北九州芸術劇場プロデュース/九州男児劇「せなに泣く」公演迫る!★製作発表会レポート★

2018.11.26

熱き九州男児の血潮を秘めた男たちが奏でる、笑いと嘆きの人間ドラマ

11月29日(木)から12月2日(日)まで、北九州芸術劇場での上演が迫る、北九州芸術劇場プロデュース/九州男児劇『せなに泣く』。本作は劇場開館15周年の節目に挑む新たなプロデュース公演であり、熊本県出身の劇作家・演出家 田上豊(田上パル)が“九州男児”をモチーフに新作を書き下ろし、九州出身の8名の俳優たちと共に、約1ヶ月半北九州にて滞在制作を行うというものだ。

出演は、北九州・福岡を拠点に活躍の幅を広げる有門正太郎(有門正太郎プレゼンツ)、椎木樹人(万能グローブガラパゴスダイナモス)、寺田剛史(飛ぶ劇場)。他にも福岡県出身でダンスカンパニー・コンドルズのメンバーである ぎたろー、宮崎県出身で劇団唐組等を経て全国の劇場プロデュース作品にも多数出演する日髙啓介(FUKAIPRODUCE羽衣)。そしてオーディションで選抜された荒木宏志(劇団ヒロシ軍)、河内哲二郎、五島真澄(PUYEY)の3名。

タイトル「せなに泣く」には、“背中で泣く、世間に泣く、生(せい)=生きることに泣く”といったモチーフを込められており、児童養護施設で親の背中を見ることなく育った5人の男たちのドラマを軸に、社会や時代との狭間に葛藤する男たちの揺らぎや痛み、仲間との絆の物語を、田上作品ならではの疾走感と熱量、ユーモアを交えて描き出す。

先日、その公演に先駆けて作・演出の田上氏と、出演者らによる製作発表会見が行われ、作・演出を務める田上が作品に対する“熱い”思いを語った。

「九州男児の熱さというものをずっと考えていくと、近代化が進みITの時代へ移行する中で、九州男児といわれる特性を持つ人間像というのはやっぱり時代に合わなくなってきているのではないかと。何かひとつ時代が変わっていく中で消えていこうとしているものがあるかもしれない、という所から物語を着想しました。僕の家の近所に、事情があって親御さんと一緒に住めない子ども達が住んでいる寮があって、そこの子ども達とうちの子ども達が時々遊んでいまして。自分も子どもを育てている中で、一緒の家で両親やいろんな愛を、恩恵を受けられない子たちもいると思った時に、九州男児の特性と組み合わせて、存在は知っているけれど実際に接してみないと分からない、痛みを伴うような弱者といわれるものを演劇作品として描いてみたいと思いました。暗い話のように聞こえるかもしれませんが、近所の子ども達もとても明るくて、ただ家に帰るとそういう現実も待っている。そういう思いを台本にのせて、8人の熱い出演者と共に、演出家だけが引っ張るのではなく、世界観や人間像をみんなでディスカッションを重ねながら、全体で一丸となってかたちを作っていく、そういう現場自体が、企画の根底にある熱い劇をつくる事にもなるのではと思います。物語としては、現在地点から出発して昭和から平成にかけての時代を、現在地と過去とを行き来しながら重層的に描こうと思っています。テーマ曲としてメンデルスゾーンのピアノトリオ第1番と第2番、通称メントリという曲があるのですが、この曲は4部構成ですごく印象の違う4つの曲がセットで1つの曲になっていて、その印象で劇もつくっていきたいと思います。3年前に北九州で東筑紫学園高校の皆さんと作品をつくった時、自分は18歳で東京に出てしまったので、土のにおいや海のにおいを感じながら、周りにあふれる九州の方言等にも触れながら作品をつくる事がこんなにも活力が沸くのだなという事を改めて感じたのですが、今回は年齢層も幅広い男性ばかりで、どのような作品になって皆さんの胸に届くのか、九州男児の劇ですが、色んな方の胸に響くようにつくりたいと思っています」

現代の九州男児の姿を通して問いかける、家族・仲間・自分・・・。本作で大切な何かを感じ取って欲しい。