世界中で語り継がれてきた伝説をモチーフにした、「アナタを幸せにする世界の伝説シリーズ」。2023年9月16日(土)から上演されるシリーズ第四段は、ノルウェーやデンマーク、フィンランドなどに伝わる北欧神話にスポットをあてている。世界の中心にいる神々と宿敵である巨人たちの時にユーモラスで時にシリアスな物語を描いた本作で、雷神トールを演じる竹中凌平と神でありながら巨人族の血を引くトリックスター・ロキ役の松村龍之介に話を聞いた。
――まずは出演への意気込みを教えてください
松村 神話が好きなこともあって、お話をいただいた時にすごくワクワクしました。しかもロキという有名な神様になれる。日常生活で神になることってないですから、役者冥利に尽きると思いました。初共演の方もいて、嬉しい気持ちと全力で楽しみたいなという気持ちです。
竹中 北欧神話がモチーフでぶっ飛んだファンタジーの世界ではあるけど、役者一人ひとりがちゃんとキャラクターの心の流れを掴んで作品をお届けしたいです。これをきっかけに北欧神話に興味を持ってくださる方が増えたら嬉しいですね。
――ネタバレにならない範囲で台本を読んだ感想を教えていただけますか?
松村 神話って突拍子もない話が多いんですよね。今回はそんな中から色々なエピソードがピックアップされていて、具体的な北欧神話のエピソードに基づいた話もあるので面白いですよね。神の話ですから、普通の作品とちょっと感覚が違って、役作りも普段とは違う考え方をしています。
――具体的には
松村 個人的には、神としての在り方。人間じゃないので、反応一つとっても普段と違うベクトルで考えています。誰かと話している時に相手の方を向くのか、あえて向かないのか。声や音も全部超越して聞こえているかも。そういうのを探っています。
――竹中さんは、台本を読んでどう感じましたか?
竹中 出演するにあたって、台本を読む前に北欧神話を勉強しました。そのおかげで、台本にもすんなり入り込めたというか、突拍子もないけど神話に忠実だし、神話の内容をよくこんなにぎゅっとまとめていると感じましたね。
――北欧神話でお気に入りのエピソードがあったら教えてください
松村 ラグナロクはすごく有名ですよね。具体的なエピソードじゃなくなってしまいますが、神様なのにすごく人間っぽい。裏切ったり恋愛感情で罪を犯したり人を殺したり、自分の欲にすごく忠実です。人智を超越した存在、崇められる存在なのに、神話の中の神様たちって人間より人間してる。それが面白いなと思います。
竹中 冒頭からツッコミながら読みました。原初の巨人のユミルが赤子の頃、脇から出た汗から巨人が生まれたとか、足を交差したらまた巨人が生まれたとか、月や太陽を追いかけて捕らえる狼がいるとか、意味がわからないですよね。すごく面白かったです。
――ビジュアル撮影時のエピソードは何かありますか?
松村 スタッフさんたちが衣装合わせの時から「すごくかわいい」といってくださって。僕は褒められて伸びるタイプなので、皆さんにもてはやされてニコニコしながら撮影しました。
竹中 確かにすごく褒めてくれた(笑)。
――トールとロキ、バルドルの三兄弟ですが、お兄ちゃん・弟っぽいと感じる部分は
竹中 (佐野)真白は弟っぽいよね。年もそうだし。
松村 僕と(竹中)凌平は同い年なのであんまりないかな。
竹中 のすけ(松村)はできすぎなので、こんな弟がいたら嫌です(笑)。
松村 褒められてる!絶対書いてください。
竹中 どちらかというと双子みたいな感覚ですね。
松村 いい意味で対等な感じだね。
――本作における関係性に近そうですね。その中でも兄弟らしさを出すためにしていることがあったら教えてください
松村 強いて言えば稽古で出てきたものを新鮮に楽しんでいます。相手の芝居を受けて「なるほど、じゃあこうしてみよう」と組み立てている感じですね。
竹中 稽古をしていて、示し合わせたわけでもないのに目が合ったりする。そういう時に兄弟感が生まれてきているかなって思います。あと、この間僕がお団子を食べていたら真白も最近真似してます。
松村 僕も食べたらだんご3兄弟だ(笑)。
――印象的な稽古場エピソードはありますか?
松村 趣味が似ている人が多くて一緒に盛り上がれます。稽古場に柱が多いのと長い武器が多いので、背の高い方々はよくぶつかっていますね。(小坂)涼太郎はいつも同じところでぶつける。
竹中 そのうち蛍光灯を割るんじゃないかと心配しています。
松村 あと、背の高い人たちは僕によく攻撃してくる。さっき仲良しって言いましたがいじめられてます!
竹中 (笑)。だったら僕ものすけに結構切られてるよ?
松村 僕は関係ないシーンなのに僕を挟んで殺陣の確認し始めるんです。その腹いせを凌平にしてます。
竹中 腹いせにきてたんだ(笑)。
――個性豊かなキャラクター揃いですが、お気に入りは誰ですか?
松村 深澤大河が演じるジークフリートですね。大河自身もいい役者ですし、作中唯一の人間としての佇まいが好きです。実際、嫌じゃないですか。神様がいっぱいいるところに単身赴任みたいな。常識じゃ計り知れない神様たちの中で、目標を持ってもがいている姿が美しいなと思います。
竹中 トール的にはやっぱりフレイヤかな。フレイヤは美の女神で、いろんな人から好かれるキャラクター。とまんくんは男性だけど説得力のある美しさです。樋口裕太演じる兄のフレイも面白くて、いい兄妹です。
――本作の見どころはどこでしょう
竹中 アクションについていうと、変わった武器が多いです。僕はハンマーですし、斧、鎌や槍、他にも色々あります。たくさんのキャラクターによる乱戦みたいになるシーンもあるので、見応えがあると思いますね。
松村 会場がシアターサンモールなんです。お客さんのコンディションって劇場に左右される部分も大きいと思いますが、集中しやすいし臨場感があると思う。ぜひ生で見てほしいですね。
――後半のライブパートの楽しみ方を教えてください
竹中 お客さんも一緒にできる振りがあります。サイリウムを振ってくれてもいいですし、何回か来てくださる方は完コピできるかもしれないので、周りの方の迷惑にならない範囲で踊ってくれてもいいですし。客降りがあるかもしれないのも楽しみです。
松村 第一部のお芝居とは衣装も変わります。チームごとにヤクザ、高校生、ヤンキーみたいにコンセプトがあって、一度で二度美味しいと思います。
――最後に、お客様へのメッセージをお願いします
松村 北欧神話を好きな人もそうでない方も、知っている方もそうでない方も楽しめる作品です。ストーリーだけじゃなく役者一人ひとりのお芝居やパフォーマンスに注目してもいいし、ライブパートは僕らの素やカンパニーの仲の良さも見えてくるだろうし、色々な楽しみ方があると思います。ぜひ劇場に足をお運びください。
竹中 すごく気軽に見られる作品なので楽しんでいただきたいです。笑いあり涙あり手に汗握るアクションあり、ライブパートでは推し活的なこともできる盛りだくさんの内容になっています。ぜひ楽しみに本番を待っていてください。
インタビュー・写真/吉田沙奈