舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』|吉沢悠&大沢あかね&榊原郁恵&松岡佑子 インタビュー

「気になっているけど、まだ踏み出せてなくて…」という『月刊ローチケ』の読者の皆様に、いろんな視点からオススメ公演をご紹介! 今回は、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』の魅力を、ハリー役の吉沢悠さん、ジニー役の大沢あかねさん、マクゴナガル校長役の榊原郁恵さんのキャスト3人と、原作小説の日本語翻訳を手掛けた松岡佑子さんに語っていただきました!

多くの人を魅了するのは愛、友情、勇気への共感から

英国の作家J・K・ローリングによる世界的ベストセラーで、1999年に日本語版が発売されるや否や爆発的なヒットを記録し、たちまち日本でも人気作となった「ハリー・ポッター」シリーズ。映画が製作されてからはさらに人気を広げ、近年も展覧会やテーマパーク、スタジオツアーなど、今なお多くのファンを魅了し続けている。そんな魅力の理由を、物語に深くかかわる4人はこう語る。

松岡 物語のテーマは、愛、友情、勇気。サインには、いつもこの言葉を添えるんです。そして壮大な世界観や魔法の魅力、登場人物の鮮やかさ、読後感の美しさ、ユーモアといった素晴らしい5つの要素が物語にあるからこそ、長く愛され続けているのではないでしょうか。

吉沢 ハリーを中心に友情の物語があったり、ちょっと辛いですが人の死を経験したり、魔法界じゃなくても起こり得るような物語が描かれていて、そこに共感できますよね。

榊原 魔法の力はやっぱり大きいですよ。痛快じゃないですか?そして、メインメンバーだけではなく、登場人物のそれぞれにちゃんと含みがあって魅力的。身近に感じられる要素があって、気持ちを入れられるんだと思います。

大沢 魔法っていう非現実的な世界のようで、キャラクターにきちんとドラマがあって実はすごく現実的なお話でもあるんですよね。会社とか学校とか、自分にもこういう状況あるよな…って共感できる。加えて魔法でワクワクできるんですから、老若男女、全世界が大好きになりますよ!

魔法も汗をかきながら役者が自らの手で表現

そんな人気シリーズの舞台化作品『ハリー・ポッターと呪いの子』は、2016年にロンドンで初演。一旦のピリオドを打った第7作の19年後が描かれ、ハリーの子どもらが時空を超えて大冒険を繰り広げる物語となっている。冒険の中で繰り広げられる魔法の数々はもちろん、英雄の子としてプレッシャーを感じている息子との関係に悩むハリーなど、成長したキャラクターたちの姿も等身大に描かれ、これまでにロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコ、オーストラリア・メルボルン、ドイツ・ハンブルク、カナダ・トロントの6都市で開幕。東京公演はアジアとしては初、世界では7番目の上演となっている。舞台ならではの表現や魅力はどんなところにあるのだろうか。

大沢 舞台版は19年後の世界で、ハリーとジニーの間には子どもがいるんです。その子がちゃんと血を引き継いでいるな、と感じますし、それが舞台でより深く描かれているように思うんですよね。やっぱり役者が生で、汗をかきながらやっているので、それを間近に体験していただけるのが何よりの魅力です。

吉沢 ハリーたちが大冒険をしたように、息子たちも少し違った形で大冒険をしていくんです。そこがすごく“エモい”ポイント。ハリーを演じていて興味深いのは、英雄だった少年が、大人になって子育てというパーソナルな悩みを持っていること。きっとハリーと同世代だった人は、等身大の共感を覚えるんじゃないかな。

榊原 舞台って、実際に物語がその場で起きるもの。映像作品のように合成とか特撮とかができません。シンプルな表現だけれど、明かりや音など深みのある演出効果で、すごく広がりのある見せ方をしているんです。魔法も、機械などではなく私たちの力で表現しているんですよ。

松岡 ローリングは映画になるとき、自分の世界を壊されたくなかったので相当抵抗したようです。幸い映画第1作は原作に忠実で、満足したからこそ7巻まで映画化されました。彼女はこの世界を7巻で完結させたかったのだと思います。そういう意味で、この19年後の物語は、また新しい世界です。登場人物も、演じる俳優が新しい感覚で自由に解釈していいと私は思っています。それで物語をずっと読み続けた人が『これでいい』と思えるようなところを、舞台で感じていただきたいですね。

劇場ロビーや赤坂の街も魔法の世界に!

キャストだからこそ知っている、“”な注目ポイントについても教えてもらった。

吉沢 実は舞台の最前ギリギリのところに、役者のほうに向かって光るアルファベットが書いてあるんです。客席に向いていないので、気付いた方は〝あれは何?〟って思われるかもしれません。今回の舞台では闇の世界も描かれますが、孤独な闇の中でも少しでも光を見つけて、光を大きくしてお客様に与えてほしいという役者側へのメッセージが込められたものなんです。2階席だとよりよく見えると思いますよ。

榊原 ロビーにもそれぞれのキャラクターのパトローナスが描かれているんですけど、うっかり気付かずにカフェなどに行かれてしまう方もいるそうなので、ぜひそこも楽しんでくださいね。

大沢 劇場全体、もっと言うと赤坂の街がもう魔法界、ハリー・ポッターの世界になっているので、少し早めに来て見逃さずに楽しんでほしいです。

吉沢 でも何より、劇場に来て本当に“魔法”を体感してほしい!魔法を体感ってどういうこと?って思われるでしょうけど、目の前の魔法にワクワクしていたら、2幕でグッと芝居が深まって、前半での関係性が揺るがされていって…。笑っていいところもたくさんありますし、感じたことは思いっきり表現してほしい。それが許される劇場です。エンターテインメント性の強い舞台なので、心を開放して見ていただけたらと思います!

インタビュー&文/宮崎新之
PHOTO/平岩亨

※構成/月刊ローチケ編集部 1月15日号より転載
※写真は誌面と異なります

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【プロフィール】

吉沢悠
■ヨシザワ ヒサシ
テレビドラマや映画の映像作品から舞台まで幅広く出演する。

大沢あかね
■オオサ ワアカネ
子役モデルとしてデビュー後、タレント、俳優として多くの番組や映画に出演。

榊原郁恵
■サカイバラ イクエ
ドラマ、舞台、ミュージカルに多数出演し、タレント、司会者としても数多くのテレビ番組に出演。

松岡佑子
■マツオカ ユウコ
翻訳家。「ハリー・ポッター」シリーズの日本語翻訳を担当。