スーパー歌舞伎 三代猿之助四十八撰の内 ヤマトタケル|中村隼人・市川團子・中村米吉 囲み取材レポート

ただいま東京・新橋演舞場にて上演中のスーパー歌舞伎 三代猿之助四十八撰の内 ヤマトタケル。初日開幕前日となる2月3日(土)に囲み取材が行われ、中村隼人、市川團子、中村米吉の三人が、開幕にあたっての意気込みを語った。

――まずはいよいよ明日初日を迎えるということで今のお気持ちをお願いします

隼人 この作品は38年前に團子くんのおじい様である猿翁のおじさまが創られたスーパー歌舞伎第1作目の作品です。最近の新橋演舞場では『流白浪燦星(ルパン三世)』や『刀剣乱舞』などの新作歌舞伎が生まれていますが、新作歌舞伎の原点ともいわれる作品を上演させていただく、さらに初日である2月4日(日)が38年前の初演と同じ日でして、そんな特別な日に私がヤマトタケルを勤めさせていただくというのは大変有難いことだと感じています。また、このお役は実は父の錦之助も30数年前に勤めていて、スーパー歌舞伎を親子で主演を演じるというのは初めてのことと伺っているので身の引き締まる思いです。

――お父様から何か言葉はありましたか?

隼人 父は猿翁のおじさまから直接お役を習っていますので、「おじさまはこうしてたよ」とか、「自分はこういう風にやっていた」とか。僕が生まれる前、30数年前の時の話なので、父も自分の舞台映像を観返して思い出していろいろと伝えてくれました。

――特に一番心に残っていること、精神に残っていることはありますか

隼人 二幕目の最後の走水の場面ですかね。米吉くん演じる弟橘姫と新婚なのですが、弟橘姫との別れのシーンで抱く感情、心情、というものを本当に大事にしていかないといけないと思っています。現代の感覚だとなかなか受け入れづらい部分もありますが、そういうものは神話の世界の空気感ということで「絵巻物のように演じなさい」と言われました。

――團子さんはいかがでしょう。明日いよいよ初日を迎えますが

團子 『ヤマトタケル』という作品は私が初舞台を踏ませていただいた作品でもあり、歌舞伎を好きになったきっかけの作品の一つでもありますので、自分としても思いがある作品です。隼人さんがおっしゃったことの繰り返しにはなりますが、38年前の初演の初日と同じ日に舞台を勤めさせていただくのは本当に嬉しく有難く思っています。とにかく一所懸命努めたいと思います。

――どんなところが好きなところですか

團子 ヤマトタケルの人物像がいい意味で非常に極端の人なので、演じていてもとても面白いところです。

――ワカタケルとヤマトタケルを両方演じるのは初めてですよね

團子 そうですね(笑)。ワカタケルは帝の使者として隣で見させていただいているのですが、12年前にこういうこともあったなと思い出したり・・・・

――やはり当時を思い出しますか

團子 はい!思い出します!

隼人 やっぱり経験者、先輩として子役の子たちにダメ出ししたりするの?(笑)。

團子 しませんよ!(笑)。しません、滅相もない(笑)。

――憧れの宙乗りをやったときはいかがでしたか?

團子 やはり観ている分にはとても美しいのですが、いざやってみると羽も長くてすごく重くて、祖父がどれだけ凄いことをしていたのかを改めて実感いたしました。

――かなり重いですよね

隼人 そうですね、涼しい顔で飛ばなければならないのですが(笑)、その前に一幕、二幕の大立廻りをやっていますので身体がバキバキなんです(笑)。その中で重い中で重い羽をつけ宙乗りをするというのは大変だと実感しています。ただ、お客様に見えないところで身体を使うというのはまさに“芸”だなと思いました。

――衣裳は初演のときと同じものですか

隼人 いま着ている衣裳もそうですが、初演の時のものを我々も使わせていただいています。今回、作っているのもあるのですが、豪華な刺繍が施されている部分など、基本的にはベースにしています。

――猿翁さんのころから使われている衣裳ということですが、團子さんは袖を通した感じはどうですか

團子 衣裳もそうですが、かつらでもそのまま使っているものもあるそうで、特に熊襲
の場面での女方の飾りは初演のままだそうです。もしかしたら祖父の汗とかも染み込んで
いたりするのかな?とも思いました。

――猿翁さんが見守ってくださるという感じですよね

團子 そうですね、お守りのような・・・見守ってくれていたら嬉しいなと思っています。

――猿翁さんからの教えはありますか?

團子 私が生まれてからたくさん話すことはなかったのですが、直接ということですと、初舞台のワカタケルの時に教えてもらったセリフの基礎です。客席に届かせるようにセリフを前に届けるイメージを持つとか、そういったことが改めて今回共通しているのかなと・・

――米吉さんはいかがですか?

米吉 初演の時から私の父・歌六がタケヒコ役で度々出演させていただいておりました。私自身も、昨年亡くなられた猿翁のおじさまが初舞台の時に口上を仰っていただいたこともあり、澤瀉屋さんと我が家は本当に縁が深く、この『ヤマトタケル』という作品に出演させていただくことができて、心から嬉しく思っています。また今回は姉妹である兄橘姫と弟橘姫の二役を演じるのですが、1人でこの二役を演るというのは本当に久しぶりのことなんです。本公演では福助のお兄さん以来ですね。福助のお兄さんも昨日、歌舞伎座で会った父に「修ちゃん(米吉)頑張ってるー?」と声をかけてくださったそうです。二役を演じるということが原作の梅原先生の書いた脚本のつくりでもあるので、今回はそういった部分も皆様にお楽しみいただければなと思っております。

――米吉さん、先日ご結婚を発表されましたが今のお気持ちは

隼人 それ僕も聞きたい(笑)。

米吉 先月、1月22日(水)に入籍させていただきました。結婚式は5月の末に予定しておりますので、5月の末から正式にお披露目ということになります。芝居の好きな人で、非常に明るくよく食べる人です(笑)。また私がずっと喋ると向こうも負けずと喋って、とにかくずっと誰かが喋っている状態でございます(笑)。

スーパー歌舞伎 三代猿之助四十八撰の内 ヤマトタケルは、3月20日(水・祝)まで東京・新橋演舞場にて上演中!

舞台写真