トレインライドシアター『このレールはドラマチック』│岩崎う大&京典和玖 インタビュー

写真左から)岩崎う大、京典和玖

移動する貸し切りの電車の中で演劇が繰り広げられるトレインライドシアター『このレールはドラマチック』が、11月19日(日)・23日(木・祝)の2日間で上演される。話題の“彼ら”の朝の風景をドラマチックにポストするインスタグラムのアカウント「HiM Films」の初めての舞台化プロジェクトで、岩崎う大が脚本・演出を手掛け、キャストには、中尾暢樹、京典和玖、時任勇気、瀬戸利樹、七瀬公、八木将康、永沼伊久也、松大航也、中田圭祐、ゆうたろう、樫尾篤紀、山口貴也、水石亜飛夢、鈴木勝大といった、若手のフレッシュな面々が揃った。1号車から4号車までの各車両でそれぞれに物語が展開していくが、一部演出にてすべてのキャストに対面することができるという。果たしてどのような物語が展開していくのか、岩崎う大と京典和玖の2人に話を聞いた。

――まず、今回の企画に携わることになってどのようなお気持ちになったかお聞かせください

岩崎 制作さんからお話をいただいて脚本と演出をやらせていただくことになったんですけど、電車の中でやるっていうのは正直、まったく想像がつかなかったですね。こういうのもあるんだ、っていう驚きがありました。電車は走りながらなのかな?とかいろいろ思いながらも、きっとその辺はノウハウがあるだろうと思っていたら、制作も含めてみんなが初めての試みだったので(笑)。結構手探りで考えていきましたね。

京典 僕もお話をいただいて、電車の中で?というのが最初の疑問でした。クエスチョンマークがたくさん頭に浮かんでいたんですけど、すごく挑戦的な企画だし、何より楽しそうだと思ったので、やってみたいと思いました。そもそも、女の子の役でオファーをいただいていると聞いて、そこも驚きで。とりあえず台本を読んでみて、すぐに「やりたいです」とお返事しました。

――物語の印象はいかがでしたか?

京典 読みながらクスクスと笑ってしまいました。お話として、なんだかリアルさがあって、本当にこういう人が居たらヤバいよな、という感覚のバランスが良くて、すごく魅力的でした。電車でこういうバカップルが居たら、何を話しているのかちょっと気になることは普通にあると思うので。そして、そんなリアルさを壊していくのが僕の演じるアカリちゃんなのかな、とも思っていて、だんだんとリアルさがアンバランスになっていく感じもとても面白いと思います。

バカップルの彼女、アカリ役を演じる京典和玖

――脚本を書いていく中で意識されたことは?

岩崎 リアルさとフィクションの部分のバランスは考えましたね。せっかく実際の車両でお芝居するわけですから、リアルさはあったほうがいいと思っていて、生身の人間が演じるし、そこにお客さんが座ることでさらに電車としてのリアルさが出てくる。でも、それだけでは面白くないのと、リアルから入っていって、いつのまにかフィクションの魅力を感じていってもらえたらと思いながら書きました。そこは普通の演劇でもそういう部分があると思うんです。日常から物語に入っていって、そこからやや変なことが起こってきても受け止めていけるようになっているって、演劇ではよくある。今回は、実際の電車というリアルさでいけばかなりのリアルなところから始まるので、よりスゴイところに持っていけたらと思います。

岩崎う大

――演出面ではどのようなことを意識していらっしゃいますか?

岩崎 まだ立ち稽古に入っていないタイミングなんですが、声のバランスなんかはまだ迷っている部分です。聞き耳を立てているという状況で、何を言っているか聞こえないリアルさがいいのか、それとも聞こえた方がいいのか、とか。そこはいろいろな部分とのバランスで仕上がっていくところだと思ってます。なんていうか、海に出る訓練を陸でしているような感じなんですよね。なるべく陸で練習していくけど、実際に海に出たら陸でのシミュレーションがどこまで通じるかわからない。体に染みついたことをやりながらも、自分の身を守るための行動が必要になるかもしれない。そういう不確定要素の余地は残しておこうかな、と考えてますね。

――役どころについては、今はどのように捉えていらっしゃいますか?

京典 アカリはけっこう独特というか、ぶっ飛んでいる印象が強いです。でも、ぶっ飛んではいるけれど、純粋に彼氏に分かってほしいとか、1人の人間として当たり前に感じている気持ちを大切にしているのかなと。そこを大切にしすぎた結果、いろんなことが重なって、結果的にぶっ飛んでしまったというか(笑)。騙そうとか、一杯食わせてやろうとか、そういうことも思っているかもしれなくて、その瞬間、瞬間を積み上げていったら、こういう結果になりました、っていう感じに見えたら、自分としては理想的です。

――共演のみなさんの印象はいかがですか?

