誰も観たことのない聖なる名作喜劇、ここに誕生!
この夏、2本目の劇団本公演を上演したばかりのケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)だが、今年は劇団外の演劇ユニットKERA・MAPでも新作を書き下ろす。鈴木杏をはじめとした実力派が揃う最新作『修道女たち』は、この取材の時点ではすべてがまだKERAの頭の中…。とはいえ、どんな舞台になりそうか予想も含め、KERAと鈴木にヒントを語ってもらった。まず“修道女”を題材にした理由は「ほぼ直感です」と話すKERA。
KERA「聖職者を主役にしたコメディで単に不道徳なことをするだけではもったいないので、聖職者なのに?という流れにだけはしないつもり。またキリスト教から大きく逸脱して新興宗教にしてしまうと、なんだかどす黒い話になってしまいそうなので、キリスト教を模した架空の宗教にしようと思ってます」
鈴木は『社長吸血記』(’14年)以来、KERA作品への参加は2回目。
鈴木「前回の稽古場は程よい緊張感のある、居心地のいい素敵な空間でした。なので今回再び声をかけていただき、素直にうれしかったです。修道女が題材だと聞いた時は『それは面白そう!』と、いちファンのリアクションみたいですが(笑)。修道女という設定は、制約もありますが、いろいろなことが起こりそうですし、何でも飛び越えられる設定のような気もしていて、とても楽しみです」
過去作品でもよく“神様”を登場させてきたKERA。今回も、人知を超えた展開が待つのかもしれない。
KERA「今なんとなくイメージしているのは、豪雪で山荘に閉じ込められた巡礼者たち、という設定。その一方で、聖書に誤植があるとか、そういうくだらないことも考えています」
鈴木「キャスト陣が、私が言うのもなんですが、よくぞここまでマイペースな人が集まったなと(笑)。職人的な印象の方ばかりで、もう既に信頼感があります」
KERA「全員修道女になるのか、意外と山荘の住人が物語の要になるのか。だけどこうして取材で語った言葉をすべて裏切っていく展開というのもよくある話だしね」
鈴木「もしかして誰ひとり、修道女は出てこないかもしれない!(笑)」
と言いつつ、この高まる期待を裏切った試しがないのもKERA作品。またも名作誕生!の兆しが見える。
インタビュー・文/田中里津子
Photo/矢野寿明
※構成/月刊ローチケ編集部 8月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります
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【プロフィール】
ケラリーノ・サンドロヴィッチ
■ケラリーノ・サンドロヴィッチ ’63年、東京都出身。’93年にナイロン100℃を旗揚げ。劇作家だけでなく、ミュージシャン、映画監督としても活躍する。
鈴木杏
■スズキ アン ’87年、東京都出身。子役として芸能活動を始め、近年の代表作に『社長吸血記』、『欲望という名の電車』など多数。