“今月の”優先順位高めです【2024年9月号】

2024.09.01

9月になりました。暦の上では秋ですね。芸術の秋。今月も観たい作品がいっぱいで、なかなかないハードスケジュールになりそう。そんな時こそしっかりと、優先順位を決めてきましょう。というわけで、今月の「優先順位高めです」です。

俳優・佐久間麻由の優先順位高め!

9月!あと4ヶ月で2024年が終わるということに驚きを隠せないでいます。そして暑さにも驚く日々ですし、先ほど(2024.8.26 am8:00頃)、コンタクトレンズをしてるのを忘れてコンタクトレンズを二枚重ねした自分にも驚いております。それでは、驚き隠せぬまま、9月の優先順位高めをお届けさせていただきます。

画餅 特別公演『ホテル・アムール』
ナカゴーの鎌田さんの戯曲を、画餅で…!!こんなにも楽しみな公演をありがとうございます!の気持ちでいっぱいです。観ましょう、ぜひ。薦めましょう、ぜひ。そして分かち合いましょう、よかったら。

ヒトハダ『旅芸人の記録』
2年ぶりとなるヒトハダ第2回公演、残念ながら旗揚げ公演を観られず、ヨッ!マッテマシタ!!!の気持ちです。タイトルの“旅芸人”という言葉がさらっとカッコよく似合ってしまう出演者の皆さん、たまらんです。

南極ゴジラ『バード・バーダー・バーデスト』
活動の発表があるたびそそられてしまう南極ゴジラ。チームワーク抜群という言葉がぴったりぱっきり似合ってしまう南極ゴジラ。10年後どんなことしてるんだろうと期待膨らむ南極ゴジラ。まだ未見の皆さんも、いそぎましょう。

劇壇ガルバ『ミネムラさん』
実験プロジェクトの第2弾。今回は、3名の劇作家がひとつのテーマのもとにそれぞれ物語を書き起こし、ひとりの演出家が束ね、それをひとりの主演が演じることを試みるというもの。テーマは「女性」で、その女性の名前は「ミネムラさん」。その「ミネムラさん」を峯村リエさんが演じるという。つまり峯村さんを多面的かつ存分に堪能できることが約束されているこの作品、最高すぎます。

あと、シス・カンパニー公演 日本文学シアターVol.7【織田作之助】『夫婦パラダイス~街の灯はそこに~』good morning N°5『VOGUES』ヨーロッパ企画第43回公演「来てけつかるべき新世界」やみ・あがりシアター『ベラスケスとルーベンス』も楽しみです!!

そして、まこと勝手ながら優先させていただきたい作品がもう一つ。所属する劇団・スリーピルバーグスの、第2回野外公演inスタジアム!『リバーサイド名球会』を豊岡演劇祭のディレクターズプログラムとして上演します。兵庫県豊岡市のこうのとりスタジアムで、3日間限りの移動型野外劇。雨が降ろうともやります。八嶋智人さんの迸るかっこよさ、平井まさあきさん(男性ブランコ)の色とりどりなチャーミングさ、久保貫太郎さんの力強いまっすぐさ、永島敬三さんの柔軟な優しさ、福原充則さんの壮大な愛、が、この公演にはたくさん詰まってます。観てもらえたら何よりうれしいです。

それでは、日々を豊かにしてくれるような作品に、今月も出逢えますように…。

佐久間麻由
俳優・企画制作。劇団「スリーピルバーグス」所属。企画ソロユニット「爍綽と」主宰。次回出演作品→スリーピルバーグス第2回野外公演inスタジアム『リバーサイド名球会』作・演出:福原充則 @兵庫豊岡市 こうのとりスタジアム 9月20日(金)〜9月22日(日)
X(旧:Twitter):@mamamayuuuu
公式サイト:https://www.lespros.co.jp/artists/mayu-sakuma/

俳優・田代明の優先順位高め!

みなさんこんにちは!
9月です、芸術の秋に差し掛かる季節です!!
早速、紹介していきます!!

