2024年8月24日(土)と25日(日)、日生劇場ファミリーフェスティヴァル 2024にて音楽劇『あらしのよるに』が上演される。
『あらしのよるに』は、オオカミのガブとヤギのメイの間に芽生えた不思議な友情を描いた人気絵本シリーズとして1994年に第一作が発表されて以降、アニメ化や歌舞伎化されるなど多くの人に愛されてきた作品だ。本作は音楽劇として、立山ひろみの脚本・演出で2019年に初演、2021年に再演、そして今回が3回目の上演で、ガブ役には白石隼也、メイ役には南野巴那と新キャストを迎え、鈴木光介の音楽、山田うんの振付により、絵本の世界を立体的かつ色鮮やかに舞台上に立ち上げる。ガブ役として本作に挑む白石に今の心境を聞いた。
子どもに向けて何かやりたいと思っていた
──今回のお話が来たときの最初のお気持ちをお聞かせください
僕は歌や踊りのある作品は得意ではないのであまりやってこなかったんです。この作品については、まず音楽劇と聞いたので少しだけ身構えましたが、ガブ役は芝居が基本だということだったので、挑戦してみようと思いました。何より子どもたちに向けた演劇ができるということは、とても素敵な経験になるだろうなと思いました。
──ファミリー向けの舞台作品は今回が初めてとのことですが、以前からやってみたいという気持ちはありましたか
子どもに向けて何かやりたいな、という気持ちはかねがねありました。地元の先輩が小学校の先生で、僕はその学校の特別支援学級の1人の生徒とずっと交流を持っていたのですが、彼が小学校を卒業するとき、先輩から「特別講師として何かやってくれないか」と言われたので、特別支援学級の子たちと短いゾンビ映画を作ったんです。子どもたちにゾンビ役をやってもらって、僕が彼らに襲われる先生役をやりました。午前中に撮影して昼休みの間に編集して、帰りのホームルームの時間にみんなで完成した映画を鑑賞して終わる、ということをやらせてもらった経験は僕にとって大きくて、子どもたちに対してそういう距離感でエンターテイメントを伝えられるのはとても嬉しいことだな、と思っていたので、こうしたファミリー向けの企画にも興味がありました。
──歌ありダンスあり、生演奏もあり、という作品ですが、そのあたりの印象はいかがですか
今はまだ歌稽古の段階ですが、鈴木光介さんの音楽がすごく良いんですよ。この物語のテーマと合っていて、キャッチーでポップで楽しい曲なんですが、様々な趣向が凝らされていて聞いていてすごく楽しいし、これがお芝居とともに流れたらきっと楽しい劇になるんだろうな、と今からワクワクしています。
親子のコミュニケーションツールになれば嬉しい
──ガブというキャラクターについて、自分と似ていると思う部分はありますか
結構似ているかもしれないですね。僕もどちらかというと集団行動が苦手な方なんです。ガブもオオカミの群れから1人離れて生活していますが、僕も集団の中だと1人になっちゃうことが多いです。だから中学生のときとかも、集団からはみ出た者同士で仲良くなることが多くて。そういう意味では、ガブとメイに近い友人関係を作っていたところは昔からあったのかもしれないです。
──今回が初共演となるメイ役の南野さんにはどのようなイメージをお持ちですか
今はすごく透明感があってピュアで元気な女の子という印象ですが、これからどんな女優さんになっていくのか、多分まだ本人もわかっていない部分もあると思うので、今回の公演の中でものすごく成長するだろうし、どんどん変化していくと思います。そうしたフレッシュな方と一緒にがっつりやれることは、僕としても嬉しいことですし、楽しみです。
──阿南健治さんがオオカミのリーダー的な存在のギロ、平田敦子さんがおばさんヤギとしてご出演されます。お2人との共演で楽しみにしていることはありますか
阿南さんは以前ドラマでご一緒したときに、いろいろ気にかけて話しかけてくださった素敵な方という印象があって、だからギロ役の怖い阿南さんが全く想像できていないです。舞台でご一緒するのは初めてなので、きっととても魅力的な怖いオオカミをやってくれるだろうな、と楽しみにしています。平田さんは『奇跡の人』という舞台でご一緒して、当時僕はまだ舞台出演が2回目で右も左もわからないような状態だったので、そこからちょっとは成長した姿を見せられたらいいな、と勝手に思っています。あまり今回は役同士の絡みがないのが残念ですが、平田さんならば間違いなく面白いおばさんヤギになると思うので楽しみです。
──最後にメッセージをお願いします
『あらしのよるに』というお話し自体がとても素晴らしい筋書きで、これまで歌舞伎で上演されたりもしていますが、その作品を音楽劇というアプローチでお見せすることで、また違った面白いものになると思います。多くの方に見に来てもらいたいですが、特に親子で来てくれたら嬉しいです。子どもが楽しめるのはもちろん、大人も気づかされることが非常に多いと思うので、親子のコミュニケーションツールになったらいいなと思いますし、これが演劇初体験になるという子にもたくさん来てもらえたら嬉しいです。
インタビュー・文/久田絢子
写真/曳野若菜
ヘアメイク/橘 房図
スタイリスト/岡部俊輔
衣裳/INNAT(@innat_official)