健人、大崎捺希、岩崎孝次、善竹大二郎 インタビュー|「狂言男師~月の章【呼声・棒縛】~」

2.5次元ミュージカルなどで活躍する若手俳優が、日本の伝統芸能・狂言に挑む「狂言男師」。今回は「呼声」「棒縛」を上演し、健人、大崎捺希がW主演。シリーズ最多出演となる岩崎孝次が出演する。

稽古の熱気も冷めやらぬキャスト3人と狂言指導・善竹大二郎を直撃し、狂言の魅力や難しさなどたっぷりと話を聞いた。

 

――大崎さんは「狂言男師」に初めて参加されますが、出演が決まった時はどんなお気持ちでしたか。

大崎 狂言がどういうものか、今回のお話をいただいて初めて知りました。小さいころに、教育番組などで、知らず知らずのうちに触れていて「これが狂言だったんだ」と気付きました。狂言を演じる場所は、想像できていたんです。でも、細かい部分については知りませんでしたし、日本の伝統芸能ということで、敷居の高さも感じていましたね。知らないところに足を踏み入れるので、挑戦できる機会に出合えたことは、自分の人生にとっても、ありがたいですね。

 

――岩崎さんと健人さんは何度もご出演されています。回数を重ねたからこその想いはありますか?

岩崎 僕はもう7回目で、誰よりも最多で出ていますが、回数をこなしていった上で大蔵流のセリフの出し方の細かいところまでご指導いただけるようになってきました。今回の大崎さんのように初めて参加してくださる方には教えるような場面も増えてきたんです。そこは少し、心境の変化かな、と思います。健人さんのように何度も出演したいと思ってくださることも嬉しいですし、大崎さんにもそう思ってもらえたら嬉しいですね。前回の「狂言男子~夏の章~」の時、佐伯大地さんが再チャレンジで出演してくれて、すごい成長を見せてくれてめちゃくちゃ嬉しかったんです。“もう1回、やってやるぞ!”という気合いを見せてくれたんですよね。僕自身、本当に少しずつではありますけれど、舞台を広く見れるようになってきたように思います。もちろん、先生にご指導いただいた上でですが、今までは見えてこなかった部分も、ここにきて見えてきました。…でも、まだまだ戸惑うこともたくさんです。

健人 僕は4回目ですが、毎回相手も違うので、いつも新鮮な気持ちです。見に来てくださる方にも、新しいお話をお届けできたらいいですね。でも今回の稽古やっていても、これまでやってきたことと似ているところもあったり、前の稽古の景色が浮かんできたりもするんです。なので、新鮮さもあるんですけれど、今までやってきたことも役に立っているんだな、と実感しています。

 

――善竹さんは、先生として狂言指導をされています。これまで狂言に触れていない若者を指導するのは大変ですか?

善竹 「狂言男師」をやる前に、「能楽男師」というのを2回やっていまして、兄の善竹富太郎がが総合プロデュースしていたものでした。その兄が急逝してしまい、岩崎さんと健人さんは、いわば兄の最後の弟子なんです。それから私が「狂言男師」として引き継ぐことになりまして、独特の言い回しだったり、調子が違っていたりというところを私が直す、ということを稽古でしています。お2人に関しては、私が引き継いだ時点でもう基礎はできていました。一番最初を教えるのは苦労するかとは思いますが、一番苦労したのは兄だったと思います。兄は結構、厳しかったですからね(笑)

岩崎 もう、大きな声で怒鳴られてました(笑)

善竹 それに比べれば、私は優しいほう(笑)。足の運びや構え、調子なんかは、経験者のお2人は割とできているんです。とはいえ、まだまだ言いたいことはたくさんあるんですが、たくさん一度に伝えてしまってもごっちゃになってしまうので、本番が近づくにつれて高めていけたらと思っています。稽古も始まったばかりですが、お忙しい方々なのでセリフなんかがまだまだ入っていないところもありまして。読み方も変わっていたりするんですよね。先ほども「ひとしおお酒が飲みたい」という部分を「ひとし・お酒を・飲みたい」と勘違いをしていたりしまして…これは「ひとしお・酒を飲みたい」なんですね。それをわかっていなかったので、先ほどは取材前なのに少々指導が厳しくなってしまいました(笑)。大崎さんは、今回はじめて能楽に足を踏み入れていただいています。まずはすり足や型に慣れないと、なかなか難しいんですね。回数をこなさないと仕方がないところもありますが、セリフを入れておかないと動きまで回らない。その難しさは今、感じていらっしゃるところじゃないかと思います。やはり、本人が咀嚼して落とし込むのが大変ですから。