京典 中尾暢樹くんとは、「ロミオ&ジュリエット」で共演させていただいたことがあるんです。その時は暢樹くんがティボルト役で、僕がマキューシオ役だったので、かなりバチバチでぶつかっていたんですけど、今回はそんな2人がバカップルになるので(笑)。ああいう対局をした相手と、こういうお芝居ができるというのはすごく楽しみです。逆に、時任勇気さんとは、まだ1回しかお会いしていないんですけど、すごく穏やかな印象で、僕たちの暴走を止めてくれるんじゃないかと思ってます。

――キャストのみなさんへの期待をお聞かせください

岩崎 今回は、それぞれにバックグラウンドがあって、中には演劇自体がほぼ初めてに近いというキャストもいます。そういう部分でも、電車の中で芝居をするという初めて尽くしの今回の場が適しているんじゃないかと思いましたね。みんなが初めての感覚。或る意味、みんなが横並びの感じでいいんじゃないかと。稽古期間も限られていますし、3人芝居、4人芝居と別れていますから、それぞれのチームで仕上がっていけるように。なんというか、先生っぽい立ち位置というか、みんなで課題にチャレンジしましょう、っていう感覚です。

――京典さんから見た、う大さんはどんな印象でしょうか?

京典 最初のイメージは、正直、怖いのかな?と思っていたんです。実は、初めてお会いする本読みの日に、ちょっとハプニングが起きてしまって…。初日から合流が遅れてしまったんです。

岩崎 すごく恐縮してたよね(笑)。

京典 正直、あー終わった、って思ったんですけど、う大さんはすごく優しく「大丈夫だよ」って言ってくださって。セリフの細かいところまで演出してくださいますし、どういう意図があるのかもお話してくださるので、これからの稽古もすごく楽しみにしています。

岩崎 そういうのは全然、気にならないというか。僕自身、よく遅刻するし、だからこそ遅刻する側の気持ちもわかるから。むしろ、待っている時は、気持ちに余裕のある側にいるから、むしろ楽しくなっちゃってる(笑)。もちろん、時間に切羽詰まっている中での遅刻なら、立場上、怒らないといけないときはあるかもしれないけどね。

京典 でも、現場に入った時もすごい空気だったんです。こう、みんな何もしゃべらずにシーンとしていて…。

岩崎 あれは本当に絶妙な時間だったんだよ。何か話すにしても、同じ内容の繰り返しになるし、でも先に始めるほどの時間でもないし…って感じの空気をみんな持っちゃってたからね(笑)。

――その空気は緊張感がありますね(笑)。変わった出来事があっても、結末まで見ずに電車を降りなければいけないこともあって、あのあとどうなったかな、みたいなこともありますよね

岩崎 それこそ高校生くらいの男女で、まだ付き合ってないんだろうけど、もうお互いに好き同士なんだろうな、とかね。そういうのは見たりします。この男、若いけどすげえ堂々としてるなぁ、とか、そういうことを思ったりするかな。あそこに話しかけに行く人がいたら、どうなってしまうんだろう?とか、そういうことは考えたりします。

――今回のお芝居は、その気になる続きを結末まで見届けられるような作品になっているかと思います。公演を楽しみにしている方にメッセージをお願いします!

京典 僕たちは3人芝居なんですけど、乗客のみなさんも登場人物という感覚で、と言われているので、皆さんにも近い距離感で楽しんでいただければと思います。僕たちも電車の中という空間で演劇するのは初めてですし、そういう中で生まれてきたものを大切にしていったら、きっといろんな情報が飛び交うんじゃないかと思うんです。各々の場所で1つにまとまっていることもあれば、バラバラの場所でそこだけの情報のこともある。そこを見逃さないように…いや、見逃してもいいんですけど、その場だけのリアルな体験を乗客として一緒に感じていただけたらと思います!

岩崎 電車の中で演劇を観るという体験は、おそらくなかなか無い経験。それを経験するという人生を選んだっていうことだけでもう、素晴らしいことだと思います。その勇気に感謝して、こちらは面白いものを提供できるように頑張ります。そして、これがもし上手く行ったら、このスタイルが定番になるかもしれない。そうなるよう、目指して頑張りたいと思います。

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取材・文/宮崎新之