“デキる”のみをものさしに、今後の舞台界を担っていくであろう、注目株の若手俳優をピックアップ。彼らが「デキメン(=デキる男優)」である理由、そして、隠れた本音をロング・インタビューで探る!
【第10回】内藤大希 TAIKI NAITOU
「俺ってなんだろう?」って日々もがきながらも、
変わりたい自分がどこかにいます
Writer’s view
“実力”をものさしにセレクトしている当企画では、若くてもキャリアのある人たちの登場が多かったのですが、今回の内藤大希さんも子役出身。技術を得るために必死に努力を重ねる時期をある程度越えたといえる彼らには、そこから先の悩みが生じるようで、このインタビューも途中からカウンセリングにシフト!? 舞台上の輝きのベースにあるもの――ネガティブな部分も正直に語ってくれました。出演中の『パッション』での、あの“ミュージカル・プリンス”との出会いも興味深いです。
取材・文/武田吏都
――内藤さんはアルゴミュージカルで、11歳のときに初舞台。ミュージカルやショー的な舞台での印象が強いのですが、ご本人もやはりそういう志向ですか?
内藤 わからないんですよ。
――おっと、のっけから(笑)。
内藤 今、『パッション』をやりながら思っているんですけど、ミュージカルって難しいですね。すごくクオリティやレベルの高いものだなというのを改めて実感したというか。この作品の曲って、拍手するタイミングもないし、歌としてキャッチーに残る部分ってお客さんはたぶん全くないと思うんですよ。そういう(スティーブン・)ソンドハイムのあの複雑でデタラメのような(笑)メロディを、主演の(井上)芳雄さんはじめ皆さんがセリフのように表現していて。
ミュージカル「パッション」(2015年、上演中)
ジョルジオ役の井上芳雄
――補足しますと、『パッション』の楽曲を作ったスティーブン・ソンドハイム(他に『スウィーニー・トッド』『イントゥ・ザ・ウッズ』など)は一般的に、難解なメロディラインで知られている人ですね。キャラクターの複雑な心の動きに沿った音楽というのか。
内藤 それを芳雄さんたちは、歌だけど歌と思わせない。それってすごいことだなと思って。ほんとに感情の流れで、それがたまたまメロディになっていて、「あ、これがミュージカルなんだ!」と思ったんです。いわゆる若手のイケメン・ミュージカルっていうのは楽曲がひとつずつキャッチーに作られていて、それが物語の中にはめ込まれているという感じですよね。歌いながらエンターテインメントになっているっていう部分が多いと思うんですけど、そういうものとはまず構造自体が違うっていうところで、すごく勉強になったというか。演出の宮田(慶子)さんも同じ新国立劇場の、僕の本格的な初ストレート・プレイだった『わが町』(2011年)でお世話になっていて、大好きなんです。『わが町』のときも台本の読み方とかをよく楽屋に聞きに行ったりして。宮田さんと出会って、何が次のセリフのフックになってるのかとか、舞台上における自分の役割は何なのかとか、そもそも今舞台上で行われていることが何なのかとか、いろいろ考えるようになりました。
――少し戻って、俳優・内藤大希さんの始まりから聞かせてください。子供のときから歌ったり踊ったりすることが好きで、この世界に飛び込んだ?