2024年劇団☆新感線44周年興行・夏秋公演 いのうえ歌舞伎『バサラオ』
コロナ禍以降、意識的に明るい作品を上演してきた新感線が、久しぶりに楽しいばかりではない、今までとはひと味違ったダークなトーンの作品を上演するようです。
主演を務めるのは、17歳で新感線に初めて参加し、今作で5作目、生誕39年を記念したサンキュー公演となる生田斗真さん!
これまで新感線ではおバカでチャラい役ばかり演じてきた生田さんが、本作ではクールでワルイ男を演じます!
心強い客演陣と癖強劇団員の皆様が、福岡(公演終了)、東京(9月26(木)まで上演中)、大阪(10月5日(土)~10月17日(木))の三都市を駆け抜けます。

ヨーロッパ企画第43回公演「来てけつかるべき新世界」
大阪・新世界を舞台にしたSF人情喜劇。2016年に初演され第61回岸田國士戯 曲賞を受賞した今作。8年前に書かれた作品にも関わらず、ドローンやAI、メタバースなど、実際に起こる事がたくさん登場する事に驚きです。
エモさと馬鹿馬鹿しさ、笑い、可愛げ、たくさんの愛しさが詰まっている今作は全国12都市での公演です。

PARCO PRODUCE 2024「ワタシタチはモノガタリ」
2024年鶴屋南北戯曲賞受賞作家 横山拓也がPARCO劇場へ書き下ろす新作ファンタジックコメディ。
演出は第25回読売演劇大賞優秀演出家賞、小田島雄志・翻訳戯曲賞を受賞し、近年大活躍の演出家・小山ゆうなさんが勤めます。近年観た作品の中で1.2を争うほど「ラビット・ホール」が大好きだった私にとって、小山さん演出の作品が観れる事はとっても楽しみです。
舞台・映像と幅広く活躍中の豪華なキャストでお届けされる今作、必見です。

今月も魅力的な作品が目白押し、どの作品から芸術の秋をスタートさせますか?

田代明
俳優・歌手
北海道札幌市出身。東京藝術大学声楽科卒業。
X(旧:Twitter):@akkarindays

脚本家・演出家・俳優・野田慈伸の優先順位高め!

大型台風が怖すぎたので、家の外に置いてあったバケツや物干しざおまで全部中に入れて怯えて過ごしましたが我が家は無事でした。
9月です。

なんといっても
パタカラぷろじぇくとvol.1「妹のこども(仮)」「オーストラリアの母(仮)」
作・演出、野田慈伸。
こちらはマストになります。
平田満さん×浅野千鶴さん、井上加奈子さん×片桐美穂さん、の30分二人芝居のリーディングを二本立て。
気軽に見れるよう、予約不要、入場料無料の公演になります。(ドリンク代有り)
会場はニューサンナイ。超至近距離で超絶技巧の演技の応酬が見れること請け合いです。
絶対楽しい一時間になりますのでご期待ください。
 
画餅 特別公演『ホテル・アムール』
ナカゴーの鎌田さんの作品を画餅の神谷さんが演出されます。
「ホテル・アムール」は2013年の初演を見ていて、おそらく初めてのナカゴー作品だったんですが度肝を抜かれました。“信じられないことが舞台上で起こっている…!”と驚愕したのを覚えています。今回演出は神谷さんなのでまた初演とは全く違うものになるであろうなとは思いますが、面白くならないわけはないので大変楽しみです。
 
豊岡演劇祭2024
兵庫県の豊岡付近で開催される演劇祭です。
多種多様なカンパニーが劇場は勿論、街のいろんなところでいろんなことをやってます。
昨年お邪魔させてもらったんですが、地域全体がまさにお祭り騒ぎで、日本のみならず海外の作品なども見ることができ非日常な空間での充実感がハンパありませんでした。
旅行がてら行く価値がある演劇祭だと思います。あと、城崎の温泉がとんでもなく最高です。
 
