歌舞伎の次代を担う、坂東巳之助、中村壱太郎、中村米吉、中村隼人、中村橋之助の花形俳優が競演し、春の京都を熱く盛り上げている。名作『番町皿屋敷』『芋掘長者』と、“恋”にまつわる二演目は、午前の部、午後の部で役替りとなる。初日の熱気溢れる様子が到着した。
両部ともに幕開きは、巳之助のアナウンスで迎えられた。上演に先立ち、出演俳優による挨拶が行われた。午前の部、午後の部で出演者が異なり、午前の部は米吉と橋之助が花道より登場。米吉はユーモア溢れる巧みな話術で客席をあたため、橋之助との息もぴったり。午後の部は壱太郎、隼人が登場し、午前の部を観劇したお客様に感想をたずねると、場内からは盛大な拍手が送られた。午前の部とは一味違い、終始和やかな雰囲気で、芝居へとバトンを繋いだ。昨年に引き続き、南座公式SNSで募集した歌舞伎に関する質問に舞台上で回答する企画もあり、一部写真撮影も可能となった。
続く『番町皿屋敷』は、大正ロマンの時代に作られた岡本綺堂の新歌舞伎の名作で、身分を越えた、一生に一度の恋を描く悲劇。南座では51年振りの上演となった。午前の部は隼人と壱太郎、午後の部は橋之助と米吉が青山播磨と腰元お菊を勤め、終盤に近付くにつれ、客席は静まり返ると共に緊張感がピークに達し、各コンビの熱演が涙を誘った。両部共に放駒四郎兵衛を勤める巳之助は、貫禄のある佇まいで、観客を圧倒。歌之助の並木長吉が町奴を力強く表現し、渋川後室真弓を勤める歌女之丞は強い存在感を見せた。
最後の『芋掘長者』は、岡村柿紅作の面白味のある賑やかな舞踊劇で、南座では70年振りの上演となる。花道から巳之助の藤五郎が登場すると、客席からは大きな拍手が。緑御前に恋焦がれ、友人・治六郎の助けを借りつつ、姫を嫁にもらおうと奮闘する藤五郎は、おかしくも愛らしく見える。午前の部は壱太郎が腰元松葉、米吉が息女緑御前、隼人が魁兵馬、橋之助が友達治六郎を、午後の部は壱太郎が息女緑御前、米吉が腰元松葉、隼人が友達治六郎、橋之助が魁兵馬を勤める。両部ともに歌之助の菟原左内、歌女之丞の松ヶ枝家後室がしっかりと脇を固める。滑稽なやり取りに終始笑いが絶えず、活気に満ち、心温まる一幕となった。