ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』disc2 Produced by TBS 囲み取材&公開稽古レポート

2018.09.14

いまだかつてないシェイクスピア体験ができると、演劇ファンだけでなく音楽ファンからも熱い注目を集めている劇団☆新感線の『メタルマクベス』。この夏を駆け抜けた“disc1”が8月末で大好評のうちに幕を下ろしたばかりだが、早くも9/15(土)には“disc2”が開幕する。その初日に向け、粛々と稽古が続いている東京・豊洲のIHIステージアラウンド東京にて、本番さながらの公開稽古が行われた。

 

まずは、主人公のランダムスターとその夫人を演じる尾上松也と大原櫻子が揃ってステージに登場。フォトセッションの後、囲み取材が行われた。

――いよいよ初日まであと約1週間ですが、意気込みを聞かせてください。

松也「劇場での稽古に入って今日で4日目なんですけど、稽古場では理解できなかったことが身体でようやく実感できるようになってきて。この劇場のスペシャル感というものを今、肌で感じています。でもその分、お客様に楽しんでいただける要素も満載の劇場だなとも思いましたので、最後までみんなでできることを一生懸命やって、初日には大盛り上がりでみなさんに楽しんでいただけるように、そして僕たち自身も楽しんでできるように稽古に励みたいなと思います」

大原「先日、disc1の終わりのほうでご挨拶に行った時にカーテンコールを客席から拝見したのですが、(濱田)めぐみさんと(橋本)さとしさんからすごくエネルギーをいただいた気持ちになりました。めぐみさんからは「死ぬ気でがんばってね、死ぬ気で応援するから」というメールもいただきました(笑)。disc1のキャストの団結力も、ものすごく感じましたね。その時に感じたエネルギーを私たちが出す側になる初日を、この素敵なキャストとスタッフのみなさんと一緒に間もなく迎えるわけなのですが……もう少し稽古期間もあるので、正直なところ実感はまだですね」

――お二人ともミュージカルは経験されているものの、今回はメタルという音楽のジャンルになるわけですが。

松也「いやあ、楽しいですよ。メタルロックも自分としては通ってきたジャンルですし、今まであまり歌ったことがない曲調に乗せて歌うというのも気持ちがいいものですし。何よりもこの劇場でロックの音楽を聴くと、それだけで別にロックが好きとか嫌いとか関係なしにものすごくテンションが上がるんですよ。これはやってる方も、観ているお客さんも同じでしょうから、このテンションを共有できたらかなり楽しいだろうなと思いますね」

大原「私はよく客席から自分の出ていない場面の稽古を見ているんですけど、この劇場に入ってからは音楽が生バンドの演奏になるので、より激しさを感じるというか。音楽が身体で鳴っている感覚がすごく味わえるので、これはこの劇場ならではの体験でしょうし、しかもそこでメタルロックが聴けるのは特別なことだなと改めて思います」

――お二人は夫婦役ということですが、お互いの印象はいかがですか。

松也「今回、見事に大原さんに導いていただいている状態です。私、きっかけ等々を忘れることが多うございまして(笑)。その都度、この奥様が腰をトントンしてくださるので」

大原「アハハハ」

松也「「おい、ここで小道具を取るタイミングだぞ」「あ、そうだ!」という風に、いつも引っ張っていただいています。年齢は10歳下なのに、牽引力があるんですよ。今回演じられている役柄的にも、そういうキャラクターなので。稽古場で作っていく中でも、いのうえさんの演出として、年齢差はあるのにそうやってぐいぐい引っ張られている感じだと言われているので、その点、僕にとっては心地よくさせていただいています(笑)」

大原「松也さんは、すごく優しい方なので。わざと優しくされているのかな?って思う時もありますけど(笑)。でもそのくらい年上の先輩の俳優さんだからこそ、こんなにいろいろと私がわがままにやらせていただけているんだろうなとも、思っています」

――disc1とdisc2の違いは、どういうところに感じられますか?

