舞台『中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~』|市原隼人 インタビュー

「中村仲蔵」は生涯忘れられない作品になる予感がする

歌舞伎が黄金期にむかう江戸中期に、その破天荒さで大スターへと駆け上がった歌舞伎役者、初代・中村仲蔵の出世物語が舞台化。テレビドラマでも脚本・演出を手掛けた源孝志が、新たな視点でオリジナルの舞台戯曲として書き下ろす。本作に出演する市原隼人は、この物語に馴染みやすさを感じていると話す

「歌舞伎とは土俵は違いますが、芝居をずっとやってきた僕にとってはすごく馴染みのある話。僕自身もいろいろな壁があって、何度も芝居を嫌いになって、何度も芝居を好きになってきましたから。書籍のようにずっと残していけるような舞台だと思っているので、そこに携わらせていただけることに、とても感謝しています」

主演を務めるのは、数々の舞台作品で伝説を残してきた藤原竜也。市原は彼との共演を心待ちにしているという。

「藤原竜也という役者は、本当にストレートで、繊細で、大胆で、豪快で、人間臭い。本当に大好きな役者です。共演できることが嬉しいですし、一緒に同じ板の上に立てることがすごく意味のあることに感じています」

脚本を務めるのは源孝志だ。

「こういう方とご一緒したかった、と思える人。まるで作品に魂を預けたような方だと思いました。僕らが創るものは芸術であり、記録作品ではないんです。芸術とはやはりこうでなければ、と妥協なく思えますし、俳優だけでなくスタッフや制作サイドも同じ思いで作品という御輿を担がなければ、1つの作品を生み出すことはできないと思わせてくれました。いろいろなことを学ぶ気持ちで向き合いたいと思います」

市原は本作で、仲蔵の兄弟子、初代・市川八百蔵と身投げした仲蔵を助ける旗本の子、酒井新左衛門の2役に挑む。

「歌舞伎の世界に敬意を払えるよう、しっかりと準備をしていきたい。知識を得て、その芸事が身になるまではどうしても時間がかかりますから。それに、僕にとっては人生で初めての2役。八百蔵は荒事に秀でていてほかの弟子たちとは違う覚悟があるんです。大胆でありながら、細やかな所作が効いてくる役ですね。新左衛門は、この人は何なのか?と常に謎があって、剣の腕が立つ武士。ですが、その腕を披露する機会が少なくなっている世でどう生きるべきか悩んでいます。さらに三味線も玄人並みという役であり、積み重ねていく部分が必要だと思っています。それぞれに特色が違うので、所作を大切に…芸事の世界と武士道を改めて身に入れてお芝居したいです」

数多くの学びと真摯な想いを胸に、並々ならぬ決意で挑む市原。彼にとっても印象深い作品になりそうだと語る。

「僕自身にとっても、久しぶりの舞台です。この『中村仲蔵』という作品は、僕の人生にとって生涯忘れられない作品になる予感がしています。今まで芝居に支えてもらった身としては、芝居の世界の美しさと人間臭さ、そして喜びを感じとっていただきたい。今できるすべてを注いで、お客様のために尽くす思いでいます。ぜひ劇場でお待ちしております」

インタビュー・文/宮崎新之
Photo/植田真紗美

※構成/月刊ローチケ編集部 11月15日号より転載

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【プロフィール】

市原隼人
■イチハラ ハヤト
2004年に「WATER BOYS2」でドラマ初主演。「ROOKIES」、「おいしい給食」シリーズなど映像作品を中心に近年は舞台でも活躍。