2023年10月・11月開催!「十三代目 市川團十郎白猿襲名披露巡業」│市川團十郎 取材会レポート!

2023年10月・11月に、「十三代目 市川團十郎白猿襲名披露巡業」公演が、北とぴあさくらホール、市川市文化会館、水戸市民会館グロービスホール、J:COMホール八王子他、全国20ヶ所24公演にて開催。出演者は市川團十郎と重要無形文化財保持者(人間国宝)の中村梅玉のほか、市川右團次、片岡市蔵、中村児太郎、市川九團次、大谷廣松、中村莟玉。

演目は『君が代 松竹梅』、『口上』、『毛抜』をお届け。冬の厳しい寒さを耐え忍ぶ強さを持つことから「歳寒三友」と呼ばれる『松竹梅』。松、竹、梅それぞれの目出度さを舞う本作は、「君が代は恵みかしこき高砂の」という詞章に因み『君が代 松竹梅』と呼ばれる。襲名披露公演を寿ぐ華やかな舞踊が楽しめる。

『口上(こうじょう)』では、裃姿の俳優よりお祝いの口上が述べられ、十三代目市川團十郎白猿より、来場者に向けて襲名披露の挨拶を行う。

『毛抜(けぬき)』は、歌舞伎十八番の一つで、二世團十郎が寛保2(1742)年に大坂で演じた『雷神不動北山櫻』のなかのひと幕。豪快な荒事の演技のなかにおおらかさも感じられる作品。色気と愛嬌を兼ね備えた粂寺弾正を市川團十郎が演じる。明るく華やかでユーモアたっぷりの荒事のひと幕に乞うご期待!

また、市川團十郎が開催を前に都内で取材会を行った。その取材会の模様をお届けする!

――今回の『毛抜』を選ばれた意味合いや思いをお聞かせください

市川團十郎家の襲名公演ですので、歌舞伎十八番もしくは新歌舞伎十八番をご披露するというのが一般的かと思います。春先の巡業では『勧進帳』で開催させていただき、秋巡業の演目の候補としては『鳴神』、『毛抜』があがりました。

決め手となった『毛抜』は、一人で芝居をするところが多い点です。『鳴神』は荒事の要素は多いですが、女方と二人で芝居を進めていくことが多く、市川團十郎が中心の『毛抜』の方が襲名披露巡業としては面白いのではないかと思いました。

『毛抜』には紋切り型という幕外の型がありまして、ご当地ご当地によって幕外の景色を変えたいという思いもあり、『毛抜』に決めさせていただきました。

――『毛抜』の粂寺弾正を演じるにあたり一番大切にしている点と、昨年12月には新之助さんも同役を演じられていましたがご指導の際に気を付けていた点をお聞かせください

『毛抜』はもともと二代目市川團十郎が行った「雷神不動北山櫻」という作品です。そこから七代目市川團十郎によって『鳴神』、『毛抜』、『不動』が歌舞伎十八番に選定されますがその形は途絶え、二代目市川左團次が色気ある作品に作り替えたのが今日伝わっている『毛抜』であり、『鳴神』です。今やっている『毛抜』は派生して出来ている部分も大きくあり、二代目市川團十郎が演じていたものをそのまま演じている『助六』と違い、『毛抜』は原型がどうだったかは正直分からないです。

その中で『毛抜』の粂寺弾正は愛嬌とおおらかさ、その中にひけらかさない知的の強さ、歌舞伎十八番の「剛の者」というすべてのエッセンスがないと出来ない、歌舞伎十八番の中でもハードルの高い役のひとつです。

また、歌舞伎十八番は荒事の印象があるかもしれませんが、お家騒動を解決していくLGBTQの壁をも超えた主人公が奮闘していくところに、新しい視点でも見ていただける作品なのではないかと思います。

対して、当時9歳の市川新之助が粂寺弾正をやるということは非常にハードルの高いことでしたが、十二代目團十郎が持っているおおらかさを生まれながらに持っていると感じていましたので、挑戦させていただきました。

至らない点もあったかと思いますが、彼の『毛抜』を9歳で超えられるような人間は出てこないかと思います。

私の場合は『外郎売』でしたが、彼にとって『外郎売』と『毛抜』が「海老蔵」になるための特急券になればという思いで、あえて口酸っぱく言わないことに気を付けて指導しました。

――あえて口酸っぱく言わないということですが、それは新之助さんが生まれながらにして持っているおおらかさを活かすためということでしょうか?

今の時代は学校に行かないことによって生まれてくるような才能も認められる、多様性のある世の中に変化していることを、親も感じなくてはいけないと考えております。

その変化がありとあらゆる部分で発生しているのが現代だと思いますので、ある程度は指導しなくてはならない部分もある歌舞伎ですが、その先をみて教育をしています。

それを言わない親の苦しさもありますが、彼の『毛抜』の粂寺弾正は、本当におおらかにやっていたかと思います。

――今回の襲名披露巡業、全体を通しての心構えをお聞かせください

自分自身、襲名披露巡業のみならず他の興行を含めても各地に一番足を運んでいる役者だと思います。首都圏の近郊や遠方にいらっしゃる方々に届けられるよう巡業に力を注いで生きてきました。今回各地の方々にお目にかかれるということで、團十郎として今後ともよろしくお願いいたします、というご挨拶と、今まで海老蔵としてありがとうございました、という感謝を伝えられる興行になれば良いなと思います。