少数精鋭という言葉がかっこよくて好きなので、できるだけお勧めするのも絞っていきたいとは思っていますが、他だと
 
いわずもがな
ダウ90000 第6回演劇公演『旅館じゃないんだからさ』(大阪公演のみ)

ヨーロッパ企画第43回公演「来てけつかるべき新世界」
などあります。
 
ハイバイの岩井さんが発明された
『いきなり本読み!in EX THEATER ROPPONGI』
もとんでもなく面白いので気になった方はぜひ。
 
9月もおそらく残暑厳しいかとは思いますが皆様ご無理なさいませんよう。

野田慈伸
脚本家、演出家、俳優。演劇団体『桃尻犬』主宰。
映像作品の脚本やお笑い芸人へのコント演出などいろいろ活動中。
パタカラぷろじぇくとVol.1短編戯曲リーディング
「妹のこども」「オーストラリアの母」
(作・演出:野田慈伸)
9月5日(木)~9月6日(金)@東京・ニューサンナイ
X(旧:Twitter):@naraduke7
『桃尻犬』公式サイト:https://momoziriken.wixsite.com/momoziriken

脚本家/演出家・海路の優先順位高め!

海路です。みろって読みます。
最近台風のニュースが増えてきましたね。色々大切な用事が吹き飛ばされて悲しかったりします。吹き飛ばし返したいものですわ台風を。
てなてなことで、9月の優先順位高めな作品はこちら!!

東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』
今年一楽しみな公演。木ノ下歌舞伎は前回公演のチケットを取っていたのに、当日芸劇に向かう途中の池袋改札で、チケットが前日だったことに気づき涙を飲みました。杉原さんの演出がとても好きで、観に行った周り皆が最高だったと言う木ノ下歌舞伎。やっと観れます。あと前回公演で題材になった『勧進帳』が9月歌舞伎座でやってるので、木ノ歌舞伎ファンはそちらも是非!

『球体の球体』
今年岸田國士戯曲賞を受賞したゆうめいの池田さんの、受賞後初作品。注目度MAXな上に、劇場はシアタートラムで、キャストも豪華。先日読売演劇大賞の中間発表で男優賞にノミネートされた新原泰佑をはじめ、前原瑞樹さん、相島一之さん、あと自分が主宰を務める劇団papercraft公演にもご出演頂いた s**t kingzの小栗基裕さんによる4人芝居です。いったいどんな世界が展開されるのか、とっても楽しみです!

艶∞ポリス番外公演『それでは登場して頂きましょう』
岸本鮎佳さん主宰で、作・演出に出演まで務める本作。村川絵梨さんがご出演されるとのことでかっけえって思ってたら、「あぶなっかしくて、大胆で、大ボケをかましてる村川絵梨」がコメントによると見れるとのこと。小屋も何やらバーみたいで、わくわくてんこ盛りです!

ヨーロッパ企画第43回公演「来てけつかるべき新世界」
第61回岸田國士戯曲賞を受賞した作品の再演。まずこれ、凄い旅公演です。色々回るわ回るわ。どうしても都内に集中しがちな演劇ですが、こういう機会に今これの記事を読んでるあなた!是非観に行ってみて下さい!まだちゃんと演劇を観たことのない人に届きますように!と勝手な祈りをこめました。何様だって話ではあるのですが、近くにお住まいの方は是非観に行ってみて下さい!

海路
脚本家。演出家。監督。
劇団papercraft主宰。アミューズ所属。『檸檬』にて第29回劇作家協会新人戯曲賞を受賞。
1999年7月20日生まれ。
X(旧:Twitter):@nonde_miro
劇団papercraft公式HP:https://gekidan-papercraft.amebaownd.com/

脚本家/演出家/俳優・滑川喬樹の優先順位高め!

