挙を成し遂げた本作。日本版の演出は森新太郎さんが務めます。物語はエジプトの音楽隊が演奏旅行中に、かつての敵国であるイスラエルで迷子になってしまう所から始まります。エジプトとイスラエル、互いが違う言語を話す彼ら同士が話す際は英語を使うらしいのですが、本公演ではカタコトの日本語を使用するという演出が行われます。また、場面転換の際には音楽隊役として楽器奏者の方々が舞台上で中東音楽を演奏されます。容易に面白そう!と想像がつく演出と、歴史的に対峙してきた国の国民同士が心を通わせるというメッセージ性の強い本作に期待が高まります。

木ノ下歌舞伎『桜姫東文章』
以前、尊敬する演出家さんに「田代さん、チェルフィッチュみたいな芝居するね、もちろんいい意味で」と言われた事が嬉しくて私的には特別な存在である、チェルフィッチュ主宰・岡田利規さん演出の今作。「歴史的な文脈を踏まえつつ、現代における歌舞伎演目上演の可能性を発信する団体」である木ノ下歌舞伎が今回挑むのは、男女の三角関係から始まる、1人の女の数奇な人生を描いた物語。初演は1817年と実に200年も前の作品ですが、この作品で描かれている抑圧や暴力は現代でも変わらず続いていて。美しい作品という印象もある桜姫東文章が木下歌舞伎feat.岡田利規によってどの様に創造されるのか楽しみです。

シス・カンパニー公演『ケンジトシ』
コロナ禍でやむなく延期となった今作ですが、満を持して2023年2月に上演されます。我々日本人の心に寄り添う数多の言葉を残した宮沢賢治。その賢治の傍らには、彼の精神的な支えであり、良き理解者でもあった妹トシの姿があったといいます。そんなトシへの思いを込めて作られた今作。稽古動画がYouTubeに上がっているのですが、中村倫也さん黒木華さんを始めとした役者の皆さんの作品に対する真摯で自由な姿に惹き込まれます。東北の大地を舞台に、1組の兄妹に関心を寄せる第三者として、濃密な空間に浸りに行きましょう。

田代明
女優・歌手
北海道札幌市出身。東京藝術大学声楽科卒業。演劇、ミュージカル等、舞台を中心に幅広く活動中。
Twitter:@akkarindays

脚本家/演出家・ 海路の優先順位高め!

海路です。みろって読みます。
1月は自身の公演に追われ、バタバタしておりましたが、それも終わり少しゆったりできるので、観劇欲がマシマシになってます。
てなてなことで、2月の優先順位高めな作品はこちら!!
 
劇団クロックガールズ「丸山家の秘密~ぜんぶ丸聞こえ~」
脚本家・江頭美智留さんが主宰を務める、劇団クロックガールズ約6年ぶりの新作公演。これは、激アツ過ぎて激アツです。
自分自身が江頭先生の、クロックガールズ時代の作品の再演を観て沢山学んできた人間な訳で、それが新作なんて話を聞いたら、もう……。
とりあえず、絶対に死ねません。横断歩道を渡る時は、少なくとも右左100回くらいは確認しようと思います。
 
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『蜘蛛巣城』
こちらも楽しみな1本で、黒澤明監督の『蜘蛛巣城』を赤堀さんが上演台本・演出を手掛けて舞台化される作品。倉科カナさん、中島歩さん、そして井上向日葵さんなどなど、ワクワクなキャスト陣が名を連ねていて、映画のあの世界観が一体どう表現されるのか、楽しみでしかないです!
 
劇団4ドル50セント『ほどよく洒落たチョコレート』
脚本を艶∞ポリスの岸本鮎歩さん、演出を拙者ムニエルの村上大樹さんが担当される、新作本公演。
4ドル50セントシートなる、いくつかの条件に該当する方は450円で観れてしまうという、びっくりチケットもあって、まだ4ドル50セントさんを観たことがない方々もこの機会に是非!
 
あとは劇団た組の加藤拓也さんが、脚本・演出を務める「博士の愛した数式」は、マストでチェックです!!

海路
脚本家。演出家。劇団papercraft主宰。1999年7月20日生まれ。
最近は映像監督もしてたりします。
主な作品『檸檬』『殻』『Momotaro』などなど。
Twitter:@nonde_miro

ライター・中川實穗の優先順位高め!

発表された瞬間から今日までずっと待っていて、やっと観られるという思いなのが『博士の愛した数式』です。小川洋子さんの同名小説が原作で、劇団た組の加藤拓也さんが脚本・演出を手がけます。博士を演じるのは串田和美さん。今の私は「一体なにが観られるのか」という期待で100%です。原作があっても、そう思ってしまう座組です。ちなみに以前、劇団た組で同作を舞台化していますが、それとはまた違うものになるそうです。

Mrs.fictions presents「15 Minutes Made in本多劇場」は、参加団体が発表される前にチケットを予約したほどに企画そのものが楽しみな公演です。ひと団体あたり【上演時間15分】で【6団体】の作品が観られるというもので、今回参加するのは、演劇集団キャラメルボックス、ブリーズアーツ、オイスターズ、ロロ、ZURULABO、Mrs.fictions。これは「一度観てほしい」と言いたい。おもしろい体験になると思うので。15分で受け取れるものの量にびっくりするんですよ。そして一気に観るからこそのおもしろさや、新しい出合いもあると思います。いろんな作品が観られるので趣味が違う友達も誘いやすいですよ。