 

――狂言師として、「狂言男師」のような企画をどのように感じていますか。

善竹 若い方にも伝統芸能の素晴らしさを発信したいとは思っているんですが、能楽界のお客様は、やはり年齢層がどんどん高くなっているんです。「狂言男師」は、今をときめく俳優さんが狂言に挑戦していることを、ドキュメンタリーのような感覚で若い方に楽しんでいただけるもの。若い方に狂言の世界を知っていただけるきっかけになっていますので、とてもありがたいことだと感じています。また、兄・富太郎の最期の仕事でもありますので、意思を受け継いで、育てていきたい気持ちでおります。以前の公演で、佐伯大地さんに初めてご出演いただいたときのことなんですが、最終稽古が終わってあとは本番というタイミングでも不安が残る印象だったんです。その時は3回公演でしたが、1回目、2回目とどんどん良くなって、3回目は集大成としてノリにノった演技をしていました。正直、稽古の時は不安しかなかったのですが(笑)、本番で成長していくさまを目の当たりにして、本当に感激しましたね。その後、リベンジに再出演もしてくださいましたし、役者としての力を感じさせてくれる印象的な出来事でした。そういうドキュメンタリー性のような部分も、ぜひ皆さんに感じていただきたい部分ですね。

 

――演じる側としては、普段出演されている現代劇との違いなどで戸惑いも多いのでは?

岩崎 だいぶ言い慣れてはきたんですけど、新しい演目で違う言い回しの長セリフが来ると…やっぱり未だに詰まっちゃいます。これ、どこで切るのかな?って。だからか、現代劇になるとめちゃくちゃ楽になったような気になります(笑)。現代劇はアドリブなどでごまかすことができますが、狂言ってセリフを一切間違えられないんですよ。そこはやっぱり毎回大変ですね。

健人 現代劇だと、自分で台本を読んで、まずは思った通りに動いて、自分がどう見せたいかを考えながら決めていくんですが、狂言には型など、確かな正解があるからこそ、難しい部分はあります。でも、そこが面白いところでもあるんですよね。

大崎 まずは普段はまったく使わない言葉で演じることから、もう難しいですね。まだ理解できていない言葉もあって、いつもやっている現代劇だと意識せずにやっていることが、狂言ではそういう部分も意識してやっていかないと、言葉が出てこなくなる。もう、今は必死です。でも、コメディなんんですよね。自分でもクスっとしてしまう場面もあって、初めて触れる狂言ですが、面白い!と思う部分もたくさんあります。きっとそれは、初めて観るお客さんでもわかっていただけると思います。

 

――今回は「呼声」「棒縛」の2本を上演しますが、ご自身の役どころで好きな部分や注目してほしいところは?

健人 僕は、これまでの役どころに比べて圧倒的に謡(うたい)が多いので、そこを見ていただきたい!…って言いたいんですけど、まだまだ稽古が必要なので、本番までに胸を張って聞いていただけるようにしたいですね。あと、先ほど岩崎さんも長セリフが大変というお話をされていましたが、動きとセリフが合ってきて、こういう型でこのセリフを言っているんだな、というのが自然にわかってくると、すごく楽しめるんです。そこまでしみ込んできたら楽しめるというのを知っているからこそ、早く今回の演目もそこまで行きたい気持ちですね。

大崎 僕は「棒縛」で主役をやらせていただくので、主役として、次郎冠者をやらせていただきます。3人ともコミカルで、本当に好きな演目なんですよ。ドリフターズのような面白さで“後ろ!後ろ!”ってなるようなわかりやすさや歌や踊りや殺陣なども、見せどころがたくさんあるんです。それを皆さんに楽しんでいただけるように、僕も楽しんでできるように頑張ります!

