舞台『ロミオとジュリエット』稽古場直撃!│高杉真宙×藤野涼子×矢部昌暉×新原泰佑×三浦獠太×佐伯大地 インタビュー

写真後列左から)新原泰佑、矢部昌暉、三浦りょう太
写真前列左から)高杉真宙、藤野涼子、佐伯大地

高杉真宙がロミオ、藤野涼子がジュリエットを演じる舞台『ロミオとジュリエット』が、9月13日(水)に開幕する。

ウィリアム・シェイクスピアの名作として、何百年もの間、さまざまなカタチで上演されてきた本作。井上尊晶が演出を手がける今作では、ロミオを高杉真宙、ジュリエットを藤野涼子、ベンヴォーリオを矢部昌暉、マキューシオを新原泰佑、ティボルトを三浦りょう太、パリスを佐伯大地が演じるほか、キャピュレット夫人役に冨樫真、キャピュレット役に廣田高志、モンタギュー夫人役に一谷真由美、モンタギュー役に松澤一之、乳母役に星田英利、僧ロレンス役に石井愃一が顔を揃える。

稽古場にて、高杉、藤野、矢部、新原、三浦、佐伯に話を話を聞いた。

シェイクスピア作品のイメージと稽古に入ってわかったこと

――稽古が始まって、もともとシェイクスピア作品や『ロミオとジュリエット』に抱いていたイメージはどんなふうに変化していますか?

高杉 お話自体はすごくシンプルというか、あらすじを書けば簡単な展開なんですけど、シェイクスピアの作品はそういうところに素晴らしさがあるわけじゃないんだなというのは今回改めて知りました。「好きです」を伝えるための言葉に、比喩もそうですし、美しい表現がたくさん詰め込まれている。だからやる側にとっては難しい台詞もたくさんありますが、観る方はそういうことは感じないんじゃないかなと思います。それは新しい発見でした。

それと、言葉遊びがすごくきれいですよね。メールが想いを伝えるツールとしてどのくらい重要視されているかと考えると難しいけど、昔だったらラブレター、さらに前だったら和歌で伝えていたようなことを、シェイクスピア作品では言葉として伝えている。ちゃんと大事に、相手に伝えることをしなければいけないんだなと思います。まだ台詞を覚えるのでいっぱいいっぱいですけど(笑)。

佐伯 めちゃくちゃあるもんね。

高杉 でもジュリエットのほうが台詞が多いなって思います。

藤野 それは女の子あるあるっていうか、女子トークでどんどん話題が変わっていくような感じで、ジュリエットもいろんなことを考えているからだと思います。それを一人で全部完結していくから、台詞が長くなっちゃうんですよ。

――矢部さんはどうでしたか?

矢部 やっぱりシェイクスピア作品は台詞が長いし、「好きです」みたいな単純なことをいろんなふうに例えるぶん、それを言うのが難しそうという印象をずっと持っていました。そこはその通りでしたね。自分が言うときだけじゃなく、相手の台詞に対しての「どこに反応しようかな」みたいな難しさもありますし。あと個人的には、『ロミオとジュリエット』ってよく「純愛」と表現されますが、実はずっと「純愛なのかな?」と思っていたんですよ。それでいざ台本をいただいて読んでみたら、やっぱり純愛じゃない気がして。ロミオって最初はロザラインのこと好きだったのに、舞踏会でジュリエットと出会って一目ぼれして、「え!そんなすぐ心決まっちゃうの!?」ってなりません?

高杉 失礼な!純愛ですよ!(笑)。

佐伯 矢部くん、(恋人のために)死ねないでしょ!?

矢部 (笑)。ごめんなさい。

高杉 でも友達から見たら、神父様の言うようにロミオは浮気者かもしれない。「そっちにいくの?もう !? 」って感じだよね。

――新原さんはどうでしょうか?

新原 僕は稽古が始まる前は、台本の言葉がわからなくて、ずっとスマホ片手に調べながら言葉の意味を理解するのに必死でした。でも稽古が始まって、「その言葉がどこに繋がっているのか」を考えるようになってきました。ひとつの言葉にかかっていることがすごくたくさんあるんですよ。そこを(演出を手がける井上)尊晶さんと一緒に見つけたり、共演者のみなさんに教えていただいたりしています。だから自分的には日々、大伏線を回収したような気持ちになっています(笑)。

――三浦さんは初舞台ですが、シェイクスピア作品にはどんな印象がありましたか?

