ダンスエンターテインメント集団「梅棒」の最新作、梅棒 19th GIFT『クリス、いってきマス!!!』が12月に東京・大阪・愛知で上演される。
劇場での主催公演を中心に、「嵐」や「AKB48」等のアーティストLIVE、映画「コンフィデンスマンJP 英雄編」や「NHK紅白歌合戦」等の映像メディア、宝塚歌劇団や2.5次元舞台等での振付・演出でも活躍する梅棒による本作は、笑って泣けて心あたたまるクリスマスファンタジー作品。サンタクロースの元で修業し、見事に後継者の座を勝ち取ったニコラスは、やがて時代の流れに翻弄されてすっかり人気を失い退屈な毎日を送っていたが、そんなある日、ニコラスと弟子のクリスのもとにプレゼントを求める手紙が届き、クリスは配達を託される……という様々な因縁や運命が絡み合うストーリーになっている。
サンタクロースの弟子“クリス”役に生駒里奈、クリスの師匠である“ニコラス”役に天野一輝、サンタクロースに手紙を送る少女“アンバー”役に志田こはく、サンタクロースとの間にある因縁を抱えている“ビクター”役に多和田任益という布陣に加え、ゲストキャストの筒井俊作、一色洋平、SuGuRu、岡島源武、高澤礁太、鳥飼真大、山崎琉豊と、梅棒の伊藤今人、梅澤裕介、鶴野輝一、塩野拓矢、野田裕貴が出演する。
上演時期にもピッタリなクリスマスの物語……かと思いきや、メインビジュアルには南国風の少女がいたり、悪役風の男がいたり、一筋縄ではいかなそうな空気がビシビシ伝わってくる。一体どんな作品になるのか、そしてどんな思いで本作に臨んでいるのか、出演者のSuGuRu、天野一輝、多和田任益に話を聞いた。
それぞれが演じる役どころは?
──まずは今作での役柄についておうかがいします。多和田さん演じるビクターはヴィランだそうですね。
多和田 でも「ザ・悪役」という感じではなくて、元々は(天野)一輝さん演じるニコラスと一緒にサンタクロースになることを目指して修行していた同級生的な役なんです。ビクターはいろいろあってサンタにはなれず、大人になってもサンタになりたい気持ちはどこかに残っていて、ニコラスへの対抗心もありつつという、何かちょっと複雑なポジショニングの役にはなるのかなと思います。
──メインビジュアルでなぜか南国風な、志田こはくさん演じるアンバーとの関係も教えていただけますか。
多和田 アンバーはビクターの娘です。アンバーがサンタクロースに興味を持つようになっていくことで、サンタ嫌いなお父さんとサンタ好きの娘みたいな、親子同士のぶつかり合いとかすれ違いも描かれています。だから僕の役割としては、アンバーとの親子愛の部分と、ニコラスたちサンタチームとの対抗する部分の2つあるのかな、という感じです。
──そして天野さん演じるニコラスは、メインビジュアルからしてわかりやすくサンタの役ということですね。
天野 ビジュアル上は誰がどう見てもサンタクロースですね(笑)。さっき、たわでぃ(多和田)も言いましたけど、ここの2人は同級生的な役で、僕が一応サンタクロースの座を勝ち取った側なんですけど、時代の流れもあってサンタクロースという文化が廃れてしまって、「やることなくなっちゃったな」って言って、ダラダラ過ごしているんです。でもサンタクロースやクリスマスが大好きで守りたいという気持ちは持ち続けていて、その思いは生駒ちゃん演じる弟子のクリスも同じものを持っていて、基本的にはまっすぐな人間なのかな、と思います。これまであまりそういうまっすぐな役はやってこなかったので、なんか不思議な感覚です。
──SuGuRuさんはどのような役なのでしょうか。
天野 SuGuRuくんは“クリスマスには欠かせない存在”の役で、サンタチームの一員なんですけど、僕と一緒に「仕事ないねー」みたいな感じでダラダラ過ごしています(笑)。
SuGuRu 僕自身、基本的にお調子者で、よく周りから「お前は世渡り上手や」みたいな感じで言われるんですけど、本当に僕そのままの役なんです(笑)。稽古中も、ありのままの自分でいられるという感じです。
天野 梅棒の稽古は、序盤はあえてセリフをしゃべって稽古したりもしているんですけど、僕らは「コーヒーが美味しいね」とかのんびりしゃべっていて(笑)。他のみんなは頑張っているのに、なんか「あの人たちは何をしてるの?」みたいな感じになっています(笑)。でも、そんなSuGuRuくんの役が熱くかっこいいシーンもあるので、そこのギャップも楽しんで欲しいですね。
念願の梅棒への出演に「SuGuRuの時代が来ます」
──SuGuRuさんは今回が梅棒に初参加ということですが、出演に至った経緯を教えてください。
天野 直近まで「avex ROYALBRATS」というD.LEAGUEのチームに所属しているときや、「GANMI」というチームに所属しているときに、パフォーマーとしては一方的に拝見していて、キャッチ―だし、表情も含めてすごく楽しそうにパフォーマンスする姿が目を引く存在で。この感じは梅棒に向いているな、と直感的に思えたので、いつか出てほしいなとずっと思っていました。とにかく踊っている姿が、僕らの作品に当たり前にいそうだな、と思えるところが一番大きいかなと思います。
──確かにSuGuRuさんのパフォーマンスは、これまで出ていないのが不思議なぐらい梅棒に近しいものを感じます。
SuGuRu そうなんですよ。僕もずっと「なんで梅棒から話来ないのかな」って思っていたんですけど、やっと来ました(笑)。お話しいただいたときは、マジでガッツポーズしちゃって、うちの奥さんにすぐに「来ました、SuGuRuの時代来ますよ」って連絡しました。やっと梅棒さんの目に僕が映ったんだ、と思って嬉しかったですね。
天野 いや、映ってたんですよ、ずっと! でもD.LEAGUEが忙しそうだったから、卒業したこのタイミングなら出てもらえるかな、と思ってオファーしたんです。
SuGuRu これからは新たなエンタメの方向として舞台もやっていこう、と思ってチームを卒業したので、すぐに梅棒さんに声かけてもらえてとにかく嬉しかったです。嬉しすぎて、飯食えなかったです。
多和田 ホンマに?
