紀伊國屋書店創業100周年記念公演『わたしの書、頁を図る』|光嶌なづなインタビュー

自ら作・演出・美術を手がける演劇プロジェクトEPOCH MANの『我ら宇宙の塵』にて、第31回読売演劇大賞3部門受賞するなど、演劇界に新風を巻き起こしている新進気鋭の脚本・演出家小沢道成による最新作、紀伊國屋書店創業100周年記念公演『わたしの書、頁を図る』。

本作は、図書館職員として平凡に鬱々と過ごしてきた主人公の柳沢町子が、目の前に突如現れた、映画を撮っているという青年“慶太”の存在によって大きく心を揺さぶられ、またそれまでの想像とは全く違っていた常連利用客の実際の姿を目の当たりにし、葛藤、変化していくさまを描いたヒューマンエンターテインメント。主人公の町子を木村多江、自主映画監督の青年・岸口慶太を味方良介が演じる。

今回は、不登校の女子学生で、図書館の常連利用客の小山田奏那を演じる光嶌なづなに舞台出演への思いや本作への意気込みを聞いた。

 

――本作にご出演が決まったときのお気持ちを教えてください。

舞台に出演したいという気持ちがずっとあったので、すごく嬉しかったです。でも同時に、3年ぶりの舞台となりますし、紀伊國屋ホールでの上演ということで、責任も感じました。共演者の皆さんもとても豪華な方ばかりなので、全身全霊をかけて、この夏はこの作品に挑もうと意気込んでいます。


――舞台に出演したいという気持ちがあったということですが、普段から演劇をご覧になることもあるのですか?

そうですね。大学で演劇を学んでいたので、舞台が大好きなんです。友人が関わっている舞台を観に行ったりもしています。


――脚本を読んだ率直なご感想はいかがですか?

世界観がガラッと変わるタイミングがたくさんあって、(登場人物たちの)意外な一面がどんどん見えてくるので、何度も見返したくなる作品だと思いました。実際に私自身も何度も脚本を読み返したのですが、後で判明する事実を知ってから読むと見方が変わってくるんですよ。きっと何回観ても違う見方ができる作品になるのではないかと思います。


――光嶌さんが演じる小山田奏那(おやまだかんな)という役柄はどのように感じていますか?

中学生というのは人生の中でも特に心が敏感で、些細なことにも傷つきやすい時期だと思います。私自身も通った道ですが、だからこそ、奏那ちゃんの繊細で塞ぎ込んでしまうところにはすごく共感できるなと思いました。でも、奏那ちゃんは塞ぎ込んでいてもきちんと言葉にすることができるんですよ。中学生だった頃の私が見たら、すごく尊敬すると思いますし、かっこよく見えると思います。


――光嶌さんに似ているところはありますか?

告白をするというシチュエーションは経験したことがないですが、何事にも敏感になってしまうというところはとても共感できました。


――そうした奏那をどのように演じていきたいですか?

中学生という時期ならではの繊細さや、視野が狭くなってしまうところを、当時を思い出しながら演じていけたらと思います。今の年齢だからこそ、客観的に見られると思うので、当時の自分を客観視して、奏那ちゃんとすり合わせて作り上げていきたいです。


――この役に限らず、役作りをするときには、自分の中にあるものとキャラクターをすり合わせていって作っていくのですか?

はい。まずは自分との共通点を探した上で、自分にないところは、いろいろなところから引っ張ってくるようなイメージで作っています。


――そうして、稽古期間にどんどん積み上げていくのですね。

稽古でそれぞれのシーンを繰り返し演じることができるので、そこが舞台の好きなところでもあります。そうした稽古の中で感じたことを受けて本番では変わるところもあると思うので、1回1回のその瞬間を大事に演じたいですし、稽古で新しい感情が見つけられたらいいなと思っています。


――3年ぶりの舞台ということですが、舞台に立つことの面白さや舞台の魅力はどんなところに感じているのですか?

私は小さい頃にダンスをやっていたので、初めて「表現」と出会ったのが舞台の上でした。なので、舞台に立って表現をすることは、私には原点のようなものだと思っています。今回は、3年ぶりなので、舞台の上で表現する自分と向き合えるというのも楽しみの一つです。それから、実際にお客さまが目の前にいるというのが映像との大きな違いだと思いますが、前回、舞台に立ったときにはお客さまと一緒に作っていくという空気感を感じられました。公演を終えた後には達成感も感じられたので、そうしたところが舞台の魅力だと思います。


――逆に、舞台に立つことの難しさはどんなところに感じましたか?