三浦 昔、レッスンでシェイクスピアの戯曲をやったことがあったのですが、そのときに「いつか大人になったら(やってみたい)」と思っていました。それがまさかの初舞台でやることになったので、最初すごくイヤだと思ってしまったんです。

一同 (笑)。

三浦 怖かったです。僕としては、現代劇で経験を積んでいつかは、という気持ちでいたんですけど。まさかはじめから、あのシェイクスピアの、あの『ロミオとジュリエット』って……正直どこかに逃げ出したい気持ちになりましたし、年始の頃は今年は舞台があるんだと緊張で若干滅入っていました。

――稽古に入って作品にまつわる発見はありましたか?

三浦 僕はこの作品は10代の若者の「エネルギーの大きさ」みたいなものが大事なんだと思いながら稽古に入りました。ただそのエネルギーの大きさが想像以上でした。僕が思っていた何倍も大きかった。そこは稽古に入ってみなさんに圧倒されたところです。

――佐伯さんはなにか印象に変化はありましたか?

佐伯 僕は台本を読んだとき、もともとシェイクスピア作品に持っていたイメージよりは難しくないなと思いました。現代人の「好きだよ」の4文字がすごく長くなっているだけで、その表現に普段言わない言葉も使うし、こんな表現するんだ!とか、読むのが楽しくなって。そういう変化はありましたね。

この作品のロミオとジュリエットはどんなふたり?

――高杉さんと藤野さんのロミオとジュリエットは周りのみなさんからどう見えていますか?

矢部 お芝居には人柄が出るってよく言いますけど、こんなにもその人の人柄が役に投影されるのを見たのは初めてじゃないかなと思います。ふたりの演じるロミオとジュリエットはすごく真っ直ぐです。だからふたりのシーンを見ているとニヤニヤしちゃうんですよ、とても素敵で。真宙くんのロミオと涼子ちゃんのジュリエット、すごく輝いて見えます。

新原 稽古場で僕が座っている席のふたつ前が真宙くんと藤野さんなんですけど、ふたり揃ってガッと台本を読んでいる背中が凛々しいんです。

一同 (笑)。

新原 僕、そこが好きで。おふたりが「ここ、こうだよね?」「こうだと思います」ってやっているところを見ていると、このふたりが作品を引っ張っていくんだなって思います。すごく大きな背中です。

三浦 僕の役はロミオと戦うのですが、そのときのロミオの圧と強さは、僕が思っていたロミオのイメージとはまた違いました。「こんなに強くて、こんなに迫力のある男なんだ」というのを、ロミオに対して、そして高杉さんに対しても思っていなかったから。そういう部分から、「高杉さんの演じるロミオなんだな」というのをすごく感じています。ジュリエットは、もともとは子供の無邪気さや可愛さのイメージが強かったんですが、藤野さんのジュリエットにそれとはまた違う側面を強く感じています。それがなんなのかうまく言語化できないんですけど。でも本当に、これまで想像していたロミオとジュリエットとはまた違うものを感じています。

佐伯 高杉くんのロミオはお芝居と真正面から闘っていて、パワーをもらっています。真っ向からいくんですよ。どんな攻撃が来ようとも避けようとしない。避けずにズタボロになりながら一歩一歩進んでいく。藤野さんのジュリエットは、お芝居がスッと入ってくる。そして藤野さんも高杉くんと同じで、正面から向かっていく方なんだなと感じています。

――高杉さんと藤野さんは、ロミオとジュリエットとしてお互いがどう見えていますか?

高杉 僕から見た藤野さんのジュリエットは、おてんばでかわいらしいです。と同時に、すごく強い女の子だなと思っています。乙女な部分も持ち合わせているのですが、引っ張っていくヒロイン像もしっかりあって、その中に美しさや可憐さがとてもある。藤野さんのジュリエットという存在が頼もしくてありがたいです。

藤野 高杉さんのロミオを真正面から受け取るとき、直球で迷いなく投げてくださるなと感じます。私は自分のことで精一杯なところがあって、ボールがあちこちにいっちゃったりするんですけど、高杉さんのロミオは、自分の気持ちとロミオの気持ちを素直に反映させていく。それは受け取るこちら側からすると、お水のようにスッと入ってくるものです。この感覚は自分の中で大切にしているところでもあります。

取材・文/中川實穗
撮影/田中亜紀
ヘアメイク/堤紗也香(高杉真宙担当) 大岩乃里子 塩澤優花 塚原ひろの
スタイリスト/荒木大輔(高杉真宙担当) 岩田友裕
衣装協力/EGO TRIPPING

※三浦りょう太の「りょう」の字は、けものへんに「寮」のうかんむりのない形が正式表記