ナイロン100℃ 48th SESSION「Don’t freak out」は、「笑いはない」という情報はありつつ、いつも通り、どんな作品なんだろうとただただ期待して待っています。まず、ザ・スズナリでナイロン100℃のお芝居が観られるというだけでもワクワクします。とにかく観たい、体験したい、そんな気持ちです。

『CLUB SEVEN 20th Anniversary』は、20周年の節目ということで今回いつも以上に「どうなるの!?」という出演者&チーム制。その中で全公演に出演されるのが、脚本・構成・演出・振付・出演の玉野和紀さんと初演からのメンバー西村直人さんだというのもグッときます。『CLUB SEVEN』の集大成、楽しみです。

中川實穗
ライター。日本の戯曲が多めですが、ジャンル問わずに観ます!
Twitter:@miho_sgt

ライター・古内かほの優先順位高め!

映画でもおなじみの『ドリームガールズ』が、圧倒的な歌唱力を誇る望海風斗さん主演で日本版初上演!ということで、ニュースを聞いたときからたのしみにしていました。数年前に来日版を観に行き、素晴らしい歌唱に数々の素敵なステージ衣装、観客が“観客を演じる”愉しさにすっかり魅了されて帰ったのを覚えています。舞台となる1960年代のアメリカのショービジネスの世界は、ガチガチの男社会。その中で奮闘する女性シンガーたちの自立やシスターフッドを描いた作品でもあり、観ればたくさんパワーをもらえるはずです!

記念すべき20周年を迎える怒涛のエンターテインメントショー『CLUB SEVEN』もぜひ足を運びたい作品。玉野和紀さんを筆頭とした初演からのレジェンドメンバーに加え、歴代キャストの皆さまの豪華な顔ぶれにも期待大!とくにたのしみなのは“五十音順ヒットメドレー”。体力の限界に挑みながらも極上のショーを届けてくれるキャストの皆さまには脱帽です。それにしても20周年って、すごいなあ。

他にも、東京芸術劇場で上演されるレオンカヴァッロ/歌劇『道化師』 マスカーニ/歌劇『田舎騎士道(カヴァレリア・ルスティカーナ)』は、上田久美子さんが初めてオペラの演出を手掛けることでも話題になりたのしみにしている一作です。木ノ下歌舞伎の『桜姫東文章』は、演目としても、そしてキャスト陣の確かさも含めて期待が膨らみます。宝塚では雪組公演の『海辺のストルーエンセ』を。観るたびに男役としての魅力を増幅させている朝美絢さんと、注目の演出家・指田珠子さんのタッグがどんな世界を作り上げるのか、注目しています!

古内かほ
ライター。観劇の入り口は小劇場から。近年はミュージカルと宝塚歌劇団を中心に観劇しています。今年はミュージカルのZINEを制作してみたいと思っています。
Twitter:@kahonfuu

ライター・岩村美佳の優先順位高め!

2023年もあっという間に2ヶ月目。寒さが堪える日々ですが、寒さをおして観劇に行きたい作品は、まずは何といってもブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガールズ』。私は映画は拝見していなかったと思うので、ブロードウェイ来日版を観劇したのが最初でした。楽曲と来日キャストの方々のパフォーマンスにテンションが上がりつつ、栄光の裏側のドラマに引き込まれました。今、初の日本オリジナルキャスト版初演に期待が高まっています。主役ディーナを演じる望海風斗さんが、宝塚歌劇団を卒業された直後のコンサート『SPERO』で、『ドリームガールズ』の楽曲を歌われたときに、度肝を抜かれました。有名な楽曲ですし、それまでにも日本でも様々な場で色々な方が歌われるのを聞いたことがありました。正直「何かちょっと違う」と感じることが多かったのですが、望海さんのパフォーマンスを観て、こんなにハマるのか!と嬉しい驚きでした。興味深い日本オリジナルキャストが揃ったこと、眞鍋卓嗣さんの演出にも期待しています。
 
そして、日本初演となるミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』です。2018年のトニー賞10部門受賞した話題作。ご出演の新納慎也さんにインタビューさせていただきましたが、イスラエルに演奏旅行に来たエジプトの音楽隊が道に迷い、地元のイスラエル人と一晩交流をするなかで、『「何も起こらなかった……」というさざ波がさざ波のまま終わるミュージカル』と伺いました。観劇を終えてどんな感覚になるのか、中東の音楽の心地よさとは、森新太郎さんの演出はどんな感じだろうか、とワクワク。
 
話題作舞台『キングダム』が帝国劇場でどんな迫力ある舞台を繰り広げるのか、上田久美子さんが文楽から着想を得た演出をされるというオペラ、東京芸術劇場シアターオペラvol.16 マスカーニ/歌劇『田舎騎士道(カヴァレリア・ルスティカーナ)』 レオンカヴァッロ/歌劇『道化師』、宝塚では初の上演となるミュージカル『BONNIE & CLYDE』も楽しみにしています。

岩村美佳
ライター。フォトグラファー・ライター。初観劇は小学生の時に観た宝塚。ミュージカルを中心に色々と観劇しています。配信観劇も存分に楽しめるようになりました。超絶猫好き。
Twitter:@nyanyaseri

批評家・山﨑健太の優先順位高め!

