野村 万作・萬斎・裕基の“狂言三代”がお届けする「狂言劇場」
万作から萬斎へ、萬斎から裕基へ、初めて役が引き継がれる『法螺侍』
作家・池澤夏樹が初めて書き下ろした、文学と狂言の出会い『鮎』
「狂言劇場」とは
芸術監督・野村萬斎により、古典芸能という枠にとどまらず「“舞台芸術=パフォーミングアーツ”としての狂言」というコンセプトに基づき、2004年にスタートしたシリーズ「狂言劇場」。世田谷パブリックシアターの劇場空間に特設能舞台を設置し、数々の名曲を上演するほか、舞の新作『MANSAIボレロ』を発表するなど、狂言の多角的な魅力を提示してきました。劇場空間ならではの、オリジナリティあふれる舞台美術・新演出は毎回話題を呼んでいる。
今回は、狂言劇場には初登場となる古典狂言『武悪』『舟渡聟』に加え、『法螺侍』と『鮎』という現代狂言2作品が、あらたな配役、あらたな演出でついに世田谷パブリックシアターに立ち上がる。『法螺侍』では、これまで野村万作が演じてきた洞田助右衛門に野村萬斎が、野村萬斎が演じてきた太郎冠者に野村裕基が、それぞれ初めて挑む。また、文学と狂言の出会いとも言える、作家・池澤夏樹が初めて書き下ろした狂言『鮎』の上演にも期待!
野村萬斎(総合演出・出演)コメント
狂言劇場は、650年ほどの歴史がある伝統芸術の一つである狂言を、舞台芸術(パフォーミングアーツ)として捉え直し、みなさんに楽しんでいただくという企画です。
今回は二つの新作の狂言『法螺侍』と『鮎』が軸となります。
それぞれ土台となる原作がありますが、それを狂言というやり方で料理するとどういうことになるのか。狂言ならではの楽しさでお届けしますので、「やっぱり狂言って普通の演劇よりぶっ飛んでるなあ」と思っていただけると思います。
そして狂言がいかに一つの演劇であり舞台芸術であるか認識していただけると思います。
日本で長らく受け継がれてきた舞台芸術たる狂言にはいろんな知恵があり、常にアップデートを繰り返し、他の舞台芸術と同じところもあれば違うところもある。
たくさんの刺激を受け取っていただければ幸いに存じます。
作品紹介
A プログラム 狂言『武悪』/『法螺侍』
『武悪』
武悪:野村万作 主:石田幸雄 太郎冠者:野村太一郎
武悪の不奉公に怒り心頭の主人は太郎冠者に武悪を討ち取ってくるよう命ずる。太郎冠者はやむなく武悪をだまし討ちにしようとするが、最期に臨み覚悟を決める様子にどうしても討つことができない。太郎冠者は武悪に逃げることを勧め、主人には武悪が神妙に討たれたと偽りの報告をする。主人はせめて跡を弔ってやろうと東山に向かうが、ちょうどそこへ命拾いのお
礼参りに来た武悪と鉢合わせてしまい……。
『法螺侍』
原作:W.シェイクスピア「ウィンザーの陽気な女房たち」 作:高橋康也 演出:野村万作
洞田助右衛門:野村萬斎
太郎冠者:野村裕基 次郎冠者:中村修一
お松:高野和憲 お竹:内藤連 焼兵衛:深田博治
太鼓:桜井均(6/18・20・27)/吉谷潔(6/26)
笛:一噌幸弘
酒好きで女好きで強がりばかりの洞田助右衛門は身のだらしなさがもとで将軍家を追放され、毎日飲み暮らしていたが、ついに酒も、酒を買う金も底をついてしまう。そこで女を騙して貢がせようと家来の太郎冠者と次郎冠者に命じて、二人の女に同一の恋文を届けさせる。主人の日頃からの勝手な振る舞いに嫌気がさしていた太郎冠者と次郎冠者は、助右衛門を懲らしめるべく計画を練り始めます。狂言劇場では、万作が演じてきた洞田助右衛門を萬斎が演じ、萬斎が演じてきた太郎冠者に野村裕基が挑みます。
B プログラム 狂言『舟渡聟』/『鮎』
『舟渡聟』
船頭・舅:野村万作 聟:野村裕基
姑:野村太一郎(6/19)/岡聡史(6/25)/石田淡朗(6/26)
妻の実家に初めて挨拶に向かう聟が、渡し舟の酒好きの船頭に手土産の酒樽をせがまれ飲まれてしまう。仕方なく、軽くなった酒樽を持って舅宅へ出向く。やがて外出していた舅が帰宅すると、びっくり仰天、舅こそが舟で酒を無理やり振舞わせた船頭だった。舅は姑の勧めで髭を剃り、顔を隠して対面するのだが……。
『鮎』
作:池澤夏樹 演出・補綴:野村萬斎
国立能楽堂委嘱作品
小吉:野村萬斎 才助:石田幸雄
大鮎:深田博治 小鮎:月崎晴夫・高野和憲・中村修一・内藤連・飯田豪 ほか
笛:大野誠(6/19)/竹市学(6/25・26)
小鼓:大倉源次郎(6/19・25)/大山容子(6/26)
清流のほとりで鮎を捕って暮らす才助が釣りにいくと喧嘩をした小吉が逃げ込んでくる。顔を見るとその人の性格や将来がわかってしまう才助は小吉を諭すが、小吉は聞き入れない。才助は小吉を大きな宿屋に紹介、風呂焚きとなった小吉は「忖度」に励みながら出世し、ついに宿屋の主人の座に収まる。ある日、出世した小吉のもとに才助が訪れ頼みごとをするが……。