2013年以来、地球環境問題に積極的に取り組んでいる市川海老蔵は、持続可能な地球環境の実現に取り組むNPO法人「Earth & Human」を今年設立した。今回の『市川海老蔵特別公演 アース&ヒューマン』は、NPO法人の設立を記念するとともに、地球上の美しい自然や文化を未来の子どもたちへ引き継いでいくため、人間の暮らしの基盤となる持続可能な地球環境の実現に寄与することを目的に企画されたものだ。
秋晴れの9月30日、制作発表が行われた。制作発表は記者からの質問に答えるかたちで実施。まだ劇場に足を運ぶのを不安に思う人も多くいるなか、公演を実施する意義を問われた海老蔵は、「我々演劇人は何もしないことのほうが罪深いことだと思っています」と語った。2020年もしっかりと感染症対策を行いながら、千穐楽を終えたばかりの『秋の特別公演 古典への誘(いざな)い』についても振り返った。反響も大きく、「ポジティブに前に進む人間がいてもいいのではないではないかと思っています。ネガティブな材料に対しては黙々と対策に努めて進めていきます」と語る。
「僕は無意識であることのほうが怖いと思っています。環境問題も、意識はしているけれど、きちんと理解していない部分もありますよね。子どもたちとも、『パパが子どもの頃はペットボトルなんてなくて水道から水を飲んでいたんだよ。ペットボトルで飲むことは当たり前じゃないんだよ』という話などをきかっけに環境問題の話はよくします。長野県志賀高原で、8年間、行っている植樹活動『ABMORI(エビモリ)』は、子どもたちが自分たちの手で木を大きくする活動です。今回の『アース&ヒューマン』をきっかけに、自然環境にアプローチするタネを蒔くことができればいいなと考えています」
なお、同公演で海老蔵は素踊りを披露する。五穀豊穣を願う『三番叟』や、無病息災・家内安全を祈る『延年之舞』という2つの演目には、「このコロナ禍で生き抜いていく」という意味も込められている。素踊りを行う意義について、密を避け、少人数で行うためかと問われた海老蔵は、「それは二の次で、こういう企画ですから、どちらかというと自然問題をフィーチャーしたいという気持ちのほうが強いです」とコメント。
「『三番叟(さんばそう)』は、もともとは能の狂言方が演じる舞で、これが歌舞伎や文楽に波及しました。今回は原点回帰といいますか、黒紋付ではなく、自前で衣装を新調したものでやらせていただきます。『延年之舞』のほうは黒紋付で舞う予定です。自然問題をフィーチャーしたイベントに海老蔵として参加する、そんな思いで出演させていただきます」
同公演ではさらに能の大鼓、または小鼓と謡で演奏する演目(1日2演目ずつ上演。公演ごとに演目が異なる)や、環境問題スペシャルトークも実施。子どもたちやふだん伝統芸能に触れる機会がない層にもさまざまな角度から伝統芸能の魅力を発信し、地球環境問題について考えるきっかけを提起する。
「伝統芸能を通して自然環境について皆様と一緒に探求していきたい」と語る海老蔵の思いがたっぷりと詰まった『アース&ヒューマン』は、10月28日(木)高知「弁天座」を皮切りに全国8ヶ所9公演が予定されている。