内藤 いや、親の勧めで。自分がやりたいと思って始めたわけじゃないんですよ。
――えーと、Wikipediaでは“『レ・ミゼラブル』を観て役者を志す”という記述がありましたが……。
内藤 『レミゼ』はアルゴの中で流行ってたんです。当時、アルゴの先輩にいっくん(山崎育三郎)がいたんですけど、いっくんの弟が僕と同い年だったっていうのもあって、よく家に遊びに行ったり泊まったりしてたんですよね。野球したり、一緒にお風呂に入って背中流したり(笑)。その中で『レミゼ』が遊び道具だったというか。CDをひたすらリピートして流して、一人で『対決』(ジャン・バルジャンとジャベールの掛け合いのナンバー)を歌ってみたりっていう“レミゼごっこ”。それはもうアルゴをやっていたときだったので、きっかけではないです。Wikipedia嘘ばっかり(笑)。演劇を休んでいてまた始めた19歳のときも、指定校推薦で入った大学で、友達とクラブで「イェーイ!」って遊び回るのが楽しかった時期で。1年生の前期の単位が2しか取れていないから、もう留年決定なんですよ(笑)。だったら大学辞めてもう1回舞台やるわっていう、なんか大学を辞めるための理由付けみたいな感じだったし。だから思い返すと、今まで本当に自分からやりたいと思ったときがないんですよ。こんなこと、マネージャーを前にして言うことじゃないけど(苦笑)。今でこそ、この人にお芝居を観てもらいたいと思う演出家が何人かいて、その人の演出作品に出たいっていう気持ちがあったりするんですけど、それを目標にすることで、自分の気持ちを落ち着かせている部分があるというか……。
――例えば、アルゴミュージカルで一緒だった清水彩花さんや西川大貴さんがその『レミゼ』の舞台に立っていたりしますが、「ああいう舞台に自分も!」というのは目標にならない?
内藤 ああいう作品に出ている自分が想像できないというか。「『レミゼ』って遊ぶものじゃないの?」って思っちゃうんですよね。オーディションで楽譜を見たときも、「あ、これって楽譜どおりに歌わなきゃいけないもんなんだ。でも俺には小6からそれで歌ってきた自分の音形があるし!」って感じで。だから「リズムが違う」って言われても「いや、わかんないです」、「わかんないじゃないんだよ!」って怒られたり(笑)。僕の中で遊び道具だったから、仕事として向き合う感じがしないというか。
――意外です。正当派のミュージカルにどっぷり浸かってきた方なのかと勝手に思っていました。
内藤 全然。むしろミュージカルよりも、観るんだったらストレートプレイの方が観たいなって思うタイプです。だから芳雄さんのストレートプレイ『負傷者16人』は観たことあったんですけど、ミュージカルではほぼ観たことがなくて、「え、芳雄さん歌上手ッ!」って最初思いました。失礼な話なんですけど(笑)。
――ブロードウェイとか本場のミュージカルを観に行ったことは?
内藤 ブロードウェイに1回だけ。行きのタクシーの運転が乱暴すぎて、劇場着いたら気持ち悪くなっちゃって、『アダムス・ファミリー』を一幕で帰るっていう。オープニングの♪デレレレ、パンパン!(手を叩く)っていうのだけやった記憶はあるんですけど(笑)、中身を全然覚えてなくて。「せっかくのブロードウェイがぁ……」と思いながら。
――なぜ今の質問をしたかというと、『恋するブロードウェイ♪』(2011~15年)での内藤さんの働きがすごく印象に残っているんです。特に、vol.3での内藤さんのソロ『ミスター・セロファン』(from『シカゴ』)と『スーパースター』(from『ジーザス・クライスト=スーパースター』)が見事だったなと思って。ただ技術的に上手いというのではなく、表現が軽やかで、ああいう外国のミュージカルの感性みたいなものが血に混ざっているような感じがしたというか。
内藤 いや、どっちも原作のミュージカルや映画を観たこともなかったですね。
――そうでしたか(笑)。でも『ミスター・セロファン』なんて、もともとの『シカゴ』ではサエない中年男性が歌う曲じゃないですか。キャラクターは全然違うのに、すごく表現力があるなと。
内藤 どういうキャラクターが歌う曲かっていうのも知らなかったです。「自分は透明だ」っていう歌詞の意味もわからなくて、演出のスズカツ(鈴木勝秀)さんにいろいろ教えてもらいました。知らないからこそというか、自分の解釈に変換するのが好きで。「自分だったら」とか、「いや、僕はこういうイメージなんですけど」っていうのを伝えたりもしますね。あの曲のときも自分から提案して、稽古場からちょっと照明を暗くしてやってみたりとか。
「恋するブロードウェイ♪」vol.3 撮影/羽田哲也
――そういうスタンスは昔からですか?
