東京公演開幕!M&Oplays プロデュース『ロミオとジュリエット』公演レポート&宮藤官九郎・三宅弘城・森川葵のコメントが到着!

2018.11.20

宮藤官九郎がシェイクスピア作品初演出!!
三宅弘城×森川葵の27歳差のロミジュリは最珍傑作!?

 

11月20日(火)に東京・本多劇場にてM&Oplaysプロデュース「ロミオとジュリエット」が開幕致しました。

W・シェイクスピア作の中でもあまりにも有名な古典劇「ロミオとジュリエット」を、宮藤官九郎の演出で上演。宮藤官九郎がシェイクスピア作品を演出するのは初となります。そして、ロミオには三宅弘城と意表をついたキャスティングに、ジュリエット役には森川葵とまさに異色。そして、マキューシオに勝地涼、ティボルトを皆川猿時が演じるのをはじめ、小柳友、阿部力、今野浩喜、よーかいくん、篠原悠伸、安藤玉恵、池津祥子、大堀こういち、田口トモロヲと、一筋縄ではいかないユニークで多彩な面々が集結しました。

東京公演を皮切りに新潟、大阪、愛知での公演も行います。
宮藤官九郎は「なるべくまんまやる!」とコメントしてはいますが、今回集まった個性的なキャストだからこそ、まんまやることにより、新たな“ロミジュリ”として観客を引き込むこと間違えなしの本作をご自身の目でお確かめ下さい。

【公演レポート】
笑えてピュアで悲しい、宮藤版『ロミジュリ』開幕

世界で最も有名な恋愛劇『ロミオとジュリエット』。このシェイクスピアの不朽の名作に宮藤官九郎が挑む話題の舞台が、11月20日、東京・本多劇場でついに幕を開ける。宮藤が自らの脚本ではなく、演出に徹するのは本作が初。

モンタギュー家とキャピュレット家、敵対するふたつの家に生まれつつ、一瞬にして恋に落ちたロミオとジュリエット。信頼するロレンス神父のもと、ふたりはすぐに結婚の契りを交わす。だがロミオの親友のマキューシオがキャピュレット家のティボルトの手にかかって死に、怒りに震えティボルトを殺めたロミオが追放になったことで、ふたりの運命は一気に狂い始める。
ひと目惚れした若く美しい男女が、家同士の諍いに巻き込まれ、非業の死を遂げる悲劇。『ロミオとジュリエット』という作品に対し、観客が抱いてきたそんな凝り固まったイメージを、宮藤は軽々と打ち破ってみせる。もちろんそこで起こること自体は変わらないどころか、事前に宮藤が「なるべくまんまやる!」と公言しているように、脚本にもほぼ手は加えられていない。だがこの『ロミオとジュリエット』は、これまでにないほど大いに笑え、そしてなによりピュアで悲しい。冒頭、序詞役のよーかいくんの口上から、モンタギュー家とキャピュレット家の乱闘シーンへ。宮藤作品常連の手練れのキャストが多いこともあるが、笑いを前面に押し出した演出で、そこにシェイクスピア作品にありがちな堅苦しさは一切ない。またともすれば聞き流してしまうことが多い、シェイクスピア特有の壮大な詩のようなセリフ。だがそれぞれの登場人物がキャラクターを際立たせ、生々しくその場に存在しているからこそ、彼ら彼女らから発せられるセリフもしっかり生きて観客の耳まで届く。
そしてロミオとジュリエットの登場。原作では16歳という設定のロミオだが、演じる三宅弘城の実年齢は50歳。脳内に住み着いてしまったロミオのイメージが一瞬疑問符を投げかけてくるが、瞬く間に三宅ロミオのコミカルで愛らしい姿に魅了される。さらに50歳とは思えない三宅の動ける体が、恋に落ちた男の舞い上がりぶりを見事に視覚化する。ジュリエット演じる森川葵は、本作が初舞台。単なるかわいい女の子ではない、無垢な中にある“女”をところどころで滲ませ、ロミオだけでなく観客の目をも釘づけに。ひと筋縄ではいかない、魅力あふれるジュリエット像をつくり出した。観客の笑いをひと際誘っていたのが、ティボルト役の皆川猿時とマキューシオ役の勝地涼。シェイクスピアという新たなる挑戦の場においても、宮藤の求める笑いのツボを的確に押さえ、皆川はその破壊力で、勝地はその突き抜けっぷりで、圧倒的な印象を残す。またキャピュレット夫妻役の大堀こういちと池津祥子が見せる、娘のジュリエットに対する後半の変貌ぶりが、なんとも言えずおかしい。
さまざまなものに姿を変える積み木のようなセットは、ロミオとジュリエットのふたりが、まるでおもちゃ箱の中で恋という名の遊びをしているようにも見える。だがラスト、ふたりが横たわるのはそんなかわいらしいところではない。だからこそ際立つ、残された者たちの中に広がる絶望感。そして観る者の胸を満たす充足感が、宮藤とシェイクスピアとの相性のよさを証明していた。

取材・文/野上瑠美子

【コメント】

≪演出:宮藤官九郎≫


――いよいよ初日です。今の心境をお聞かせ下さい。

面白いとは思います。ただ、自分では正しい「ロミオとジュリエット」のつもりで創っていますが、皆と同じにはやりたくないというのと、同じにはできないので、一般的なロミオとジュリエットとはズレてるんだろうな…と。そのズレが面白ければいいなと思っています。
自分としてはシェイクスピアの戯曲をそのままやっているつもりなのですが、そう見えないだろうなと。

