☆12月9日(土)一般発売開始!☆博多座『二月花形歌舞伎』松本幸四郎 合同取材会レポート

2024年2月3日(土)~18日(日)に福岡・博多座で上演される『二月花形歌舞伎』。その上演を前に、11月某日、出演の松本幸四郎が福岡を訪れて会見を開いた。今回の演目は江戸川乱歩の『人間豹』を原作とした『江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみ・あやしの・かぎづめ)』と、ユーモラスな舞踊劇『鵜の殿様』の二作品。
『江戸宵闇妖鉤爪』は幸四郎自身が発案、2008年に歌舞伎として舞台化された新作歌舞伎で、息子の市川染五郎も出演を熱望していたという作品。一方『鵜の殿様』は歌舞伎での上演は初となる舞踊劇で、親子の息の合ったやりとりも見ものだ。今回は市川染五郎が博多座初登場となり期待が高まる。

――『江戸宵闇妖鉤爪』は思い入れがあるとのことですが、どんな作品でしょうか?

当時、(十八代目)中村勘三郎のお兄さんがコクーン歌舞伎で新しいものをつくられていましたが、自分たちの年代でも、新作を演りたいと思っていました。そこで江戸川乱歩作品に思いあたり、歌舞伎に適したものを探すなかで『人間豹』が浮かび上がってきました。歌舞伎はスカッとするような勧善懲悪の筋や、豪華絢爛な色彩の豊かさも大きな魅力ですが、乱歩作品を原作にすることで、従来の歌舞伎にはあまりない、モダンな歌舞伎ができないかなと考えました。

そう思い続けて10年ほどたってようやく上演できた作品で、のちに大阪松竹座で再演もしました。そして今回、博多座で新たに上演できます。生みの親というと偉そうですけど、こうやって数を重ねられる喜びがあります。特別な思いがある作品ですね。

――乱歩歌舞伎と呼ばれています。見どころや注目ポイントはありますでしょうか?

人間豹(恩田乱学)という、摩訶不思議なキャラクターが世の中を掻き回していきます。世間を恐怖に陥れていき、それに明智小五郎がどう立ち向かっていくかというお芝居です。人間豹の非人間的な格好や動きなどをサスペンス感を感じていただきながら見ていただく作品だと思います。 初演では父が演出をいたしましたが、今回新たに齋藤雅文さんにも演出に加わっていただきます。父が演じていた明智小五郎を私、私が演じていた人間豹を染五郎が演じる、また新たな乱歩歌舞伎が生まれることと思います。

――お父様の演じられた明智小五郎役を勤めるにあたっての意気込みを教えてください

父が明智小五郎として出てきた時の存在感っていうのは大きかったので、そこは目指す部分ではあります。まずは父が演出したものをしっかり思い起こして、その上で齋藤さんに演出していただきたいと思います。父が演じていた明智を進化させた形でお見せしたいと思いながら、キャラクターを分解しているところです。

――今回はご子息の染五郎さんとの博多座での初共演が注目されています

『江戸宵闇妖鉤爪』に関しては、息子自身も大好きな作品で、記録映像を見て、原作の小説も読んでいましたので、今回の出演は僕が思っている以上に興奮しているんじゃないかと思います。

今日、博多に向かうときに原作の小説を読み直したいと思って「1冊持っていっていい?」って聞いたら『人間豹』を5冊ほど出してきたんですよね。いろんな出版社から出ていて、中身は一緒ですけど挿絵などが違うそうです。それぐらい思い入れがあるんでしょう。今まで彼が演じてきたなかでも、1番大きな責任があり、大きな役だと思います。今、持っている意気込みがすべて形になるように、かなり準備しているという感じですね。

――幸四郎さん自身が演じられた時のことを思い起こして、アドバイスはありますか?

染五郎は人間豹である恩田乱学と、神谷芳之助という 全く正反対の二役を演じます。その二役の演じ分けですね。それとフライングなどの技術的なところはどんどん解決しなくてはいけません。加えてそもそも人間豹の恩田はどんな人物か、明智とはどんな人物かというような、かなり細かいところを1つ1つ話し合って、今回の台本作りに向かっています。

――『江戸宵闇妖鉤爪』は10年くらいかけてつくられたということですが苦労した点や工夫した点などはありますか?

当時は自分の投げかけた題材が、(演出である)父のイメージをもとにどんどん1人歩きしていくのがすごく楽しかったですね。音楽では和太鼓をベースにしたり、幕開けは艶っぽい新内節で始まります。人間豹の衣裳は父がスケッチしたイメージから姿が誕生しました。歌舞伎は真っ赤な紅や真っ黒な墨、真っ白な地肌というある意味、原色の世界ですが、この作品は逆にモノトーンでいこうと思いました。照明も明るいだけではない影をつけた立体的な演出です。

――初演、再演に続いて今回の、3回目はこれだけはやってやっておきたいこと、または初演から、必ず続けていることなどがあったら教えていただけますか

1つは衣裳です。すごく大きな柱になりますので、まずは当時を再現することですね。この間、染五郎がカツラの土台を作ったときに、僕が使っていたカツラを被ってみたらそのままでいいんじゃないかっていうぐらい、ぴったりだったんです。染五郎がやるべきものだった、今、やるべき時だったんだと思いました。

台本や演出、道具、照明、音楽などいろんなものが全部合わさって1つの仕掛けを作るわけですが、10年以上経っているのでちょっとトリッキーなことなど、今だったらできるってことはあるかもしれません。

ほかにはフライングをどうやって使っていくか。博多座さんは、本当に可能性がある場所ですので、十分に活用して、皆さんに驚いていただきたいなと思います。

今日も(取材前に)博多座の舞台上を見てきましたけど、あれだけの広さがありますから、お客様から見えない部分が広いんですよね。舞台袖に行ったらすぐ壁…となると何にもできないところも、博多座ではダッシュで走り込んだり、大きなものを出したり引っ込ませたりもできます。天井も高いです。これだけ贅沢な環境はありませんので、「これはできなかったのかな」って後から思うようなことはここで実現したいと思います。

――『鵜の殿様』は一転して、ユーモラスな舞踊劇です。こちらの見どころは?

2023年の2月に日本舞踊の公演で初めて出会った作品です。歌舞伎で上演できる、とても可能性のある作品だと思いました。調べたところ過去には上演していなくて、これはぜひ、歌舞伎狂言のレパートリーとして常時上演できる作品にしたいと思っています。

お話は大名と太郎冠者のいわゆる狂言舞踊です。太郎冠者はちょっと間抜けだったり、いたずらをしたりする、それを大名に見つかって叱られるっていう形が多く見られます。

お互いに踊りながらドタバタやり合う場面も出てきます。これだけ大名が踊る作品もなかなかないですし、皆さんにたくさん笑っていただける踊りではないかと思います。息子の染五郎と演じられるのも楽しみにしています。本当の親子で、主人が染五郎で、従者が私という関係性も含めて、いろんな見方で楽しんでいただきたいと思っています。 楽しく笑えるほがらかな作品ですね。

――最後に上演を心待ちにしている九州のお客様へメッセージをいただけますか

染五郎とともにこの大きな演目で歌舞伎公演ができるというのは、本当に嬉しく、今から2月が楽しみです。私の母が博多出身ですから、私の体の半分は博多の血でできています。そういった特別な思いがある場所ですし、特別な思いがある作品です。そこに初めて博多座に出演させていただく染五郎が入ります。新しい特別なことが起きる時ですので、その瞬間を是非とも多くの方々に見ていただきたいと思います。

取材・文/山本陽子