内藤 いや、僕『冒険者たち』(2009、10年)っていうミュージカルのとき、川本成さんとか周りの共演者が台本を読んでいるときに「気持ち悪い」って言う感覚がよくわからなくて。「この役なのになんでこの位置にいないんだろう」とか、「なんでここで歌うんだろう、今俺はこういう気持ちだから歌えないんだけど」っていう“気持ち悪い”なんですけど。僕は小学生からやってきているから、やっぱりコマっていうか、自分の感情云々より、演出家の指示のもとでの“ここでこのセリフを言う、言う、言う”の連続で舞台は成り立っていると思っていたんですよね。
――演出家のジャッジが第一で、“教える、教えられる”の先生、生徒の関係というか。
内藤 そうですね。役のバックボーンを自分で作ってみんなの前で発表したり、そういう演劇的な基礎は子役のときもやっていたんですけど、台本を読んで自分の感情がこううねって、とかいうことを考えたことがなかった。ここに書いてあることはこうならなきゃいけない、無理やりにでもそれをどう持って行くかってことに重きを置いていたし、そういうものだと思っていて。だからさっきの“気持ち悪い”も「え、歌わないって選択肢あるの!?」っていうか、それを演出家に尋ねるっていうのが僕の中ですごいことで、「そういうもんなんだ、本来は」って、そのオトナの演劇の人たちを見ていて思いました。そのとき、今まで俺ってなんか窮屈なところにいて、舞台自体が楽しいと思ったことってそんなになかったなって感じたし、同時に、「じゃあ、なんでもできるじゃん!」って。
ミュージカル「冒険者たち」初演(2009年)
――『冒険者たち』の本番では、その感覚はどう生かせたんですか?
内藤 自分の感情がいろいろ揺れ動くっていうのを感じられました。それまでは決められたトーンで、自分の中の決まっているものを出していくっていう、言ってみれば半分ロボットみたいなイメージで、それに対する葛藤も全くなかったんですけど、そうじゃなくてもいいんだって。相手から受けた感情をもらって出すということをやれて、そのことに気づけたというのがありましたね。それから、「あ、お芝居って楽しい」って。でも、それに気づいたことで混乱してくるときもある。なんでもできると思いながら、やっぱり役という制約の中にあって、結局「あれ? 日常ではできるのに、なんで舞台上だとこんなに不自由な人間になっちゃうんだろう……」って思ったり。そういうところも、芳雄さんはすごいんですよ。お芝居って次の行動がわかっていることだからある程度、予定調和になるはずのところを、次の行動を全く考えないでフラットに舞台上にいる、ように見える芳雄さんを見て、「すげえな、こうなりたいな」って。アルゴで一緒にやっていた(大山)真志に、「井上芳雄はすごいよ! 『パッション』観た方がいい」とか言ってたりするんですけど(笑)。
――大山さんにも第7回でご登場いただきました。彼と共演したミュージカル『オオカミ王ロボ~シートン動物記より~』(2011、13年)でのハツラツとした演技も印象に残っています。いろんな気づきのあった『冒険者たち』や『わが町』も影響していたのでしょうか?
内藤 そうですね。吹っ切って楽しいし、いろんなことをやりたいと思う時期で。僕はレッドラフっていうライチョウの役だったんですけど、演出家的には感情をそんなに出さないでっていうシーンも、「いや、でも動物だってきっとこうで!」とか、意味不明な熱い魂を持っていたときです(笑)。年下の龍ちゃん(小野田龍之介)に「ちょっとタイキくん、うるさいよ?」ってなだめられたり(笑)。僕は演出家と話すときに言葉が足りなくなってくるので、そういうときに龍ちゃんが補って言ってくれたりするんですよね。ま、彼の方が大人ってことなんですけど(笑)。
ミュージカル「新オオカミ王ロボ~シートン動物記より~」(2013年)
――11歳からというと15年以上のキャリアがありますが、大きな挫折は今までありました?
