ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』《花》 成河 インタビュー

1990年の初演以来、7年ごとに手を変え品を変えて再演し続けている、劇団☆新感線の代表作『髑髏城の七人』。その伝説の舞台が、前回2011年版の通称“ワカドクロ”から6年目にあたる2017年3月、東京・豊洲にできる新劇場IHIステージアラウンド東京のこけら落とし公演として、新演出で蘇る。それも“花”“鳥”“風”“月”と名付けられた4つの異なるヴァージョンで約1年3カ月にわたって同劇場で上演され続けるという、驚天動地のビッグプロジェクトとしての上演となるのだ(ちなみに、いつもよりサイクルが1年早まったのかと思いきや、実は前回から7年目にあたる“ドクロイヤー”はシーズン後半の上演中に迎える計算になるわけなので、7年ごとの上演という“お約束”は今回も守られることとなっている)。しかもこの新劇場は中央の客席が360度回転し、それをぐるりと取り囲むステージを観ることができるという画期的なシステムで、この豊洲がオランダに続き世界では2番目のオープンとなる。まさに、この時代、この場所、この瞬間でしか観られない舞台がいよいよ幕を開けるのだ。

Season“花”と称した第1弾のキャストは、とにもかくにも超豪華。2011年版に引き続き主人公<捨之介>を小栗旬が演じ、新感線の看板役者でもある古田新太が刀鍛冶の<贋鉄斎>を演じるが、それ以外のメインキャスト、山本耕史、成河、りょう、青木崇高、清野菜名、近藤芳正は『髑髏城の七人』には初参加となる。中でも注目を集めているのが、物語のキーパーソンで悪役でもある<天魔王>を演じることになった成河(そんは)。劇団☆新感線にはこれが初めての出演となる成河に、今作への想いや意気込みを語ってもらった。

 

――劇団☆新感線の『髑髏城の七人』という作品には、どんな印象を持たれていましたか。

成河 いろいろな見方があるでしょうけど、まずアクション活劇で、ある意味夢の世界を楽しめるような作品なのですが、それでいてきちっと日本の歴史のある部分も描いていてそこで葛藤する人々の物語にもなっている。骨太なエンタメだなあと思っていました。

――座長で演出のいのうえひでのりさんとは、以前からお知り合いだったそうですね。

成河 はい、おつきあい自体は長くさせていただいています。そもそもは古田新太さんとNODA・MAPで初めて共演させていただいたことがきっかけでした。本当に涙が出るほどうれしかったんですけど、僕のことを古田さんが気に入ってくださっていのうえさんに紹介してくれたんです。「オススメですよ、いのうえさん」みたいなことをおっしゃってくださって。死んでも忘れないですよ。まだ20代でしたからね、僕はそのころ。それからいのうえさんが舞台を観に来てくださった時や、僕が新感線を観に行った時にお話をさせていただくたびにいつかご一緒したいと言っていたんですが、どういう形で実現するかと思っていたら、こんなことになりました(笑)。

 

――豪華なキャスト陣も魅力的ですが、成河さんから見たこのカンパニーの印象は。

成河 製作発表の会見の日に初めて全員が顔を揃えたんですけどね。初対面の方もいらっしゃいましたが、やはり古田さんの人柄のせいなのか、なんとなくみなさん自然とオープンになってくるというか。新感線そのものが子供に戻って思いっきり遊ぶ場所だからなんだとも思いますが、古田さんの周りに集まっていると「いい大人が必死になってマジで遊ぶよ!」という雰囲気が自然と伝染してくるんです。いい意味で肩の力が抜けてくる感じがありました。こうやってみんな客演の人間も、新感線色に染まっていくんだなあと思いましたね。

 

――古田さんがいるだけで。

成河 雰囲気が全然変わります。安心感があるんですよね。あの空気はきっとお客様も感じるでしょうし、スタッフの方々もみんな感じていることなんでしょうけど。なによりも役者として一緒に舞台に立ってくれるだけで安心なので、今回はまた胸を借りてやっていきたいと思っています。

――今回は画期的なシステムの新劇場でやる、ということも大きいことだと思いますが。

成河 どうやって稽古するんでしょうね。誰にとっても新しすぎて、未知すぎるのでまったく予想がつかない(笑)。このドキドキ感も、新感線ならではなのかなと思います。そういうことに臆病にならずに「これ、一体どうなるんだろうね!」と言いながらも楽しめてしまえそうだなって、勝手に想像しています。たぶんこういう新しい劇場でのステージエンターテインメントの楽しみ方というのは、何かやるごとに発見できることだとも思うんですよ。その歩みが、お客様と一緒だということがまたすごく素敵じゃないですか。

 

