舞台『未来少年コナン』が最終舞台稽古を終え、5月28日(火)東京芸術劇場 プレイハウスにて初日を迎えた。原作は宮崎駿が1978年に初演出を務めた、今も語り継がれる名作冒険活劇。インバル・ピント、ダビッド・マンブッフ共同演出で舞台化。加藤清史郎、影山優佳、成河、門脇 麦、今井朋彦、椎名桔平ら豪華出演者が集結し、原作の魅力を生かしながら、異次元の創造力で観客を魅了する。
その後に至る数々の宮崎アニメの原点とも言える本作。今へと通じるさまざまな社会的メッセージを提起しつつ、主人公コナンの勇気と優しさに熱くなり、なにより冒険活劇として無条件に楽しめる名作だ。そして演出を手がけるインバルも、かつてない劇空間で観る者に驚きと喜びを与えてきた一流のクリエイター。そんな両者の化学反応は、アニメファン、演劇ファンともに裏切ることのない、珠玉の仕上がりとなった。『未来少年コナン』という名作の力を借り、舞台の可能性をさらに飛躍させてみせたインバル。五感で体感するこの贅沢なエンターテインメントを、ぜひ劇場で存分に味わって欲しい。
舞台『未来少年コナン』演出家・キャストコメント
■インバル・ピント(演出・振付・美術)
多層的で幻想的で、多くのメッセージを備えた、一言では言い表せない魅力的な扉を開いてくれた宮崎駿監督の作品世界に、私は長年、引き込まれ続けてきました。
舞台はアニメーションとは異なる芸術形態であるため、原作をなぞることはできません。
我々の使命は、舞台ならではの『未来少年コナン』を創作することでした。
宮崎作品の舞台化に向けて心血を注いでくれる才能溢れるアーティストらと共に、長い時間をかけて稽古を重ねる機会に恵まれました。献身と、想像力への言祝ぎと、コラボレーションの賜物である舞台というクリエイションを通じて、世界にポジティブな変化をもたらすことを願う人間の無限の可能性を伝えるこの豊かな世界が、観客の皆様にも広く届くことを願ってやみません。
■ダビッド・マンブッフ(演出)
『未来少年コナン』と出会った瞬間、その物語と登場人物の虜になりましたが、それ以上に、この作品が提示するテーマの現代性や昨今の社会課題との共鳴性に衝撃を受けました。
冒険、旅、アクションに溢れた26話のシリーズを3時間の舞台に収めること自体、相当なチャレンジです。しかし本プロジェクトの強みの一つは、TVシリーズにできる限り忠実であろうと試み、この普遍的な物語を独自の方法で伝えるべく、あらゆる部署が協力を惜しまなかったことにあります。
コナンの冒険譚に馴染みのある人であれ、この素晴らしい世界に初めて足を踏み入れる人であれ、観客の皆様、特に若い世代の方々とこの作品を共有できることに非常にワクワクしています。私たちに多くのことを教えてくれる意味深い物語であると信じている本作が、一人でも多くの人に届くことを願ってやみません。
■加藤清史郎(コナン役)
今の僕の心中を言語化するなら、まさに”バクバク”です。この『未来少年コナン』が皆様のもとにどのように届き、この世界をどのように体感していただけるのか。ドキドキしていて、そんな中でもほんの少しだけワクワクしていたりもして。
拙い文章ではありますが、これが、今このタイミングの僕の素直な心持ちです。
終演後、今を生きる皆様の中のどこかで、『未来少年コナン』とコナンが息をしていますように。僕は駆けます。
■影山優佳(ラナ役)
今回、長年愛されている「未来少年コナン」という作品に出会えたこと、そして素敵なカンパニーの皆様とご一緒させてもらい、同じ舞台に立たせて頂くこと、光栄に思っています。
ラナは強くて儚くて、芯がある女の子で、このキャラクターに何度助けられたか。。そして挫折と発見の日々のなかで、カンパニーの皆様に助けて頂いて今日まで来ました。