身の危険を感じる暑さの日々ですが皆様どうお過ごしでしょうか。滑川です。
立秋も過ぎ暦の上では秋になると言う話もありますがとても認められないと思ってるのは僕だけじゃないと思います。ではまだまだ暑いだろう9月の僕の優先順位高めはこちらです。

エトエ『将来』SCOOL
すみません、一発目から自分の公演になってしまいました。
9月6日(金)と9月7日(土)に三鷹SCOOLで第9回目の公演を行います。
将来に関すること、又は全然関しない演目を8本くらいやります。全員新しい役者さんでどうなるか楽しみです。是非遊びに来て頂き全部忘れて帰ってもらえたら助かります。

システム個人『御徳寺探偵草臥れ儲け』
すみません、また自分が出る公演です。
作演出の林泰製さんが書くミステリーコメディ。素敵な役者さんがたくさん出る探偵ものの群像劇です。
どなたでも楽しめる面白くて優しい演劇になると思います。9月末ですので是非。

画餅 特別公演『ホテル・アムール』
そしてやっぱり画餅さんはみたい。すごいペースで公演をやってて尊敬しかありません。
脚本はナカゴーの鎌田順也さん。大好きな二人のタッグって感じでもう観たくてソワソワします。
どんな作品になるんででしょうか。

理性的な変人たちvol.4『寿歌二曲』
けっこう前にアトリエ第Q藝術で観た『オロイカソング』という公演が素晴らしかったので優先順位高めです。役者さんのエネルギーもさることながら性暴力というとてもデリケートなテーマを真正面から語る姿はかっこよくて震えました。また観たいなと思っていた団体さんの一つ。

六本木アートナイト2024 悪魔のしるし『搬入プロジェクト』
ギリギリ入らなさそうな物体をわざわざ設計して建物に搬入するというプロジェクト。面白いですよね。なんでそんなことするのっていうことを僕もやりたいなって思いますが今のところ何も思いつきません。

『球体の球体』
脚本・演出・美術が「ゆうめい」の池田亮さん。僕が初めてゆうめいを観たのがテアトロコントだったと思います。今や時の人みたいですね。観れるならいつだって観たいです。

ヨーロッパ企画第43回公演「来てけつかるべき新世界」
同じくいつだって観たい劇団さんです。時間とお金があったらいつだって観に行くのに。

毎月毎月東京には本当にたくさんの演劇がありますね。
きっと10月も11月も12月もたくさん面白い演劇があります。
みんなすごいなあ。

滑川喬樹
脚本家・演出家・役者。
自称武蔵野市代表コントユニット「エトエ」主宰。
X(旧:Twitter):@nametakaki
エトエ公式HP: https://etoe.amebaownd.com/

脚本家/演出家・ 萩田頌豊与の優先順位高め!

夏が終わりかけで、涼しい夜が少しづつやってきてますね。
ツクツクホウシが鳴いてます。
もしかしたらヒグラシかもしれませんし、ミンミンゼミかもしれません。良く分かってません。
ひぐらしといえば、『ひぐらしのなく頃に』が一斉を風靡しましたね?つくつくぼうしがなく頃にだと締らないなって、今、ふと思いました。ひぐらしで良かったなって。

そしたら、じゃあ9月のおすすめ行きます。

劇団スポーツ#11『徒(いたづら)』
すごいペースですね。このペースで公演やって、毎回質の高いコメディと物語作り続けれるのは脱帽です。センスの良いコメディ大好きな人にはブッ刺さりです。

D社『たびたび、こんなこと』
伊達さん率いるD社さんの新作です。とてもしっかりしたコメディをやるカンパニーです。常連の元ジェット花子のタカギ道産馬くんも出演しております。おすすめです。

かるがも団地『三ノ輪の三姉妹』
小劇場若手注目筆頭株の、かるがも団地さん。
まず間違いなく面白いでしょう。おすすめです!観ないより観た方が絶対にいいと思います。

アプレッシブ×実弾生活『ヘリテージ』
ある劇団作者が失踪して、その作品を途中から補填するというコメディのようです。
どこかメタ構造的な作品なのかも知れません。インコさん。お元気ですか?とてもおすすめです。実弾生活。