3月頭にy/nとしての本番を控え、稽古しつつ観劇しつつの2月です。

2月でまず外せないのが木ノ下歌舞伎『桜姫東文章』。2021年には片岡仁左衛門と坂東玉三郎の共演が、2022年にはルーマニアを代表する演出家シルヴィウ・プルカレーテによる『スカーレット・プリンセス』としての上演が話題になった『桜姫東文章』。今回、木ノ下歌舞伎版で演出を手がけるのはなんとチェルフィッチュの岡田利規だ。現代の倫理では大いに問題含みの(いや歌舞伎作品の多くはそうだが……)この作品を岡田はどう上演するのだろうか。

2本目は温泉ドラゴン『悼、灯、斉藤』(作:原田ゆう、演出:シライケイタ)。2022年11月には公募で選ばれたスペースノットブランクの中澤陽を演出家に迎えてのリーディング公演を実施。母の急逝で露呈する老年の父と中年の三兄弟の弱さを丁寧に描いた戯曲はその時点でも面白かったのだから戯曲をブラッシュアップして臨む本公演が面白くないわけがない。こうやって戯曲の執筆過程に他者の目を入れてブラッシュアップする試みは作品にプラスしかないのだし、もっとあってもいいはず。

ラストは『シアターコモンズ’23』。今年は上演プログラムは少なめだが、小泉明郎によるVRパフォーマンス、サエボーグによるメタバース作品、佐藤朋子によるレクチャーパフォーマンスと先端的な作品が並ぶ。リモート参加可能なプログラムがあるのもうれしい。

山﨑健太
批評家・ドラマトゥルク。3月頭にy/nの新作レクチャーパフォーマンス『フロム高円寺、愛知、ブラジル』を上演します。3/3〜3/5@東京芸術劇場アトリエイーストでお待ちしてます。
Twitter: @yamakenta

ライター・河野桃子の優先順位高め!

成河さん、石橋静河さんら出演の木ノ下歌舞伎『桜姫東文章』(全国5都市公演)。「えー!こんな展開なのねー?!」というような歌舞伎の物語を、さまざまな歌舞伎の現代上演を監修する木ノ下裕一さんと、オペラ『夕鶴』などの現代的な演出や解釈で高い評価を得る岡田利規さん(脚本・演出)のタッグがとても気になります!

東京芸術劇場シアターイーストで上演する温泉ドラゴン『悼、灯、斉藤』。一度リーディング公演とフィードバック会を経て、かなりブラッシュアップしての公演。リーディングの評判が良かったこともあり、期待が高まります。

2月には演劇祭などさまざまなパフォーマンスが集まった企画も開催。『シアターコモンズ’23』はレクチャーパフォーマンスやインスタレーション、ワークショップのほかリモート参加も可能なプログラムなどを展開。

まる1ヶ月間開催される『下北沢演劇祭』には、オフィスコットーネFUKAIPRODUCE羽衣名取事務所ナイロン100℃、6劇団が集合するMrs.fictionsの企画などが勢揃い。下北沢が演劇で賑わう1ヶ月が楽しみです。

河野桃子
ライター。翻訳戯曲と小劇場を中心に、ミュージカルやコンテンポラリーダンスなど「舞台」と名がつくものはなんでも観に行きます!
Twitter:@momo_com

ローチケ演劇部_白の優先順位高め!

2月結構多いです、2月。
まず一番の楽しみは、東葛スポーツ「ユキコ」。東葛スポーツはいつだってかっちょいいんですよね。ラップにグラサン、そのテーマも相まって、観終わった後の昂ぶりはね、もうみんなと共有したい感じ。わたしはなんとか確保しましたが、早々に予約終了となってしまいました。ご興味ある方はキャンセル待ちを狙いましょう!

FUKAIPRODUCE羽衣『プラトニック・ボディ・スクラム』も外せないよ。糸井さんのミュージカルは文字通り妙でクセになる。
四半世紀ぶり(!)によみがえるPARCO劇場開場50周年記念シリーズ『笑の大学』も。これも名作ですよね。内野さん、瀬戸さんの新たなコンビにわくわくします。
ダウ90000蓮見さんが作・演出をつとめる、コントライブ『夜衝2』も観たい、とても観たい。
ナイロン100℃『Don’t freak out』。ナイロンをスズナリで観れるだなんて!贅沢極まりない。Mrs.fictions presents『15 Minutes Made in本多劇場』も。前作『伯爵のおるすばん』よかったなー。

ほか、劇団た組 加藤拓也さんが脚本・演出を務める『博士の愛した数式』舞台『キングダム』、もう始まっているけど観れたらいきたい『重要物語』風姿花伝プロデュース『おやすみ、お母さん』。ダメだ時間が足りない。。