音楽劇『空中ブランコのりのキキ』|開幕コメント・舞台写真到着!

2024.08.08

別役実の傑作童話を原作に、快快の野上絹代が構成・演出
歌・音楽・サーカスありの楽しくも切ない音楽劇

8月6日、夏のアートフェスティバル「せたがやアートファーム」のメインプログラムである音楽劇『空中ブランコのりのキキ』が世田谷パブリックシアターで開幕した。
『空中ブランコのりのキキ』は、劇作家・童話作家として数々の名作を生みだしてきた別役実の傑作童話数作品を原作に、劇団「快快」所属の俳優・振付家・演出家であり劇団活動のみならず演劇・ファッション・ダンスをまたにかける鬼才・野上絹代が一本の音楽劇として再構築し、同じく「快快」の脚本家・演出家であり第57回岸田國士戯曲賞・最終候補となるなど気鋭の北川陽子が脚本を、バンドサウンド・ワールドミュージック・雅楽・エレクトロ・打ち込みなどジャンルを逸脱した特異なセンスを持ち、多くのアーティストやメディアに音楽・リミックス提供し活躍するオオルタイチが音楽を手掛ける音楽劇。
原作は、中学校の国語の教科書にも掲載されていた「空中ブランコのりのキキ」、童話集「山猫理髪店」より「愛のサーカス」などサーカスをテーマとした作品数本、「丘の上の人殺しの家」と、どれも別役実の傑作と言われる、不条理でどこか不思議な作品ばかり。

出演には 咲妃みゆ、松岡広大、玉置孝匡、永島敬三、田中美希恵、谷本充弘、馬場亮成、山下麗奈そして瀬奈じゅん といった魅力的なキャストが揃った。別役作品に登場する、少し不思議で、可笑しくも愛おしいキャラクターを演じる。
更に、吉田亜希(エアリアル)、サカトモコ(ブランコ)、長谷川愛実(エアリアル)、吉川健斗(ジャグリング、タイトロープ)、目黒宏次郎(テトラ)といった、日本サーカス界を牽引するサーカスアーティストも出演。「ながめくらしつ」主宰の目黒陽介をサーカス演出監修に迎え、本格的なサーカスパフォーマンスをお届けする。
さまざまなアートの要素が詰まった、まさに「アートファーム」な今作。傑作童話をもとに、演劇・歌・音楽・サーカス・ダンス・アクロバットを融合し、楽しくも切ない新作としてお届けする。

開幕コメント

【構成・演出】 野上絹代 コメント

ついに『空中ブランコのりのキキ』が開幕しました!!開幕に際して思い出すのは稽古初日です。はじめに皆さんの自己紹介を聞いて「なんてかけがえのない人生を歩んできた方々がここに集ってくれたのだろう」と感動したのを覚えています。キャスト・スタッフ全員で、それぞれの視点から同じものを見ようとする作業は時に大変で、しかし毎日がとても輝いていました。
2024 年夏、世田谷パブリックシアターでこの座組でしか作れない舞台を別役さんの童話をお借りして観客の皆さんと実現できることがとても幸せです。
ぜひ、”まるで世界” のようなこの舞台を一緒に創造してください。

【出演】 咲妃みゆ コメント

まずは、誰ひとり欠けることなく全員揃って初日を迎えられましたことを大変有り難く思っております。
巨大なジグソーパズルを皆で試行錯誤しながら少しずつ創り上げる…そんなお稽古の日々でした。そして"お客様"こそが、この作品にとって無くてはならない最後の大切なピースだったのだなと実感する初日でございました。
心から感謝申し上げます。
我々、約1ヶ月半前が初めましてだったとは思えない程、絹代さんを主軸に優しい絆で結ばれたチームになれたと思います。
大千穐楽まで、心強い仲間達と笑顔いっぱい駆け抜けたいです!

【出演】 松岡広大 コメント

野上さんを中心に、カンパニー全員でとても豊かなお稽古が出来ました。出自は異なり出発点も違う中で、その違いを認め合い人を信じて歩んできました。
「俳優と、サーカスアーティストとの組み合わせ」という二分化ではなく、ぜひこの融合と邂逅を楽しんで頂けたら幸いです。
初めて演劇に触れる方も、よくご覧になる方も、あっと言わせる仕掛けと人生に対する刺激が沢山あります。
そして皆様の想像力によって刺激は倍増しますし、自分自身に役立つ”なにか”が、この作品にはあります。
沢山のお客様と出会えますように。劇場でお待ちしております。

【出演】 瀬奈じゅん コメント

スタッフ・キャスト一丸となって創り上げてまいりました「空中ブランコのりのキキ」。
6 日から開幕し、やっとこの作品を皆様にお届けすることができました。
魅力的で愛すべきキャラクターたち、そして、サーカスの皆様の素晴らしいパフォーマンス。
切なくも心温まる作品となっております。
夏休みの楽しい思い出として、世田谷パブリックシアターに足をお運びいただけましたら嬉しいです。

舞台写真

(撮影:細野晋司)

原作のあらすじ

童話「空中ブランコのりのキキ」
“そのサーカスで一ばん人気があったのは、なんといっても、空中ブランコのりのキキでした。”
キキは三回宙がえりのできる空中ブランコのり。キキの三回宙がえりを一目見ようと、どこの町へ行ってもそのサーカスはいつでも大盛況でした。
しかしキキには、もし他の誰かが三回宙がえりをはじめたら、自分の人気はおちてしまうのではないかという不安がありました。
「お客さんに拍手してもらえないくらいなら、わたしは死んだほうがいい……」
けれども予感は的中し、ある日、他のサーカスでも三回宙がえりが成功してしまうのでした。

童話「愛のサーカス(山猫理髪店より)」
ある夜、象と、小さな象使いの少年を乗せたイカダが港街に流れ着きました。象と少年がどこから来たのか、どうやって来たのかはわからず、少年も話すことはありません。街の人々は象と少年に眠る場所を与え、彼らの生活を見守りました。相変わらず少年は何も言いませんでしたが、少年や象のちょっとしたしぐさや表情に人々は感動してしまい、もはや港町に辿り着いた経緯はどうでもよくなっていました。街の人々は象と少年を思いやり、彼らのために優しくしたいという気持ちが、街全体をなごやかにしていました。
そんなある日、大きな黒い箱馬車が街に乗り込んできます。馬車から現れたのは、金星サーカス
の団長を名乗る陽気な紳士でした。

絵本「丘の上の人殺しの家」
モントン村の西にある丘のてっぺんに、ポツンと一軒、《人殺しの家》が建っていました。
そこには、ピーボテー、キーボテー、チーボテーという、《人殺し 3 人兄弟》が住んでいました。
彼らは沢山の《殺しのメニュー》を用意していましたが、もう 12 年もお客さんは来ていません。
3 人はだんだんと悲しくなってしまいました。
そんなある日、ついにお婆さんのお客さんがやってきました。《殺しのメニュー》を見せると、お婆さんは「私は、ぜんぶやってみてもらいたいんだよ」と言うのでした。