「能狂言『鬼滅の刃』-継-」|大槻裕一 インタビュー

無限列車、遊郭
能舞台を存分に使った
“鬼滅の刃”

大阪SkyシアターMBSでの劇場公演を終えたばかりの能狂言『鬼滅の刃』だが、好評に応え続編「能狂言『鬼滅の刃』-継-」の上演が決定した。
今作も前作に引き続き、演出・野村萬斎、監修・大槻文藏という能・狂言を知り尽くしたふたりが作品の細部にまで携わり、再び『鬼滅の刃』の世界観を能狂言に作り上げる。
今作の演目は、原作における無限列車編と遊郭編。人気キャラクターも登場するだけに、いったいどんな内容になるのか? 
炭治郎役を務める大槻裕一に話を聞いた。

「前作の公演終了後、たくさんの応援の声をいただいて、再演という形で先月、劇場公演をおこなうことができました。と同時に那田蜘蛛山編がハマっていたので、絶対に無限列車編も遊郭編もできるんじゃないかという声をいただきました。本当にたくさんの方々が動いてくださって続編の公演が決定したので嬉しく思います」

能狂言において、続編は珍しいと思いきや、誰もが知る古典に当てはめられるという。

「私たちが普段やっている『源氏物語』の“葵上(あおいのうえ)”や『平家物語』の“敦盛”といった演目は、物語の面白い場面や有名な人が出てくる場所をピックアップして能や文楽、歌舞伎に仕上げています。実は650~700年前やっていることは同じだと、(野村)萬斎さんや父(大槻文藏)と話しています。なので私が“道成寺”に憧れたように、孫の代とかが炭治郎を演ることに憧れるようになってほしいと思いますし、そういう存在になりたいと思います」

今作では無限列車編と遊郭編が描かれることになるが、能楽堂をあっと驚く使い方で効果的に魅せるという。

「花魁は能にはありませんが、能の古典にある華やかな飾りをつけた装いをする演目を参考にしたり文藏先生からかつてはこんな演出もあったよなどと教わりながら、昔にあったことを掘り起こし、新たに見直しができることも今作のすごいことだと思います。また、通常の舞台であれば列車と遊郭というふたつの大きなセットを用意しなければいけないのですが、能楽堂であればそのまま使えるのではないかという話が出ています。能楽堂をどう使うのかも楽しみにしていてください」

今作では煉獄杏寿郎や宇髄天元、上弦の鬼も登場するが、誰がどんな“能面”で登場するかも興味深いところ。

「『鬼滅の刃』でしか使わない“能面”をゼロから作るのですが、これがとても難しいのです。目が生きていないとか、鼻が傾いているとか、一回で完成とはならない。決まり事も多いですし。ただ、全て新しい面を作るかといえばそうではなく、例えば僕が演じた禰豆子は竹を咥えていますけど、中身の面は普段から私たちが使っている“若女(わかおんな)”という面を使っています。なので、人物のイメージを掘り下げて、新しく作るか、それとも古典のものを掘り起こすかを今、考えています」

古典芸能に新たな風を吹かせるだけでなく、能と狂言の融合を見事に果たしている「能狂言『鬼滅の刃』」。続編への期待は高まるばかり。

「皆さんが見たい場面をいかに能狂言で見せることができるか? その期待に応えたいです。それをすることで、自分がこの作品を通じて苦手だった部分を克服できたり、成長できればいいなと思っています。『鬼滅の刃』は炭治郎の成長物語であり、自分自身の成長ともリンクしているので、お客さんも含めて、みんなでひとつの作品を成長しながら作っていけるのが醍醐味だなと思います」

インタビュー&文/高畠正人
撮影/植田真紗美
※煉獄の「煉」は(火へんに東)が正式表記となります。

※構成/月刊ローチケ編集部 9月15日号より転載

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【プロフィール】

大槻裕一
■オオツキ ユウイチ
能楽師。’00年に「老松」で初舞台。能以外の舞台やテレビにも出演。師父は人間国宝の大槻文藏。