内藤 ない、かな。有頂天になることもなければ、挫折もないという感じで。でもだからこそ「俺ってなんだろう?」っていうか、このまま舞台を続けていいのかってことで日々もがいているんですけど。この仕事が嫌いなわけではないけど、すぐ辞めたくなっちゃうんですよ。さっきも言ったように、自分がほんとにやりたいと思ったときがないっていうのがあるから、「これって自分がやりたいことなのかな?」っていう単純な疑問。それこそ小さいときからの杵柄でやってきて、周りにも昔から一緒にやってきた仲間がいるから同じ流れでなんとなく居ちゃってて。そしてありがたいことになまじ仕事がある分、実際に辞めることはないし、結局バイト以外にはこれしかやってきたことがないから、社会において何かできるかっていったら、新たに何かを始める自信もないみたいなところで……これ何の悩み相談ですかね??
――聞きますよ、この際(笑)。年齢的なところもあるでしょうし、俳優に限らない悩みという感じがします。
内藤 そうなんですよ。いろんなことを考えちゃうんですよ、27歳! 俺、カラオケだとすごい歌上手いと思ってて、カラオケだったらたぶん芳雄さんにも負けないんですけど(笑)、ミュージカルの舞台で通用するかと言えばまだまだだなと思うし、ダンスもヒップホップとかなら楽しく踊れるけど、ジャズダンスチックな魅せるものはもっと技術が必要だなと思うから、できれば踊りたくないですって思ってしまう。そんな風にミュージカルでの技術は中途半端だから、「俺はお芝居(=演技)がやりたいんだ!」って気持ちにならないと演劇をやってられない時期がありましたね。
――でも歌、ダンス含めてやっぱり基礎がしっかりしているので、ある程度はササッと出来ちゃう人ですよね? 少なくともそう見えていますが。
内藤 うん、たぶん。とか言って(笑)。クオリティを求められれば苦労するとは思うんですけど、「じゃあ、やって」と言われたことに対する適応能力はたぶん、ある方かなと思います。空気の読み感とか、「あ、こういうことを求めてるのかな」っていう察知能力っていうのは、なんかあるような気もしますけど。
――かつ、若くて見栄えもするという意味では、表現が良くないかもしれませんが、内藤さんはすごく使い勝手がいい俳優さんという感じがしますね。
内藤 そうなんですよ。 “使い勝手がいい”ってまさにそうだと思う! 『パッション』で今やっているアウジェンティという兵士も、わりとそういう役割にいると思います。さっきから話に出ている芳雄さんとも、お芝居では絡みがなくて。手紙を渡すのと、僕が芳雄さんにコートを掛けるシーンはあるんですけど。コートのシーンはマジで超緊張して、他の人でめちゃくちゃ練習しました。芳雄さんではできないから、同じくらいの背格好の子をつかまえて、「もっとこういう方がいいのかな?」って何回も。で、俺、そういうアンサンブルをやっていても、特に何も感じないんですよね。それはそれで楽しいっていうか。
ミュージカル「パッション」(2015年、上演中)
――主役や大役への欲がないということ?
内藤 ただどんな役でも、年齢的なことはともかく、この役は俺やれないなって思ったこともあまりないんですよ。ま、さすがに『パッション』のジョルジオはできないなと思うんですけど。
――うーん、完全に自信がないわけでも、欲がないわけでもなさそうですね。
内藤 「このお芝居になんで俺出られてないんだろう」とか、「この人に出会いたいのに!」っていう嫉妬で眠れないときもあったりします。……て、だいたい寝ちゃいますけど。ま、いっかって(笑)。
――最初にちょっと言っていた、出てみたい演出家というのはどなたですか?
