
毎年、桜の時期に合わせ、靖國神社の能楽堂にて「夜桜能」が開催される。32回目を数える今年は4月3日、4日の二日間行われる。さらに「夜桜能」の雨天会場を利用しての新たな試み、「桜の宴」は今年で2回目となる。今回は「親子で楽しむ邦楽」と副題がついており、能と長唄などの演目が披露される。
主催でもある、宝生流能楽師 田崎甫さんに、それぞれの公演について、また、演目の見所などについて、お話を伺った。
第32回 奉納靖國神社 夜桜能
――まず、少し自己ご紹介いただけますでしょうか。
田崎甫と申します。幼少(5歳)より能楽をはじめました。芸歴と夜桜能の回数はほぼ同じなのです 笑。
――毎年、靖國神社の能楽堂で開催されている「夜桜能」ですが、どういったきっかけで始められたのでしょうか?
師匠である能楽師田崎隆三が発案しました。靖国神社能楽堂はとても歴史があり由緒ある舞台なのですが、残念ながら使用する機会がほとんどなかったのです。そこで、桜の開花を知らせるここ靖国神社で能楽をもっとたくさんの人に知っていただこうと考え、企画したと聞いております。
――今年で32回を迎え、開催を楽しみにされているお客様も多いと思います。これほど長く続いている理由や、開催のために心がけてらっしゃることを教えていただけますでしょうか?お能は、観たことがない、という方もまだまだ多いと思います。「夜桜能」では、そういった方でも楽しめるでしょうか?また、最近は、日本文化に興味を持つ海外のお客様も、来場されるようですね?
夜桜能は能公演にしては珍しく、「普段能楽を見ないお客様」が多いのです。というと、ほどんどの能公演はコアなファン層によって成り立っていますが、夜桜能は「夜桜能を毎年楽しみに来てくださる」リピーターの方が圧倒的に多いです。日常的に能楽を見なくとも、年に1度は夜桜能へ来てくださる。そういった方々に支えられてここまできました。心がけていることは、やはり能楽という芸能はなかなか理解が難しい部分があります。夜桜能がここまで成長できたのは、そのことがありながらも夜桜+能というシチュエーションを楽しんでいただけているからだとは思いますが、それしにてもやはり劇であり舞台ですから、古語といえど日本語の意味、どういった場面なのか、など理解できるに越したことはありません。その手助けとして、イヤホンガイドを早くから導入しております。また近年は、英語版イヤホンガイドもはじめました。これによりインバウンドのお客様や、英語を理解できる日本人の方が借りてくださっております。またさらに、ガイドブックも今年より刷新し、能楽師によるわかりやすい解説を丁寧に織り込んでおります。これらを使っていただき、舞台を今まで以上に楽しんでいただきたいと思っております。
――今年の演目について、選ばれた理由や、見所など、教えていただけますでしょうか?
2日間の興行ですので、曲の対比を意識しております。初日の「天鼓」は老人と少年。二日目の「海人」は海人と龍女。属性の似通った役柄が出ないように意識しております。
―― 「夜桜能」をより楽しむために、事前講座もあると伺っています。どういった内容でしょうか?
演目の解説や見どころをお話しいたします。実は今年からこちらもリニューアルしました!ガイドブック解説執筆を担当した能楽師にお越しいただき、ふたりで解説や見どころをお話しいたします。ありがたいことに例年ご好評をいただいておりますが、今年は例年を大きく上回るお申し込みをいただいております。まだまだお席に余裕はございますので、是非お待ちしております。
――「夜桜能」について、改めて、お客様におすすめするお言葉などいただけますでしょうか。
はじめて能を見るなら夜桜能。能を感じ、古に思いを馳せる。能楽という芸能がもつ本来の力をお楽しみいただけます。ご来場をお待ちしております。
桜の宴
――昨年初めて開催された「桜の宴」ですが、どのような趣旨で始められたのでしょうか?
3つの考えが合わさりまして、始めることにしました。まず、「桜の宴」というタイトルそのものです。これは、「夜桜能」の開催初期から中期にかけておこなわれていたものです。昼の桜のもとで能を楽しむ公演でしたが、やはり桜の時期に昼間の靖国神社を締め切ることはセキュリティの問題など難しい点が多く、やめてしまいました。このタイトルをいつか復活させて公演をしたいと考えていたのが1つ目です。次に、雨天代替会場を有効活用したいと考えていました。文京シビック大ホールには、仮設能舞台の側に2本の大きな桜の木を植えて、荒天により靖国神社での開催ができなかったお客様をお迎えいたします。この舞台を活用して、昼間の時間に公演を行うことを考えたのが2つ目の理由です。最後に、3つ目。これが最も大事なことですが、能楽を含む邦楽全般をもっと身近に感じていただきたいという思いです。特に夜桜能は夜公演という性質上、未就学児のお客様はお断りをしております。しかしながら桜の宴では、むしろ子どもから楽しめる邦楽という考えで演目を組み立て、公演を行います。すべての年齢層のお客様に能楽を楽しんでいただくために夜桜能のミニ公演として位置付けていますのが桜の宴になります。
――昨年の初めての「桜の宴」は、実際に開催されてみて、どのような印象だったでしょうか。お客様の反応はいかがだったでしょうか?
はじめたばかりで手探りでしたが、楽しんでいただけたとのお言葉はいただきました。毎年毎年より進化できるように、プログラム構成を考えてお届けできればと思います。
――今年の演目について、選ばれた理由や、見所など、教えていただけますでしょうか?
能楽と長唄に共通する「橋弁慶」という演目が見どころになります。同じ演目名でありながら、それぞれの芸能での表現方法の違いなどを、わかりやすく楽しんでいただけます。
――親子で楽しむ、と題されていますが、特別な工夫などありますでしょうか?
仕舞「鵜之段」では能の謡を演目内で実際に謡っていただきます。この舞は、始まるときに「老人」と「僧」のふたりが短い言葉を掛け合いするのですが、「僧」の謡を能楽師ではなく会場の皆様に謡っていただこう!という参加型の演目です。初めての試みなので当日はどうなるか!?ぜひ会場で私といっしょに体験してください。
――最後に「桜の宴」について、改めて、お客様におすすめするお言葉いただけますでしょうか。
様々な年齢層の方に、身近に邦楽を感じていただけるプログラムです。平日の昼間の時間帯ですが、ぜひたくさんの方に見ていただきたい、魅力的な公演です。お待ちしております!