『平成中村座 小倉城公演』中村勘九郎インタビュー

博多座20周年特別企画、≪平成中村座が九州初上陸!博多座を飛び出し小倉城へ!!

現在、『六月博多座大歌舞伎』を上演中の博多座が次に手がける歌舞伎公演は、いつもとひと味違って江戸の雰囲気をたっぷりと味わいながら芝居見物――。

芝居好きはもちろん、多くのエンタメ好きを唸らせてきた≪平成中村座≫が関門海峡を渡り2019年11月、福岡県・北九州市へやってくる!ローチケ演劇部では、北九州マラソン2019の大会ゲストとして北九州市を訪れていた中村勘九郎丈に、九州への想いや『平成中村座小倉城公演』の魅力について聞いた。

― 待ってました!≪平成中村座≫がいよいよ九州初上陸ですね!

「≪平成中村座≫が生まれたのは、父が19歳のときに、唐十郎さんの紅テントの芝居を観たのがきっかけでした。あの雰囲気に『これこそが歌舞伎だ。いつかやりたい』と思ったそうです。それからずっと持ち続けた夢を叶えたのが≪平成中村座≫。仮設の芝居小屋のため、いろんなところにいけるのがいいところなんです。2000年の東京・隅田公園から始まり、これまで大阪、名古屋、ニューヨークではリンカーンセンターでも上演しました」

― ご兄弟にとって九州はどんな印象でしょうか?

「弟(中村七之助)も九州が大好きですから、≪平成中村座≫で来ることをとても楽しみにしています。印象深いのはお客様の反応ですね。博多座に最初に出た時、うちの父が『四谷怪談』(の毒を飲むシーン)でお客様から「飲まんとよ!」と大きな声をかけられまして(笑)。ものすごかったんです、お客様の反応が。父はそれがうれしかったようですが、『話が進まないから飲んじゃったよ』と(笑)。面白いものを演ればお客さんは入るし、盛り上がってくれる。反応はすごくいいし、役者としても九州のお客様はとても楽しい。派手なのが好きじゃないですか。ですから演目をもってくるときはいろいろと考えています」

― 演目についてや演出のアイデアなどは?

「せっかくなので、小倉にゆかりのある演目をやりたいと思っています。実は、“小笠原騒動”を演ろうと思っています。これはもう、バッチリでしょう。お城もあるし!それから花火を上げたいなとも思っています。ちょっと派手に。九州の方たちにプレゼントといいますか。『いっちょやったるか!』という感じですかね」

― 平場や枡席など≪平成中村座≫には名物というか、魅力がたくさんありますね。

「≪平成中村座≫は江戸時代の芝居小屋を再現しています。劇場内は凝った仕組みになっていて、江戸時代の錦絵をもとにつくった二階の桜席は幕内の中に席がある。芝居は見にくいですけど、大道具の転換とか、幕の開く前に役者の様子なんかが見られます。少々お値段がお高いお大尽席もありますね。お金持ちって多いんだなって思うんですけど(笑)、いつもすぐ売れ切れちゃんうんですよ。もしかしたら、九州のお客様もやってくれるかも知れないけれど、寒い時期だとお大尽席からほかのお客様に使い捨てカイロを投げてあげる粋な方もいらっしゃって。小倉でもお大尽席を買った方はぜひやってほしい(笑)」

写真は、「平成中村座 小倉公演」の会場となる勝山公園のシンボル的存在の小倉城

 

― 花道はいかがですか?

「花道は長いですよ。歌舞伎座よりも長い。それから舞台で長屋を作るとき、歌舞伎座だと大御殿になっちゃうでしょう?リアリティというか、生活の感じがなかなか出しにくい。その点、『平成中村座』は長屋の雰囲気がよく出るんです。空間、人と人、役者と役者の距離感がリアルで、お客さんも入り込みやすいんですよね」

― ≪平成中村座≫には見て歩きが楽しめる『五軒長屋』もありますね。

「五軒長屋は江戸時代の職人の技や、江戸の文化を感じていただけるような場所です。今回は(拡大して)十軒長屋にしようと思っています。県外の方もいらっしゃるので、屋台をたくさんひっぱってこれないかな、なんてことも思っています」

― 演じる側から見ると、≪平成中村座≫はどんな景色なんでしょうか?

「客席と舞台との距離が近いですね。だからお客様とのキャッチボールがしやすい。心で芝居をすれば、心で返してくれる感じがとてもします。歌舞伎は、江戸時代の芝居小屋の≪平成中村座≫のサイズ感で脚本が作られています。ですから、同じ作品でも大劇場でやったときと違いがあって、『あ、なるほど』と思うことがたびたびありますね。大向こうもかけやすいでしょう。間とか気にせず、自由にかけてほしいですね」

小倉城天守閣再建60周年と、博多座の20周年を記念した、特別な公演。豊前小倉藩を舞台にしたお家騒動の狂言『小笠原騒動』という、ご当地演目にも期待しよう。チケットの発売日などの詳細は、決まり次第ローチケ(webサイト)にて発表致します!

 

そして、11月までの歌舞伎公演が待ち遠しい方は、ただいま博多座にて6/26(水)まで上演中の『六月博多座大歌舞伎』で通常の劇場公演を楽しんで、11月に小倉城での≪平成中村座≫公演で違った歌舞伎公演を比較体験してみるのもいいかも。尾上菊五郎、尾上菊之助、中村芝翫ら豪華メンバーでお届けしている『六月博多座大歌舞伎』のチケットは発売中。6月・11月で歌舞伎を堪能しよう!

 

◆◆ ≪平成中村座≫ とは◆◆

十八世中村勘三郎の長年の想いを実現した、特設劇場で公演のこと。

2000年(平成12年)の第一回公演以来、東京、大阪のほか、海外でも公演を行ってきた。

江戸の芝居見物を体験できるエンターテインメントとして、従来の歌舞伎ファン以外からも毎回注目を集めている。

 

取材・文=山本陽子