市川團十郎・ぼたん・新之助 成田屋親子「伝承への道」記者懇親会レポート

歌舞伎俳優の13代目市川團十郎白猿と長女・市川ぼたん、長男・市川新之助による自主公演を東京・神奈川・大阪で開催する。『市川團十郎・ぼたん・新之助 成田屋親子「伝承への道」』と題したこの公演の開催に先立ち、記者懇親会が東京・渋谷にて開催された。

この公演は、歌舞伎座などで行う本興行とは別の自主公演で、伝統の継承が大きなテーマとなっており、「子守」「鳶奴」「男伊達花廓(おとこだてはなのよしわら)」などが披露される。

團十郎は「今の時代を意識したものを考えていきたい。自分としては大きな挑戦。自分たちの公演でしかできないことに挑戦して、歌舞伎の存在意義を再確認しなければと考えている」と、伝統の継承とともに、挑戦の中で歌舞伎の今を見つめなおしていきたいと話す。その上で、「今では忘れられてしまった江戸情緒をお見せしたい」と意気込んだ。

「子守」などを披露するぼたんは「貧しい江戸時代の中でも楽しんでいる姿を見ていただいて、みなさんに楽しんでもらえたら」と、「鳶奴」に挑む新之助も「貴重だった鰹を鳶に取られてしまうお話です。お客様が楽しめるように、精一杯努めます」とあいさつした。

懇親会でのおもな各コメントは以下の通り。

■市川團十郎白猿

「この度は、娘とせがれとの『伝承の道』ということで、さまざまなところでの基礎的なことと、次の時代で少しでも芽吹いてもらえるように、家族できることを考えて、ひと公演させていただこうと思いました。まだこれからやっていくので明快に説明はできないんですが、前の形とはちょっと違った形でやっていこうかと思っています。私の中では大きな挑戦。自分たちの公演でないとできないことをやっていこうと思います。その時代に生きていた人の情緒を、今回の演目でご覧に入れようという趣向でこざいます」

Q.座談会はどのようなものになる?

「子どもたちもいますので、台本のようなものを私が構成します。演目や日本の文化にフューチャーしながらやっていく中で、状況によって私があえて脱線していって、お客様の感じやすいものをお見せしていく流れになると思います。子どもたちも、ある程度は言語化する練習ができ始めているので、喋れる環境を作っていくというのが第一の設定として構成していきたいですね」

Q.この公演は継続していくもの?

「うちの子に限らず、若い方がどんどん出てきていらっしゃいますが、伝えていかなくちゃいけないことが実はある。歌舞伎は伝統業界ですから、守り伝承していくことは大切なことです。歌舞伎というものは日本舞踊ができないと実はできないもの。そういう基本的なものを次の世代の人に参加していただきながら、見えてくる世界があったらいいなとは考えていますが、この公演が継続していくかはまだわからないです」

Q.子守の思い出は?

「麗禾(ぼたん)は、歩き出すのが早かったですね。1歳ちょっとから歩いていて、毎朝8時には家を出て、階段を上るようになどをすごくしていました。でも、これを子守とは言わないですね(笑)。せがれの方はなかなか歩かなくて、麻央も私もずっと抱えている映像が多いんですよ。昔は背中だったと思うんですが、私は前に抱えていて…(新之助を見て)ずっと寝ている人だったのでね君はね(笑)。あまり手間はかからなかったですね」

■市川ぼたん

「演目に出てくる女の子は、私と同じくらいの年齢の女の子です。当時の女の子の気持ちになり切って、日々の稽古に励んでいます。ぜひ、見に来てください」

Q.自分が出演する演目について

「『子守』は、江戸時代の貧しい女の子が、小さな赤ちゃんを連れていて、鳶に油揚げを取られてしまうところからお話が始まります。抱いている赤ちゃんをなでたり、赤ちゃんをおろして一人で人形遊びをしたり、貧しい中でも楽しんでいる姿、その想いを見ていただいて、楽しんでいただけたらと思います」

Q.両親との思い出は?

「自分で覚えていることは少ないんですが、お父さんのスマホの中の写真や、番組などでたくさんの小さいころの思い出の写真が残っているので、自分の記憶というよりは、こんなことがあったんだな、と思い返すことが多いです」

Q.普段の父と稽古の父の違いは?

「遊んでくれたり、ご飯を一緒に食べに行ったり、そういう時のお父さんはすごく優しくて、私たちのことを想ってくれているんだなとすごく感じます。稽古中のお父さんも私たちのことを考えて、たくさんいろんな工夫をして、直した方がいいところをたくさん指摘してくれます。怒ったり指摘したり、優しい時と雰囲気は違うんですけど、私たちに対する思いがあって、頼もしくて素敵なお父さんです」

■市川新之助

「みなさま、本日はお集まりいただきありがとうございます。僕は鳶役をやらせていただいます。お客様が楽しめるように、精一杯努めますので、ぜひ見に来てください。ありがとうございました」

Q.自分が出演する演目について

「『鳶奴』では、鰹を売っている人がいて、それを鳶に取られてしまいます。昔は鰹がとても貴重なものだったので、取られてしまったことに怒っているところをやっていきます」

Q.普段の父と稽古の父の違いは?

「普段の父はすごく優しいです。お稽古の時も丁寧に教えてくれます!」

取材・文:宮崎新之
撮影:岩田えり