松也「これはもう、観ていただければすぐにわかると思うんですが」

大原「全然、違いますよ!」

松也「もちろん大まかなストーリーは一緒ですけど。曲にしても、夫人が歌う曲も少し違いますし、disc1で冠徹弥さんが演じていた王専属のシンガーがdisc2では徳永ゆうきくんになるんですよ。冠さんは本職がメタルのボーカルですからもちろん最高ですけど、徳永くんは演歌を主流に歌われている方ですから曲調が全然違うものになっている曲もあって。disc1をご覧になった方も充分、その違いを楽しんでいただけると思います」

 

――稽古場の雰囲気はいかがですか。

大原「本当に楽しいです、でも劇場に入ってから、やることが多いことを実感しています。松也さんや岡本健一さんたちはバイクに乗るシーンや、激しい殺陣のシーンもありますしね。その様子を私は客席で観たりもしているんですが、どのシーンを観ていても新鮮ですし、何回観ても面白いんですよ」

――お二人から、見どころを語っていただきたいのですが。

松也「役的にはランダムスターとマクベス魔Ⅱ夜という二役を演じさせていただきます。この、過去と未来を行き来するというところが特にこの劇場ならではの特長にすごく合っているなと僕は思いますね。そして何よりメタルロックの音楽に身をゆだねつつ、楽しんでいただきたい。世界中探してもメタルロックに合わせてシェイクスピアの『マクベス』を作ったなんていうのは、この作品しかないと思いますからね。この唯一無二の作品をじっくり楽しんでいただけるように、僕らもがんばりますよ!」

大原「映像もとても豪華ですし、音楽ももちろん素敵ですが、またセリフが面白いんですよね。宮藤官九郎さんが書かれた脚本のセリフのやりとりが本当にひとつひとつ面白いので、そこにも注目していただきつつ、ぜひ笑って楽しんでいただきたいなと思います」

 

この囲み会見終了後には、そのまま本番同様の進行で『メタルマクベス』disc2第一幕の通し稽古が公開された。

客席をぐるりと囲むスクリーンに映し出される壮大な映像を、回転する客席から見ることで浮遊感を感じつつ、今回も一気に『メタルマクベス』の世界へ。西暦2218年の世界ではフェンダー国とギブソン国、新興勢力のESP国との争いが続き、その戦いを制したESP国の将軍・ランダムスターが帰路につく途中で三人の魔女に出会うところから物語は始まる。魔女たちに「あなたはいずれ王になる」などと予言され、なぜか1980年代に活躍したヘビーメタルバンド“メタルマクベス”のCDを渡されると、ボーカルのマクベス魔Ⅱ夜はランダムスターにそっくりなのだった。その後、予言の話を耳にしたランダムスター夫人はESP国のレスポール王を暗殺し現実に王になるべきだと、夫をたきつけるのだが……。 disc1と比較するとキャストの個性が大幅に変わるため、それぞれの登場人物が持つ印象が全然違ってくることに改めて驚いた。尾上松也は何よりロックを歌う姿が新鮮で、表向きは強気なのに妻にだけは違う表情を見せる二面性がやたらチャーミングなランダムスター、さらには派手で濃いビジュアルのマクベス魔Ⅱ夜を嬉々として演じ、大原櫻子はその可憐なイメージからは想像できないほど邪悪そうな夫人役を体当たりで熱演し、迫力ある歌声でその新境地を堂々披露。またランダムスターの親友・エクスプローラーを演じる岡本健一は自らギターをかき鳴らし、レスポールJr.を演じる原嘉孝(宇宙Six/ジャニーズJr.)はキレのあるダンスで魅了、ESP軍の仲間でもあるグレコ役の浅利陽介のしなやかな殺陣は実に鮮やかで、レスポール王役の木場勝己はギターを爪弾きながら渋い歌声まで聴かせてくれるなど、キャスト各自の得意分野を見事に活かした見どころが続く。囲み会見でも語られていたように、王の専属シンガーが徳永ゆうきでコブシを回しながらの演歌風の歌唱になる点は、このdisc2ならではのカラーとも言えそうだ。そして冒頭から登場する三人の魔女が高田聖子、村木よし子、保坂エマであることに代表されるように、新感線の劇団員が要所要所で大活躍していることも見逃せない。

シェイクスピアの『マクベス』の名台詞を絶妙に散りばめた脚本・宮藤官九郎による歌詞の面白さにしろ、二つの時代を行き来することで生まれるオリジナリティにしろ、客席が360°回転するというこの劇場機構を完全に把握済みのいのうえひでのりによるダイナミックな演出にしろ、まさに今、この劇場でしか観られないステージであることは今回も間違いない。『メタルマクベス』disc2は9/15(土)に開幕後、10/25(木)までの上演となるので、ぜひともお見逃しなく。

取材・文/田中里津子
Photo/村上宗一郎