岩崎 僕としては、ステージに立ちながらも2人を見守っているような感覚なので、そういう姿を見ていただけたら。何度も来ていただいている方は、僕の成長も見ていただけると嬉しいです。同じ公演も以前にやっているんですけど、以前と比べて成長しているな、と感じていただけたら嬉しいですね。

 

――今回の演目の面白さやポイントはどんなところになるんでしょうか。

善竹 これはもう、謡(うたい)ですね。「呼声」も「棒縛」も、狂言謡の面白さが出ている演目です。初めての方でもわかりやすいと思います。「棒縛」は、学校狂言でも上演されたりしますし、私は大学教員もしているんですが、授業の最後の実技発表で「呼声」を学生にやってもらうこともあるんです。学生には1年かけて学んでいただくんですが、役者の皆さんはほんの数日の稽古。本当に大変ですが…ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。

 

――「呼声」は居留守をしている太郎冠者を楽し気な雰囲気で誘い出すお話で、「棒縛」は大好きなお酒を縛られていても飲みたい2人のお話です。そんなお話にちなんで、コレを出されるとつい誘い出されてしまうようなことや、どうしてもガマンできないくらい好きなものを教えてください。

岩崎 僕はアニメの話で誘われたら、もっと話したい!ってなっちゃいますね。「このアニメ、面白いですよね~」なんて話題を出されたら、それ観ました?じゃあこっちも…って、なっちゃうと思います(笑)。あと、最近は100%果汁のジュースがすごく好きで、特にざくろのジュースにハマっています。美容にもいいそうなので、最近、肌の調子がいいんですよ。

大崎 僕はもう、カレー!カレーしかないです。カレーの話題だったら、食らいついちゃいます。「うまいカレー屋知ってるんだよね」って言われたら、どこどこ!?って前のめりになります。それ以外の話題はそんなに…(笑)。最近、近所においしいカレーを見つけて、近所にあるのは嬉しいんですけど、本当に家の近所なので行きすぎないように気を付けてます(笑)。好きなことで言うと…家の間取りとかを見るのがめっちゃ好きです。おじいちゃんが大工だったからなのか、ずっと物件情報を見てしまいますね。ワクワクするんですよ。

健人 僕はもう、天気が良ければすぐ誘い出されちゃいますね(笑)。最近、自転車を買ったのでよく乗っているんですけど、すごく気分が落ち着くんですよ。天気が良かったら、自転車でどこでも行っちゃいます。あとは、ゲームかな?最近は忙しくてなかなかできていないんですが、ゲーム配信をしたりもしているんですよ。

善竹 私は骨董市ですね。どこそこで青空市やっているよ、と聞くと、行きたくなってしまいます。そこで狂言の小道具や衣装が出ているとテンションが上がりますね。工芸品とか、職人技が好きなんですよね。特に刀剣は鞘師とか研ぎ師とか、それぞれに職人が居てカッコいいんですよ。あとは、特にお酒が強いわけではないんですが、お酒のアテになるようなおつまみは大好きですね。チーズとか、富山のほたるいかなんかがあるとワクワクします。

健人 僕もおつまみ好きです!家でお酒を飲むことはあんまりないんですが、酒盗とかホタルイカの沖漬けとか好きですね。

 

――最後に、公演を楽しみにしている方にメッセージをお願いします!

善竹 毎回大成功で終わっていますけども、また新たなメンバーが加わりましたし、同じ演目でも違う表情が見えてくるんですね。今、稽古で叱ったり指導したりしているところですが、その成長を一番近くで目の当たりにしていますので、ぜひ楽しみにしていただきたいと思います。

岩崎 この企画自体がコロナ禍になってすぐのものだったので、やはり生で観る機会というのは素晴らしいと、改めて感じていただきたい。生でしか味わえない空気感があるので、きれいな能楽堂を観ていただき、生のお芝居を堪能していただければと思います。

大崎 狂言に初めて触れる初心者の私ではありますが、受け入れてくれた先生やスタッフの方々、そして何より見に来てくださる皆さんに、今自分にできる最高のものをお届けできるように頑張るのみです!ぜひ来ていただければと思います。

健人 僕は4回目になりますので、成長した姿をぜひ見ていただきたいですね。普段の舞台とまったく違っていて、普段は音楽や格好でなんとかカッコよく見せてもらってるものが、狂言だと、もう自分自身だけで表現しないといけない。すごく難しいんですけど、新しい演目、新しいキャストで、また新たな風が吹いています。きっと今までと違った感じで楽しめるので、ぜひ見ていただければと思います!

 

 

ライター:宮崎新之