内藤 小川絵梨子さん。ここ最近でずっと1位です。小川さん演出の舞台はすごく出たいっていう思いのもと、よく観に行きます。『エクウス(馬)』という作品がすごく好きでやりたいので、浅利慶太さんの演出も受けてみたいし、『スリル・ミー』の栗山(民也)さんも。あとはやっぱり蜷川(幸雄)さん。僕、さいたまネクスト・シアター(=蜷川が率いる若手俳優集団)のオーディションを受けて、一応入ったんですけど、作品を上演するまでのワークショップの期間に他の仕事の都合で全然出席できなかったりして、結局自分から辞めたんです。演出を受けることなく、ただ蜷川さんと仲良くなっただけっていう(苦笑)。今も稽古場にお邪魔させてもらって蜷川さんの隣で稽古を見せていただいたりもするし、電話するたびに蜷川さんに「オイ内藤、売れてんのか?」って聞かれます(笑)。だから出てないのに出た気持ちは人一倍するんですけど(笑)、「このまま蜷川さんの舞台に出れないまんまだったらどうしよう!」って夜眠れないときもあります。知り合ったのに出れないって、それは悔しいと思いながら。ただ、昔からの知り合いの役者さんが蜷川さんの舞台に出たのを観に行ったら、全然素敵じゃなかったってことがあって。なんで蜷川さんの舞台に出たいかっていったら、出たら何かが変わると思っていた自分がいたんですよね。でも「あ、これ変わんないパターンもある?」と思って、蜷川さんともちょっとそんな話をしたんですけど、それからは出ればいいってわけじゃないんだなってことに気づいたし、闇雲に出たいと思うことはなくなったんですけど。でもやっぱりなんか、変わりたい自分がどこかにいたりはするんですよね。
――蜷川さんレベルの大物にも物怖じせず、グイグイ行動できるっていうのは長所ですね。
内藤 オーディションのときはさすがに「世界のニナガワがいるぜ!」と思ったんですけど(笑)、会っていくうちに「あれ? 別に怖くもない、普通のおじさんじゃないか?」と思い始めて。宮田さんもお母さんのような感じがするし。あ、芳雄さんとは最初話せなかったんですけど、ちょっと話してみたら、親戚のお兄ちゃんかなってくらいフランクでした(笑)。確かに、年上の方とか年配の方をあまり怖いとか思ったことないっていうのはありますね。
――内藤さんには親しみやすさがありますし、懐にシュッと入っていくのも上手い感じ。
内藤 でもそれが仕事につながらないんですよー!(笑)
――さて、いろんな悩みのある中で、この先の“俳優・内藤大希”はどう進んでいきましょうか?
内藤 これも芳雄さんを見ていて思ったんですけど、ミュージカルでもストレートプレイでもなんでも結果的に、やっぱりお芝居ができればいいんだって。歌だって表現という意味では“芝居”だから、そこなんだなと思いました。宮田さんも、「芝居が大事だってことに早く気づいたのは芳雄にとってすごく良かったよね」って。芳雄さんは発信するというよりも“受ける”ことができる。常にフラットで。僕が芳雄さんのそういうところにひたすら感心してたら、宮田さんが「いや、タイキは1個ずつでいいんだよ」って、もはやお母さんのようで(笑)。でもほんとに芳雄さんを見ていると、すごく勉強になりますね。
――個人的には先ほど言った『ミスター・セロファン』みたいな曲における細やかな表現力も高く買っているのですけど、内藤さんにとって歌は武器ではない?
内藤 みんなでカラオケ行くときの武器? って、怒られますね(笑)。歌うことは好きなんですよ。でも舞台では自分が上手いとは思ったことなくて、ちっちゃな自分の空間でなら発揮できるっていう内弁慶なところが、カラオケ好きなところにモロに反映されちゃっているんですけど(笑)。あ、ちょっとそういう意味で言えば、ブロードウェイの『レミゼ』とか『ミス・サイゴン』みたいな大作に出たいとはあまり思わないけど、『ラスト5イヤーズ』とか『チック,チック…ブーン』とか、オフ・ブロードウェイのむしろちっちゃい規模のミュージカルにはすごく出たいです。ああいうのが好き。だから8月に出た2人ミュージカルの『BEFORE AFTER』は自分的にすごくツボでした。規模も曲の感じもああいうのが好きだし、自分には合っていると思いますね。
ミュージカル座「BEFORE AFTER」(2015年)
――前向きな話題で終われてよかったです(笑)。
内藤 逆に悩み相談みたいな感じになってスミマセン。なんかちょっとスッキリしました(笑)。
Q.「イケメン」というフレーズに感じることは?