南極ゴジラ『バード・バーダー・バーデスト』
タイトル最高。タイトル耳触り良すぎて、調べなくてもずっと覚えてます。ずっと覚えてられる何かを生み出せれるのは儲かったも同然でしょ。もう一回言って文字数稼ご、バードバーダーバーデスト!お勧めです。

シャンゼリゼ劇場、カーン劇場、パシフィック・オペラ・ヴィクトリアとの共同制作 東京二期会オペラ劇場『コジ・ファン・トゥッテ』
個人的にも大変お世話になっております。
東京二期会のオペラ公演です。
僕もお仕事させて頂くまでは、オペラは難しいものと勝手に捉えてましたがそんなことないです。
まあ僕が書いてるものをオペラとは誰も認めないでしょうが、圧倒されます皆様の美声に。是非酔いしれに行ってください。

画餅 特別公演『ホテル・アムール』
ナカゴー作品の傑作「ホテル・アムール」を神谷さんがリメイクで描く。絶対に面白いでしょう。超楽しみ。
ナカゴーからの常連メンバーと、高畑遊さんも参加。これは絶対に逃せません!

以上!9月の活動報告でした。10月は東京にこにこちゃんの新作がありますので、もうほぼそれだけ書いて終わるという職権濫用見せつけようかと思います。
まだまだ残暑厳しいですが。皆様水分補給はこまめに。そしたらまた10月に!

※高畑遊の「高」の字は、(ハシゴダカ)が正式表記

萩田頌豊与
脚本家。演出家。
日本で最もチケットの取れる劇団『東京にこにこちゃん』主宰。
1991年1月4日生まれ。
身長193cm
体重110kg
X(旧:Twitter):@CollinesBar
公式HP:東京にこにこちゃん 公式サイト

批評家・山﨑健太の優先順位高め!

東京もようやく猛暑日を抜け出し、しかしまだまだアイスがおいしい9月。芸術の秋到来です。

そんな9月の優先順位高め1本目はかるがも団地『三ノ輪の三姉妹』
MITAKA “Next” Selection 25thのこちらはすでに8月31日から公演中。脚本・演出の藤田恭輔が共同脚本と演出を担当した宝宝『おい!サイコーに愛なんだが涙』がとーーーってもよかったので、これはかるがも団地の本公演もチェックしなければと初かるがも団地。宝宝でも一人の人間の複雑な感情を掬い取って舞台に乗せる手つきが素晴らしかった藤田が今回描くのは、ぎくしゃくとした家族の間に通う感情の機微とのことで期待も高まります。

2本目は劇団不労社 presents FLOW series vol.3『悪態 Q』
関西の気鋭が8月の京都公演を終え久々に東京に登場。恐怖と笑いの両輪で展開する舞台はTHE小劇場な懐かしい雰囲気もありつつ唯一無二。代表の西田悠哉は劇作家ハロルド・ピンターの研究者にしてラッパー。新作はリミナル・スペースの概念を参照したノン・ヒューマン演劇ということでもはやどんな作品になるのか全くわからないくらいの盛り沢山具合ですが、BUoYの廃墟空間で観るのはきっと面白いはず。

3本目は『刺青/TATTOOER』
こちらはロンドンのチャリングクロス劇場と日本の梅田芸術劇場による日英共同プロジェクトの東京公演。2022年の『ライカムで待っとく』が高く評価され第26回鶴屋南北戯曲賞&第67回岸田國士戯曲賞の最終候補となった兼島拓也が谷崎潤一郎「刺青」に想を得た新作、その演出を手がけるのは三好十郎や太田省吾、ベケット作品の上演で近年注目を集める河井朗ということで、予想外の組み合わせがどんな化学反応を見せるのか楽しみなところ。

山﨑健太
批評家・ドラマトゥルク。演出家・俳優の橋本清とともにy/nとして舞台作品も発表しています。
X(旧:Twitter): @yamakenta

ライター・釣木文恵の優先順位高め!