明日からはラナとして、助けられてきた役に乗っかって、お客様には生きる希望を持って帰ってもらえるように。楽しみにしていただけたら。
■成河(ジムシー役)
ついに初日を迎えられる事を嬉しく思います。インバル・ピント×未来少年コナン、稀代の美術家であり、シアター・メイカーであるインバルの描く『未来少年コナン』は、アニメーションと演劇体験の奇跡的な融和を果たしています。ご覧になった方々それぞれに、忘れられない一瞬が訪れますように。原作をご存知の方もご存知でない方も、きっとこの「インバルの描く絵」に夢中になって貰えると思います。劇場でお待ちしています。
■門脇 麦(モンスリー役)
インバルの自由な創造は、私の知っている世界よりもちょっぴり曖昧で大胆で、その世界を作るには膨大な素材、そして抽象的だからこそ、どのテンションで舞台を作っていくことが良い選択なのかの判断が難しく、稽古場はいつもあっという間に時間が経ってしまいます。
しかし小屋入りして数日経ちましたが、私は何度、あまりの美しさに驚き、ときめいていることか!やっぱりインバルが作る世界が私は大好きで、どうしたってドキドキさせられます。課題は山積みですが、皆様にもたくさんの宝物のような瞬間が届きますように。劇場でお待ちしております。
■宮尾俊太郎(ダイス役)
アートと、ファンタジーが、リアルになろうとしている――。
我らの最後の息吹が吹き込まれたこの作品が、どう昇華されていくのか――、楽しみです。
誰しもが、人生の潮目が変わる瞬間に出くわすことがあると思いますが
僕も今、運命の岐路に立っているのだと。それをビシビシと感じています。
劇場で、お待ちしております。
■今井朋彦(レプカ役)
舞台づくりというのは、答えを見つけることではなく、試し続けることなのかもしれません。行く手にいくつもの道があり、どのルートを進むのか、試しては戻り、また違う道を行く。そんなことをひたすら繰り返してきたのが、今日までの道のりでした。進んできた道がどんな道なのか、いまどの辺りにいるのか、私たちにも正確にはわかりません。でも作品という「山」を登ってきたことは確かです。劇場にお客様を迎えたとき、そこではじめて見える風景、それが私たちの現在地なのだと思います。
■椎名桔平(おじい・ラオ博士 役)
舞台『未来少年コナン』の稽古が終わり、いよいよ初日を迎える事となりました。インバル・ピントさんとダビッド・マンブッフさんが創り出す世界観は、今を生きる私たちに、希望と勇気、そして大いなる警鐘を伝えてくれるに違いありません。観客の皆様に、この舞台の持つ独自の趣と美しさを御堪能頂ければ幸いです。
舞台『未来少年コナン』<舞台写真>
舞台『未来少年コナン』<ストーリー>
西暦20XX年、人類は超磁力兵器を使用し、地球の地殻を破壊、大変動が起こった。五つの大陸はことごとく海の底に沈み、栄華を誇った人類の文明は滅び去った。それから20年後、孤島・のこされ島では少年コナンが育ての親・おじいと二人で暮らしていたが、ある日、謎の少女ラナが島に流れ着き、コナンの運命が動き出す。島には工業都市インダストリアから行政局次長モンスリーが飛来して、ラナを誘拐してしまう。コナンはラナを助け出すため、いかだに乗って冒険の旅に出ることに。 旅先では謎の野生児・ジムシーやインダストリアの貿易局員・船長ダイスなどと出会ってゆく。一方、自然に溢れたラナの故郷・ハイハーバーには、天才科学者・ブライアック・ラオ博士の居どころを探すインダストリアの行政局長レプカ率いる兵士たちが襲いかかる。コナンは仲間たちと巡り合い、大切な人を守るために様々な困難に立ち向かってゆく。そして人類に残された世界で、新しい未来を切り拓いてゆくのであった。
(文:野上瑠美子/撮影:田中亜紀)