舞台の世界においては、やっぱり『テニスの王子様』っていう出身から派生した言葉っぽくなっていますね。僕も若くもないしイケメンでもないのにたまにそういうカテゴリーになったりするけど、なんか聞かなかったことにしちゃう(笑)。うれしいとかって気持ちはないんですけど、そういうカテゴリーなのは確かなので、まぁ、いいやって感じですね。
Q.「デキメン」が思う「デキメン」
やっぱり井上芳雄さん。こんなにもすごいかって、衝撃的でした。やっぱり、常にフラットであるということですね。朝来たときの「あ、おはよう」っていうスタンスのまま、芝居中も淡々としていて、至って自然。芳雄さんの場合、そういう日常の流れから自分でチョイスしたのがたまたま台本に書いてあったセリフだったって風に見える。これってすごい! フラットで受け入れて相手にちゃんと返せて、それプラス自分の中での感情がすごく動いている。この人、究極だなと思います。
同世代では、海宝(直人)くん。彼の歌も好きだけど、芝居が好き。芳雄さんもそうですけど、「育ちがいいのね」って思ってしまう品の良さがあって、ああいう感じがすごく好きです。
Q.「いい俳優」とは?
難しい質問……。僕のすごく好きな役者さん、段田(安則)さんのコメントの受け売りになっちゃうんですけど、“演出家をインスパイアさせる”って言葉がすごく衝撃的で、なんてカッコいい響きだろうと。演出家の世界観じゃないところを自分の引き出しから出して、それを認めさせて、「それいいね」って言われる。そうして別の価値観みたいなものが生まれるって素敵だなって。そういうことができる人になりたいです。
論理的に何かを突き詰めて行くというより、すごく感覚で反応していくタイプだと思います。小さい頃からの積み重ねもあると思いますが、特に芝居に関してその感覚があって、演出家が求めていることを、論理的ではないんだけれど把握できるところがすごくあります。実はものすごい読書家でいろんな本を読むことが好きなので、それが台本や演出家の言葉の解釈につながっているのかなと思います。
人当たりは良くて、上の人にも下の人にも好かれる性格なので、そういう部分は安心しています。今後望むことは、もっともっと貪欲になり、自信を持ってひとつひとつの作品に向かっていってもらいたいということでしょうか。彼はすごくハートのある歌が歌えるので、事務所的には歌やライブをもっとやってほしいとも思っていますね。
Profile
内藤大希 ないとう・たいき
1988年2月18日生まれ、神奈川県出身。O型。1999年、アルゴミュージカル「フラワーメズーラの秘密」にて11歳でデビューし、子役として活躍。2008年、ミュージカル「テニスの王子様」(芥川慈郎役)に出演。ミュージカル、ストレートプレイ、コンサートなど、幅広い舞台で活躍を続ける。「それいけ!アンパンマンくらぶ」(BS日テレ)に“うたのお兄さん”として出演中
【代表作】舞台/ミュージカル座「BEFORE AFTER」(2015年)、「DAICHI」(2015年)、「4BLOCKS」(2015年)、「タイム・フライズ」(2014年)、「ミリオンダラー・ヒストリー」(2014年)、Theatrical Concert「ビニール・ドーナッツ」(2014年)、「Music Museum」(2014年)、「愛の唄を歌おう」(2014年)、ArtistCompany響人「みんな我が子」(2013年)、スタジオライフ「11人いる!」「続・11人いる!」(2013年)、One on One「しあわせの詩」(2012、13年)、「銀河英雄伝説 撃墜王」(2012年)、「サロメ」(2012年)、「合唱ブラボ~!!」(2012年)、「URASUJI」(2012年、15年)、「恋するブロードウェイ♪」(2011~15年)、「オオカミ王ロボ」「新オオカミ王ロボ」(2011年、13年)、「わが町」(2011年)、「ありがとう!グラスホッパー」(2009、10年)、「冒険者たち」(2009、10年)、ミュージカル「テニスの王子様」(2008~09年)、「少年陰陽師」(2007年)、「君に捧げる歌」(2006~08年)、「ボーイズ・レビュー2006」(2006年)、
【HP】 「トイレがマイホーム」 http://ameblo.jp/710taiki/
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