――見どころをお願いします。
ロミオを三宅さんが演じて、ジュリエットを本当に若い森川さんが演じている。そのギャップが、2時間後には気にならなくなってる、というのが今回の作品の魅力だと思います。
皆さん、今までイケメンのロミオを観てきたと思いますが、それによって、見えていなかったものがあったこと、見方が偏っていたことが、今回のロミジュリで明らかになるかと。
人が死ぬということが、悲劇であり、同時にある側面からみると喜劇的であり…という、どちらにも見えるよう、一面的でなく創ったつもりです。今までの「ロミオとジュリエット」ではカットしていた場面を逆にカットしていなかったり…そんなことも楽しんで頂けると思います。

――お客様に向けてPRコメントをお願い致します。
「ロミオとジュリエット」を初めて観るには、この作品がよいのではないかと思います。
僕は、恋愛ドラマがどうも好きになれないんですが、それは恋愛の渦中のある二人ってすごく客観性がなくて、バカみたいな状態なのに、恋愛ドラマでは、バカに見えないように作るものばかりで。僕は恋をしてバカみたいな二人が好きなんです。そういう人間が創ったこの作品は、二人の恋人がちゃんとバカに見えて、なおかつ、可哀そうだなと思える「ロミオとジュリエット」に仕上がっているのではないかと思います。

≪ロミオ役:三宅弘城≫

――いよいよ初日ですが、今の心境をお聞かせ下さい。
だまされたと思って始まった企画が、とうとうここまで来て、本当にやるんだなと改めて実感しています。宮藤官九郎氏演出のもと、誰も見たことがない「ロミジュリ」、およびシェイクスピア作品になったのではないかなと思っています。シェイクスピア初めての方も、シェイクスピアをよくご覧になる方も、どちらも楽しめると思います。賛否はあると思いますが、賛否あった方が作品として面白いですしね。
このスタッフ・キャストだからこそできた作品だと思います。
今回の作品は一言でいうと「本物の悲喜劇」。喜劇の部分は、ぶっとんでますよ(笑)あまりシェイクスピアをご存知ない方は、宮藤官九郎色でそうなっていると思われるかもしれませんが、シェイクスピア戯曲自体が想像以上にぶっとんでるんです。シェイクスピアもこんな風に考えていたんじゃないかと思います。この作品は、シェイクスピア劇として、はみ出しているようではみ出していないと思います。

――ジュリエット役の森川さんの印象をお聞かせ下さい。
森川さんは、自分の娘でもおかしくない年齢ですし、最初は申し訳ない気持ちでいっぱいだったのですが、稽古を重ねていくにつれて、心で会話できるようになってきて、更にこれから二人の関係が育っていくのではないかと思います。だから、僕のジュリエットですよ!(笑)

――お客様に向けてPRコメントをお願い致します。
シェイクスピアに偏見がある人、僕らがシェイクスピア劇をやるということに偏見がある人、いらっしゃると思います。この作品は、エンターテイメント作品として、とても楽しめると思いますので、そういうこと抜きにして、是非観に来ていただきたいです。約2時間に収まっているので、すごく見やすいですし。
僕はシェイクスピア初挑戦、森川さんは初舞台、宮藤さんは演出のみを手掛けるというのは初。初めてづくしのこの作品、是非、劇場まで見届けに来ていただければと思います。もう「初めて」は今回しかないですから!

≪ジュリエット役:森川葵≫

――初舞台ですね。
まだ実感がわかないですね…。
映像と違って、舞台では、稽古で決めたことが、数日後、「ここの場面こうしてみよう」と変わることがある。すごく新鮮ですね。答えって1つではないんだなと思いました。
シェイクスピアの台詞は、最初、こんな言葉言えるわけないじゃん!と思っていましたが、稽古を重ねていくうちに、所謂シェイクスピアらしい台詞が、なんの違和感もなく、どんどん感情をのせて言えるようになっていきました。それが気持ちいいんです。
そこが、皆がシェイクスピア劇をやりたいと思うポイントなのかなと思っています。

――本作の見どころをお願い致します。
この宮藤さん版「ロミオとジュリエット」を一言でいうと、「笑いに来たはずなのに…」でしょうか。
私、稽古を観ていて、すごく笑ってしまうんです。でも、人が死ぬってなると、急にすごく悲しくて。
たくさん笑って満たされていたはずなのに、ぽっかり穴が開いたような気持ちになります。
登場人物たちが、あれだけ楽しそうに人生を生きていたからこそ起こる喪失感、お客様にもそれを体感していただけるのではないかと思います。

――ロミオ役を演じる三宅さんの現在の印象はいかがですか?
かつらや衣裳を身に着けて、舞台上に立つ三宅さんは、まるで飛び出す絵本に出てくる主人公のようで、
三宅ロミオに、どんどん愛情がわいてきています(笑)

――お客様に向けてPRコメントをお願い致します。
たくさん笑ってもらいたいのはもちろんですが、こんな「ロミオとジュリエット」ってあっていいんだと思って、帰っていただければ嬉しいです。

撮影/宮川舞子