SuGuRu いや、食べました、むしろ寿司食いに行きました(笑)。
天野 絶対そっちだよね(笑)。
多和田 SuGuRuくん、こういうところあるんで(笑)。
──梅棒のお2人から見て、実際稽古が始まってみてSuGuRuさんの印象はいかがでしょうか。
多和田 初めて会った感じがしなくて、前から知ってたっけ? と思うくらいでした。まずSuGuRuくんは人のことが好きな感じがすごく出てるし、ダンスももちろん好きだし、演劇もちょっとやってみたい、とかいろんな要素が重なって、梅棒に出るべくして出る人だという感じがしています。人柄の良さと、ボケたがりなところもあって(笑)、もう稽古初日から笑いを取っていましたし、緊張とか全然してない感じだし。
SuGuRu (小声で)緊張してるよ……。
多和田 してるの⁈
SuGuRu こう見えて、人見知りなんですよ。
多和田 あぁ、でもそれは思った、意外と人見知りなのかな、って。だからこそいっぱい喋るんでしょ?
SuGuRu そうなんですよ! 喋ってないとやっていけないんです。だからもう喋って、とりあえず間を詰めたいと思っていて、喋るタイミングをずっと見計らっているんですが、僕にとって梅棒の稽古場はボケの宝庫でしかなくて、どのパス取って、どこに放り込もうかな、みたいな感じ楽しいです(笑)。
天野 あまりいないですよ、こんなにずっとシュートコースを探している人は(笑)。
SuGuRu 小さい頃からお笑い番組が大好きで、例えば「パーン!」と叩かれたときのアクションをめっちゃ全力でやる、というのを見よう見まねでやったりしていました。4歳くらいのときにものまね番組でコロッケさんを見ながら、「お母さん見て!」って言ってこの顔をしていたらしいんですよ(と森進一の顔真似をしてみせる)。
天野・多和田 (爆笑)。
多和田 ヤバイ(笑)!
天野 表情筋がもうその頃から鍛えられているんだね(笑)。
──天野さんは、SuGuRuさんが緊張しているな、というのは感じていましたか?
天野 ……そんなに思ってなかったですね(笑)。例えばさっき言ってた、叩かれたときに全力でアクションするとか、めちゃめちゃ梅棒向きじゃないですか、ムーブとして。緊張してるヤツがそれいきなりできる? っていう(笑)。
SuGuRu (爆笑)。
多和田 多分、ちょっと特殊なんだと思う(笑)。
──やはり「梅棒にぴったりだ」と直感した通り、という感じですか?
天野 はい。もういつ梅棒に入ってもらっても(笑)。
SuGuRu 僕もいつ入れてもらっても全然いいですよ! これで次呼ばれなかったときは連絡しますからね? 「どういうことですか?」って。
天野 (笑)。
多和田 でも本当に、めっちゃ舞台向きだと思うよ。「やれ」と言われたことを失敗してもいいからまずやってみることが大事な一歩目だと僕は思っているから、それができているのがすごいなと思います。
SuGuRu 失敗を恐れない、というのはありますね。ビビリはするんですけど、失敗することを考えながら後悔するんだったら、やって後悔した方が早いなと思っていて。やらかしたり迷惑かけたりした場合は、全力で謝ればいい。全力で何かをした結果なのであれば、別に問題ないかな、と思います。
見どころは「関係性」とホッコリした笑い!
──本作で自分のここを見て欲しい、というアピールをお願いします!
多和田 僕はお父さん役を梅棒でやるのは初めてだし、梅棒以外でもあまりないので、やはりそこですかね。親子の繋がり、家族の愛みたいなものは今回僕とこはくちゃんの間でしか表現できないドラマなので、それは一つ僕らの役目でもあるなと思います。2人の関係性をしっかり作ることで、サンタチームとのコントラストもより際立つのかなという気がしているので、賑やかでほっこりする部分も大事にしつつ、娘目線でもいいし、お父さん目線でもいいけど、お客様が見たときに親子のドラマを感じ取ってもらえるものを作れるように頑張っていきたいなと思います。
天野 僕に限ったことじゃないんですけど、前半の方で、おじさんたちが頑張っているところがあって(笑)。頑張るおじさんって面白いんだな、と自分たちで作りながら思ったんで、そこは一つ見て欲しいところかな、と思います。あとは、僕と生駒ちゃんの役は師弟関係にあって、血は繋がってないけど「この師匠にしてこの弟子あり」みたいな、ある種親子の関係性にも近いかなと思っています。僕らの師弟関係があるからこそ、たわでぃとこはくちゃんの親子関係が生きてくる部分はあると思うので、そっちの2人に負けないように関係性をしっかりと作って、お客様にもそこを楽しんで見てもらえたら嬉しいです。
SuGuRu 僕を知っている人も知らない人も、ホッコリしてもらえたらいいなと思っています。こういう舞台でゲラゲラ笑える作品ってあんまりないのかな、と思うので、僕は「ゲラッ」という笑いを生み出せるように全力で、自分がまず楽しみつつ、それを共有できる状態に持っていけるように、SuGuRu節を大いに出しまくっていこうかなと思っております!
多和田 大いに暴れてください!
SuGuRu 爪痕残します!
取材・文=久田絢子