――本当に稽古、どうやってやるんでしょうね。

成河 演出席をグルグルまわすわけでもないでしょうけど(笑)。そんなこともケラケラ楽しみながらできるのは、いのうえさんくらいじゃないですかね。そういえば面白いことをおっしゃっていましたよ。「今回は見えている絵自体を、伸ばしていくことができるんだ」と。たとえばある場所から船に乗ってどこかに行く場面だとして、普通の舞台だと船着き場自体が後ろにハケていったりする演出になりますが、この劇場では船が出発したあともずーっとその場面の背景を横に伸ばしていくことができるわけです。

 

――それをお客様が追いかけていく。

成河 あるいは新しい景色を反対側から出すこともできる。そうやって、いろいろなことを試行錯誤して取捨選択していくんだと思うんですよ。こういう新しい表現は、やってみないことにはわからないですからね。

 

――こけら落とし公演だから本当に、実際にやってみるまでわからないですよね。

成河 これって、エンターテインメントとしてどーんとやるわけですけど、実は究極のいい実験材料にもなっているんだと思います。だけど「それってどうなんだろう?」と思われている方にも「とにかく観に来たらいいじゃん!」って言っておきたいワクワク感は絶対にありますよね。それをまず誰よりも先にやってやろうというところに、いのうえさんの少年の魂みたいな、気概のようなものを感じます。

 

――特に、稽古前に準備しようと思われていることはありますか?

成河 僕は普段から特に事前に準備することはあまりしないんですよね。まっさらでいることを大事にしているので。真っ白が一番難しいし、一番楽しいし。固定観念もなるべく入れずに、稽古が始まってからすべて始められたらと思っています。それより、全員で顔を揃えた時に自分の中で改めて判明したショッキングな事実があってですね。

 

――何がありました?

成河 小栗くんと仕事をさせてもらうのは初めてなんですけど、よくいろんなところでお話はしていたんですね。その時はあまり気にしていなかったんだけど、実際に横に並んでみたら、あの身長差に僕は戦慄を覚えました(笑)。

――特にこのカンパニーは、背の高い方が多いですよね。

成河 背は大きいし、みなさん華のあるスターさんばかりですし、どうしてくれよう!という思いです(笑)。あと面白そうなのが、僕は今回、白髪なのかもしれなくて。ヴィジュアル写真がそうなだけでまだ本番はどうするか決まったわけではないですけど。お屋形様(織田信長)が亡くなられたショックで髪の毛が真っ白になったという、ファンタジー要素を入れるのかなとか。もしかしたらそのショックで少し背が縮んだのかもしれない!なんて(笑)。でもまあ、劇場では大きく見えるようにがんばって工夫していきますよ。

 

――アクションシーンもありそうですか?

成河 どうなんでしょうね。今まで僕が観させていただいた『髑髏城の七人』の天魔王は“不動”のイメージがあったんですけれども。

 

――自分がやるよりも人にやらせるタイプ。

成河 そうですね、悪役のある種の重みみたいなところで、不動という印象だった気もするのですが。でも今回、特に捨之介と天魔王の関係性など改めて書き足してくださる部分があるそうなので、そこでどうなるのか。以前、いのうえさんと(脚本の)中島(かずき)さんが、4チーム全体のキャストのバランスを考えながら「このチームはこいつがやるならこう、このチームならこう」みたいな話をされていたので、あのおふたかたが、僕がやる上でどんなイメージの天魔王にされるのかが本当に楽しみなんです。不動でいるということも簡単ではないですが、僕は普段かなり動くほうですから、意外にアクティブな天魔王になってもきっと面白いと思いますし。身長が低いとね、アクティブなほうが映えるという利点があるんですよ。これは野田秀樹さんから教わりました(笑)。背が高い方だと立っているだけでも絵になりますが、小さいと小回りが利きますからね。縦横無尽にいろいろなところに出没できるので、その神出鬼没な部分が出せても面白そうですよね。

 

――またそうなると、天魔王のイメージが変わってきますね。

成河 それは今、勝手に思っただけなので実際のところは中島さん、いのうえさんにおまかせですけど。もとは捨之介も天魔王も超武闘派だったんでしょうから、その強さをどういう風に表現していくかも楽しみです。

 

――今までにない天魔王が生まれそうな気がします。お客様にもそういう今回ならではの、新たな魅力を存分に伝えたいですよね。

成河 360度のステージをうまく使ってね(笑)。でも、この劇場の仕組みもある意味では作品世界に入りやすくするための“装置”ですから。お客様も今、自分たちは回っているとか「うわー、新鮮な経験!」なんて感覚も、いざお芝居が始まったらすっかり忘れて、戦国時代にポーンと放り込まれて自分も登場人物の一員にでもなったかのように思えたらいいですよね。そんな感覚を味わっていただけたら、きっと成功なんだろうなと思います。

 

インタビュー・文/田中里津子