まだまだ暑い日が続きますが、お笑いにも演劇にも通い続けています。8月は子ども向けの人形劇や演劇にいくつか行って、たいへん楽しかったです。それでは9月の優先順位高めな公演をご紹介します。

岡野陽一 第3回単独公演「岡野博覧会」
ピン芸人・岡野陽一さんによる単独ライブ「岡野博覧会」。2022年の第一回は、コンビ解散後単独ライブから遠ざかっていた岡野さんを、事務所の先輩である東京03・飯塚悟志さんがけしかける形で開催されました。それが毎年恒例になって3回目。一昨年には吉住さんとユニット・最高の人間としてキングオブコント決勝に進出していますが、今回はキングオブコント準決勝と重なる日程で、一人コントを披露することになります。テレビなどでは「クズ芸人」として名を馳せる岡野さんですが、そのネタはこちらが当たり前だと気にも留めなかった常識を揺るがしてくるものです。コンビ時代に岡野さんは自分たちのあるネタについて「あれはネタというより教育です」と言っていたことがありますが、私は岡野さんのネタを見るたび「教育だなあ」と思います。

大喜利セリエA〜高円寺編〜
世の中にあふれる大喜利ライブ。出演者が競い合うものもあれば、あくまでも仲良く答えを出し合うものもあります。競うものの代表が、1999年から開催されていた「ダイナマイト関西」。ここ8年開催されていませんが、かつては数多の大喜利プレイヤーを輩出した、ヒリヒリするライブです。その主催でもあるバッファロー吾郎A先生が手掛けるもうひとつの大喜利ライブ「大喜利セリエA」は、出演者がなごやかにさまざまな大喜利を楽しむものです。次々と新しい大喜利を生み出し続けているA先生のアイディアが垣間見えるライブでもあります。たとえば「どうぶつ大喜利」。答えにどうぶつが入っていさえすればよく、面白いかどうかは二の次、というもの。ですが、野性爆弾・くっきーさんやずん・飯尾さんをはじめとする手練れの手にかかれば、とんでもなく面白いものになるのだから不思議です。

第2回野外公演inスタジアム!『リバーサイド名球会』
脚本家・演出家の福原充則さん、俳優の佐久間麻由さん、三土幸敏さんの3人による演劇ユニット、スリーピルバーグス。サイトに「全天候型創作ユニット」とありますが、一昨年の旗揚げに引き続き、今回も!野外劇です。一昨年は永福町駅の屋上庭園もなかなか珍しい場所ではありましたが、今回は兵庫県豊岡市のこうのとりスタジアム。野球場です!ふだん演劇では使われない場所に突如演劇が立ち上がる、もうその時点で「劇的」です。で、この『リバーサイド名球会』には、男性ブランコの平井まさあきさんが名を連ねています。平井さん、本格的な演劇へは今年4月の『鴨川ホルモー、ワンスモア』にコンビで出演したのがおそらく初めてだったと思うのですが、短いスパンで2作目にしてこんなイレギュラーな場所での公演に参加。さらには来年2月に『FOLKER』への出演も決まっています。そんな平井さんの演技も観たいなあ、なんとかして行けないかなあ、と思っている次第です。

演劇ではほかに、ヨーロッパ企画第43回公演「来てけつかるべき新世界」再演もありますし、ナカゴー鎌田順也さんの脚本を上演する画餅 特別公演『ホテル・アムール』も。9月も楽しみがたくさんあります。

釣木文恵
演劇を中心にインタビュー記事などを執筆。最近はお笑い関連の仕事も増えてきました。
X(旧:Twitter):@troookie

ライター・井ノ口裕子の優先順位高め!

