長野博が主演するミュージカル『チキチキバンバン』が2025年1月17日から上演される。本作は、「ジェームズ・ボンド」シリーズの著作で知られるイギリスの作家イアン・フレミングの童話を基にし1968年に製作されたアメリカ・イギリス合作のファンタジー・ミュージカル映画を原作として、ロンドンのウエストエンドでミュージカル化された作品。その後、ブロードウェイにて上演され、イギリス国内ツアー、シンガポール、全米、イギリス&アイルランド、オーストラリア、ミュンヘン、イギリス凱旋とワールドワイドに展開。現在も、イギリス国内ツアーをつづける大人気作だ。『メリーポピンズ』の作詞・作曲を手がけたシャーマン兄弟によるタイトルナンバー「チキチキバンバン」は、アカデミー賞歌曲賞にノミネートされ、日本でも馴染みのある曲で以前から親しまれている。今回は、多才な日本人キャストたちの出演により、大人から子どもまでファミリーでも楽しめる作品として上演される。
この度、主人公のカラクタカス・ポッツを演じる長野博のインタビューが到着。本作の魅力や公演への意気込みなどを語った。
――本作のオファーを受けたときの心境を教えてください。
僕は、GO-BANG’Sさんが歌っていたイメージが強いですが、「チキチキバンバン」という楽曲がこの作品の曲なのだと初めて知って一気に繋がった感覚がありました。それから、車が好きなので、クラシックな車が登場するというのもうれしかったです。
――ブロードウェイ・ミュージカル『バイ・バイ・バーディー』以来、2年ぶりのステージとなりますね。
そうですね。ただ、あまりそこは意識していません。これまでも毎年、必ず舞台に立ってきたわけでもないですし、時期によっては2年、空くこともあったので、そこまで2年だからという気持ちはないですね。
――では、映画や脚本をご覧になった率直な感想は?
1960年代の映画ですが、古さを感じることは全くなかったです。良い作品は、時代が変わっても全く古さを感じさせないものなんだなと、映画を観て改めて感じました。この作品には、海の上を走ったり空を飛ぶ、今で言えばホバークラフトのような乗り物が登場しますが、それって子どもの頃からの夢ですよね。男性は歳を重ねると少しずつ少年の心に戻って、夢を持ち続けるとよく言いますが、そういう意味でもすごく夢の詰まった作品だなと思いました。
――本作のどんなところが見どころだと感じていますか?
実咲凜音さんが演じるトゥルーリーに対するポッツの気持ちの移り変わりは見どころの一つだと思います。それから、子どもたち。ポッツは常に子どもたちと一緒に行動しているので、親子愛も垣間見られるのも魅力です。夢の世界のようなストーリーなので、すごく楽しめると思います。
――長野さんが演じるカラクタカス・ポッツという役柄にはどのような印象がありますか?
発明家なので、いつか自分が発明したものがより多くの人に伝わって欲しいという気持ちでいろいろなものを作り続けている人です。常に夢や希望を持っていて、発明が好きだから続けているのだと思います。きっと好きじゃないとできないことだと思うので。2人の子どもたちにパワーをもらい、支えてもらいながら自分の好きなことをやり続けているという印象です。
――そんなポッツに共感できるところはありますか?
仕事などでは、新しいものを吸収して打ち出して発信していきたいと常に思っているので、そういったところは共感できます。
――では、ポッツのどんなところに魅力を感じていますか?
発明家って、のめり込んでしまうところがあるのではないかなと思います。周りに人がいても、自分の作ったものや熱中しているものに没頭してしまうところがポッツにもあって。そこが魅力でもあるのかなと思います。
――今回、共演者の皆さんは、初共演の方ばかりと聞いています。
(取材当時)まだお会いしてもいないので、これからお会いして、どういう方なのかお互いに知っていくことになると思うので、楽しみしかないです。
――事務所の後輩でもある小山十輝さんとは、今回、親子役です。
ライブを観に来てくれて、そこで挨拶したことがあったかなと思いますが、しっかりと会話をしたことはまだないので、どんな子なのかなと楽しみです。
――先輩として意識されていることはありますか?
あまりそうしたことは考えてないです。普段の姿を見て、どう感じてくれるかだと思います。それよりも、十輝くんが今、何が好きなのか、周りで流行っているのはどんなことなのかということを知りたいですね。僕自身が中学2年のときに事務所に入っているので、まさに今の十輝くんと同じ15歳だったんですよ。全く感覚が違うと思うので、僕も彼から吸収していきたいと思います。
――演出の三木章雄さんとのクリエイトで楽しみにしていることは?
三木さんとご一緒するのは初めてですが、一度お会いさせていただいたときに、舞台のことだけでなく、宝塚のお話などもたくさんしていただきました。今回のキャスティングに関しても、三木さんの中で「こういう役だからこの子がいいな」というイメージがあったと聞かせていただきました。いろいろお話しさせていただいた中で、三木さんから、「お話ししながら作れそうですね」とおっしゃっていただいたので、安心しました。僕もお話しをしながら作品を作っていくのが好きなのでこれから楽しみです。
――長野さんは車がお好きだということですが、今作に登場するクラシックな車の印象はいかがですか?
昔は当たり前にオープンでしたよね。以前、アメリカのフォードの本社にロケに行ったことがあるんですよ。ちょうど何かのお祭りやイベントをやっていて、蒸気機関車のように走っている昔の車や、第一号を模した車が実際に走っているのを見ることができたんです。それらの車は、この物語に出てくるものよりさらに古いものだったと思いますが、「こんな感じだったんだ」ということは体感できていると思います。今、世間ではクラシックカーの需要があって、値段も上がっているんですよ。原点があって今の進化があるので、やっぱりいいものだなと思います。
――先ほど「少年の心に戻って」というお言葉もありましたが、車は昔から好きだったんですか?
そうですね。子どもの頃に車のおもちゃやミニカーを集めることから始まって、少し大人になってからはラジコンでした。昔はラジコンって高級だったんですよ。「ラジコンなんて高いものを買ってもらえた」という意識があった。そこから、大人になって、本物の車が買えるようになって。昔、欲しかったものを大人になって手に入れることができたという思いがあります。
――改めて、公演に向けた意気込みをお願いします。
初めてのキャストの方ばかりですが、稽古場でどういう化学反応が起きるのか、僕自身もワクワクしています。物語もとても素晴らしいですが、音楽も本当に素敵で。ハッピーになれる楽曲がたくさんあります。「これは夢なのか、カラクタカスの願望なのか。それとも現実なのか」という夢の世界のファンタジー・ミュージカルなので、大人から子どもたちまで、ファミリーでも楽しんでいただける作品になっていると思います。とても分かりやすい物語なので、誰でも楽しめますし、笑顔になって素敵な時間を過ごせるのではないかなと思います。ぜひ様々な世代の方に観ていただきたいなと思います。
取材・文:嶋田真己
ヘアメイク:浅野有紀
スタイリスト:カワサキ タカフミ