12月9日(土)から愛知・ウインクあいち大ホールにて、バロック音楽劇『ヴィヴァルディ -四季-』が開幕し、初日直前にはゲネプロが行われ、舞台写真のほかに辰巳琢郎と高田 翔からのコメントも到着した。
アントニオ・ヴィヴァルディの「四季」は、バロック音楽の中でも人気が高く、誰もが聞き覚えのあるヴァイオリン協奏曲で、1723年アントニオが45歳の時に作曲したとされ、今年は誕生から300年をむかえる。
本作は、アントニオの父・ジョバンニ・ヴィヴァルディが、息子と育んだ栄光と挫折の人生を四季になぞらえ、代表曲「四季」の生演奏とともに、サン・マルコ広場に近いカフェに集う人々との触れあいと共に希望あふれる物語として描いている。
上演台本・演出は、時代小説作家で、『必殺仕事人』『水戸黄門』『雲霧仁左衛門』などテレビの時代劇の脚本や、「好色一代男」(片岡愛之助・主演)など独自の時代物の舞台を展開してきた岡本さとるが担当。西洋版「父子鷹」を思わせる父子の物語を、ヴェネチアに生きる人々とともにわかりやすく表現した。ステージはメインとなるカフェの風景と劇場のイメージを構築、奥にはヴァイオリン、フルート、電子チェンバロの演奏スペースが設けられ、圧巻の生演奏をお届けする。
辰巳琢郎が演じる父・ジョバンニ・ヴィヴァルディは息子の才能を見抜き成功へと導いていく。発せられる穏やかなセリフの中に子育てのこだわりを感じられ、現実でも音楽家の父親である辰巳と重なって見える。その人生をかけたマネージメント力は、理想の父親像としても共感できそうだ。
息子アントニオを演じるのは高田 翔。自身の才能で成功しながらも父の敷かれたレールの上で悩むアントニオ。妬まれることもあるが挑戦できる環境に応えていくナイーブな役どころを好演している。さらに20代から40代までの演じ分けに挑戦中だ。
そんな親子を「親子喧嘩もカフェの名物!」と暖かく迎えるのは、一色采子が演じるカフェの女主人メリッサ。世話好きで明るい彼女はピエタ(孤児院)出身者たちのお母さん的存在であり、親子にとっても信頼できる人物。またストーリーテラーとしての役割も担い、物語を優しく包み込み支えていた。
さらにジョヴァン二を父親の様に慕うフランコ役の冨岡健翔、陽気な興行主サントリーニ役の我 膳導、アントニオの才能を認めているピエタの楽団長ガスパリーニ役・市瀬秀和や、ヴィヴァルディ親子を敵視する音楽家マルチェッロ役・須賀貴匡に加え、アントニオに想いを寄せるアンナ・マリア役の舞羽美海ら実力派俳優たちが集結している。
そしてもうひとつの主役が楽曲の“四季”、『この曲も四季の一曲だったのか』と、あらためて名曲の数々に驚ろかされる。“四季”と中村匡宏による新曲がみごとに溶け込み、時には小道具の様に変化する生演奏と芝居のコラボレーションは劇場で堪能して欲しい。
楽曲の四季と人生の四季をなぞらえた新たな切り口で描くバロック音楽劇『ヴィヴァルディ -四季-』。今後の公演は12月27日(水)から兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、2024年1月6日(土)からは東京・新国立劇場 小劇場にて上演される。
辰巳琢郎 コメント
今年は、演劇の年。4本の芝居で全く違うタイプの役を演じさせていただきました。
幸せなことに、そのうち3本は生演奏の舞台。それも『鋼の錬金術師』はロックというかポップス系、『贋作写楽』は和太鼓や三味線、そして『ヴィヴァルディ』はクラシックと、バラエティに富んだアーティスト達との共演でした。生の演技と生の演奏、これ以上ない組み合わせだと思います。その相乗効果は、単独の場合と比べて、五倍から十倍。例えるなら「昆布」と「鰹節」のような最強のペアリングです。
特にこの『ヴィヴァルディ』は、ピアノが発明される前のバロック時代とあって、チェンバロ+ヴァイオリン+フルートという、大変に凝った編成の音楽が、全編に流れます。音楽監督の中村匡宏さんの手腕は、見事という他はありません。我々役者陣も、その演奏に乗せられて、より深い表現が出来ている気がします。
手練れの作家で演出家の岡本さとる先生の名タクトの元、演劇ファンもクラシックファンも、演歌ファンも、皆さんが楽しめる舞台が生まれました。年末年始は年越し蕎麦のような、心温まる作品がお薦めです。コロナ禍を経て、お芝居のチケットも物価につられて値上がりしてはきましたが、この作品は必ず「安い!」と感じていただけるはず。劇場でお会いしましょう!!
高田 翔 コメント
初日を迎えた時は、ホッとした気持ちが強かったです。音楽とお芝居が噛み合って、流れがやっと掴めた時だったので無事に終わって良かったな…という気持ちでした。見どころは、やはり音楽ですね。生の演奏がとても素敵で、力強くとても、華やかで、ステージを鮮やかに色付けていただいています。
とても、音楽とお芝居のバランスがいい作品ですし、ヴィヴァルディ親子の話、色々なキャスト方の個性がとても素晴らしい作品です。ぜひぜひ、劇場に観にきていただきたいです!
カメラマン:井川由香
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※辰巳琢郎の「琢」の字は点の入る旧字体が正式表記