まだまだ猛暑は続きそうですが、芸術の秋がやってきましたね。まずは、THE演劇を堪能できそうで楽しみにしている作品です。

Bunkamura Production 2024/DISCOVER WORLD THEATRE vol.14『A Number―数』『What If If Only―もしも もしせめて』
英国の劇作家キャリル・チャーチルの2作品を連続上演するという、映画でいうなら二本立てというお得感もある公演です。『A Number―数』は、人間のクローンを作ることが可能になった近未来で、秘密を抱え葛藤する父とクローンであることを知った息子の会話劇。父親役の堤真一さんと息子役の瀬戸康史さんの二人芝居。『What If If Only-もしも もしせめて』は、愛する人を失ったある男が、現在と未来との対話を通じて喪失と悲しみに向き合うストーリーで、大東駿介さん、浅野和之さん、ほかが出演。キャストも魅力的でワクワクしています。
 
今月おススメの2.5次元作品は2本。

舞台『弱虫ペダル』Over the sweat and tears
8月31日に開幕した本作は、2012年から12年続いてきた「ペダステ」シリーズの最終公演です。寂しいですね~。2015年に「インターハイ篇 The WINNER」を観たときの衝撃は忘れられません。2.5次元の可能性と面白さを教えてくれた作品なので、「ペダステ」最後のレースを見届けたいと思います。

ミュージカル「黒執事」~寄宿学校の秘密 2024~
19世紀後半のヴィクトリア朝時代の英国を舞台に、名門貴族の若き当主シエル・ファントムハイヴに仕える全てにおいて完璧な執事セバスチャン・ミカエリスの物語を描いた人気漫画が原作。ゴシック調の華麗なヴィジュアル、ミステリー、アクションにギャク…。極上のエンターテインメント満載の舞台で、原作を知らなくても楽しめる作品です。

そして、もうひとつ気になる作品がーー。

Reading Musical「BEASTRS」
朗読劇形式のリーディングミュージカルという新ジャンル。なので漫画原作ですが、いわゆる2.5次元とは違う舞台になるのかなと注目しています。ストーリーは、肉食獣と草食獣が生活・共存する世界を舞台に、全寮制の学校へ通う動物たちの群像劇。主人公のハイイロオオカミの少年レゴシ役を、舞台初主演の「美 少年」メンバー佐藤龍我さんが演じるほか、元宝塚トップスターの凰稀かなめさん、崎山つばささん、などが歌い手・読み手として出演。そのほか、台詞のないパフォーマーとして登場するキャストもいるので、どんな表現がされるのか楽しみです。

井ノ口裕子
ライター。観劇の入口は中学生のときの宝塚。それから観劇は一番の趣味です。小劇場からグランドミュージカルまで、ジャンルは問わず面白そうと思ったら何でも見ます。

ライター・岩村美佳の優先順位高め!

残暑厳しい9月となりそうですね。
今月楽しみにしているのは、ミュージカル『ファンレター』と、Broadway Musical『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』です。

ミュージカル『ファンレター』は、韓国発オリジナルミュージカルの日本初演です。キャストが海宝直人さん、木下晴香さん、浦井健治さん、演出が栗山民也さん、劇場はシアタークリエ、この並びだけでときめくものがあります。韓国の歴史と文化が込められているという作品を日本で上演することの難しさも、この座組みならば絶対に丁寧に届けてくれるに違いないと、厚い信頼を寄せる皆さんです。日本人である自分が、この作品を観てどんなことを感じ考えるのか、楽しみに待っています。

そして、日本では3度目の上演となるBroadway Musical『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』
取材を通して、ヒップホップの魂をもつキャストが終結する今年は、これまで以上に響く舞台が観られるのではと期待しています。この作品を生み出した、リン=マニュエル・ミランダが2010年に来日して上演された、同作を観劇したときの興奮は今も忘れられません。でも、日本人にとって、日本語だから届く日本版の魅力もあります。再会を心待ちにしています。

岩村美佳
ライター。フォトグラファー・ライター。初観劇は小学生の時に観た宝塚。ミュージカルを中心に色々と観劇しています。配信観劇も存分に楽しめるようになりました。超絶猫好き。
X(旧:Twitter):@nyanyaseri

ライター・河野桃子の優先順位高め!

さまざまな演劇祭がスタートする9月。舞台は目白押しです。
Bunkamura Production 2024/DISCOVER WORLD THEATRE vol.14『A Number―数』『What If If Only―もしも もしせめて』はジョナサン・マンビィ演出の二本立て。前者はローレンス・オリヴィエ賞のリバイバル部門ノミネート作で堤真一さんと瀬戸康史さんの二人芝居。後者は同作者の最新作の日本初演に大東駿介さん、浅野和之さん、ポピエルマレック健太朗さん・涌澤昊生さん(Wキャスト)が出演します。

チェルフィッチュの岡田利規さんと音楽家の藤倉大さんが初めてタッグを組むチェルフィッチュ× 藤倉大 with アンサンブル・ノマド 『リビングルームのメタモルフォーシス』は、9月で一番観たい作品!すでにウィーンで初演し、やっと日本での上演が叶います。

舞台公演ではないですが、六本木アートナイト2024にて悪魔のしるし『搬入プロジェクト』は、行ける方はぜひ!ギリギリ入らなそうな物体をわざわざ設計し、建物に搬入する…というこの企画。今回、六本木に集った来場者も一緒に搬入できます。

ほか、理性的な変人たちによる北村想さんの『寿歌二曲』、ヨーロッパ企画の岸田戯曲賞受賞作再演 ヨーロッパ企画第43回公演「来てけつかるべき新世界」、前作の客席の盛り上がりもパワフルだった南極ゴジラ『バード・バーダー・バーデスト』、ナカゴーの鎌田順也さんの作品を画餅が上演する 画餅 特別公演『ホテル・アムール』も注目したいです。

河野桃子
ライター。翻訳戯曲と小劇場を中心に、ミュージカルやコンテンポラリーダンスなど「舞台」と名がつくものはなんでも観に行きます!
X(旧:Twitter):@momo_com

ローチケ演劇部_白の優先順位高め!

9月です。少し暑さも和らいできた感じがします。(肌感覚)
さて、今月の優先順位高めです、な公演はこちら!

まずは、画餅 特別公演『ホテル・アムール』
観るたびに様々な一面を見せてくれる画餅がナカゴー作品を…!神谷さんと鎌田さんの作品がどう交わるのか、とワクワクが止まりません。

そして、こちらの公演翌週に東京にこにこちゃん『RTA・インマイ・ラヴァー』の本番が控える高畑遊さんの2週連続本番にも大注目です。

池田亮さん岸田國士戯曲賞受賞後の新作『球体の球体』も観たいですね。
ゆうめいとは違った一面を見せてくれると思うので期待です。

岸田國士戯曲賞でいえば、ヨーロッパ企画第43回公演「来てけつかるべき新世界」再演も観たいですね。初演は観れておらずなので楽しみです。

個人的にオススメしたいのが、原田軍団番外公演『ハラダとオカダの辿りつかないお話(1)』。前回公演『決死のタックル』がとても良かったんです。しかも今回は、作・演出が大堀こういちさん、アイデア提供でブルー&スカイさんですよ!これはもう全力でリコメンドです。

あとは、エトエ『将来』SCOOL南極ゴジラ『バード・バーダー・バーデスト』東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』なども。

最後に。ちょっと、いやかなり気になっているのが、炊飯器でお米を炊いて炊けたら終わる演劇『夏の毛になる』。普通炊き公演と早炊き公演があるんですよ。でも、炊飯器によって時間とか変わってくるじゃないですか。いやー気になります。徐々にお米の香りが劇場内に広がってくるんですかね。イマーシブ!いやー気になります。

※高畑遊の「高」は「はしごだか」が正式表記
原田軍団番外公演『ハラダとオカダの辿りつかないお話(1)の「(1)」は「1」を丸で囲ったものが正式表記。