止められないことです。やり直しが効かないので、何があってもその役でい続けなくてはいけません。なので、やり通すことができる強さを持たなければいけないと感じました。それから、映像もそうですが、舞台では特に頭の先から爪先までお客さまに見えていて、カメラのフォーカスがない分、お客さまがどこを観るかを決めることができるので、自分の立ち位置や体の使い方で、「ここを観てほしい」ということを伝えていけたらいいなと思っています。


――作・演出の小沢道成さんとは今回、初めてになりますね。

SNSなどを拝見すると、元々役者もされてきたということもあり、出演者の皆さんと話し合いを重ねて作品を作っている印象を受けたので、私もたくさん考えを持っていって、積極的にディスカッションをさせていただきたいです。


――ディスカッションから生まれるものもたくさんありますよね。

繰り返し稽古ができるからこそ、ディスカッションをすることで深みが増していくのだと思いますし、時には全てを崩して新たに作り直すというのも舞台で演じることの楽しみだと思います。稽古で積み上げたり、壊したりという作業をするのが好きですし、今回も楽しみにしています。


――お稽古前に何か用意をしておこうと考えていることはありますか?

自分の頭の中でカチッと固め過ぎてしまうのも良くないと思うので、ある程度は余白を作っていきたいと考えています。例えば年齢や性別などの絶対的な事実と、疑問を分けておいて、その疑問をどんどん稽古で埋めていくイメージです。今回も、「?」を「!」に変えていきたいと思います。


――共演者の皆さんも豪華です。主演の木村さんの印象を教えてください。

最初に脚本を読んだ瞬間から、木村さんが町子になって舞台に立っている様子が頭に浮かびました。小さな頃からテレビで観ていた方なので、今は共演できることが楽しみですが、きっと稽古を重ねるごとに不安も出てくると思うので、木村さんのお芝居を近くで見させていただき、いろいろなことを学んで吸収したいと思っています。


――そのほかの共演者の皆さんはいかがですか?

坂口(涼太郎)さんは映画でインパクトが強い役を演じられている姿をよく観させていただいていて、すごく印象に残っています。個性を持っていらっしゃる方なので、今回の舞台でもどのようにその個性を出されるのか楽しみです。皆さん初共演ですし、今回は歌もあるので、どう表現していけるのか。挑戦だらけの作品になると思いますが、そうした挑戦にも正面から立ち向かっていけたらと思います。


――今、お話にあったように今回は、歌も披露されます。歌うことはお好きですか?

好きです。ただ、人前で歌った経験がそれほどないので、緊張しています。リズムという武器を手に、セリフを歌として表現できるのは楽しみです。


――NHKドラマ「ひらやすみ」にもご出演し、注目を集めていらっしゃいますが、今、光嶌さんにとって、お芝居をする楽しみはどんなところにありますか?

最初は、お芝居をしている中で自分がどう思っているのかなど、自分のことばかりで視野が狭かったのですが、何回もお芝居をすることで、どんどん相手の方を見られるようになり、その場での変化や、その場で生まれるコミュニケーションを実感できるようになってきました。自分が発した言葉で相手の心が揺れたことを感じる。逆に相手の言葉に自分の心が揺れる。それを感じられることが増えてきて、これがお芝居なのかなと思う瞬間があります。決まったセリフを話しているけれど、心が動く瞬間が今、一番お芝居をしていて楽しいと思います。


――演劇の勉強をされていたということですが、元々、お芝居に興味があったんですか?

ありました。でも、初めてお芝居をしたのは18歳です。それまではダンスを長くやっていたので、違う表現方法を身につけたいと思ってお芝居を始めたんです。ダンスは一旦離れて、次の段階にいきたいという気持ちがあって。今でも自分の中の考えを整理する手段としてダンスを踊ったりもしますが、今はダンスで得たものを芝居にどう活かせるかを考えています。


――ちなみにどんなダンスを踊っていたのですか?

小学生くらいから始めたのですが、最初はヒップホップでした。高校生のときにダンス部に入って、30人くらいの部員たちで振り付けをしたり、構成を考えて大会に出ていました。この歌詞はどう表現するのか、この感情をどう振り付けにするのかをみんなで相談しながら作っていったので、そのときの考え方や思考の使い方は、お芝居でも活かせることが多いのではないかと思います。


――そうすると、身体表現を使った舞台にも興味があるのでは?

あります!ダンスで使う筋肉は衰える一方なので、思いっきり踊るのはちょっと今は怖いですが(笑)、でも、体を使うのがすごく好きなので機会があればぜひやりたいです。


――「ダンス以外の表現方法を」と思ったときに、たくさんある中でお芝居を選んだのは何かきっかけがあったんですか?

テレビっ子で、ドラマや映画を観るのが好きだったので、漠然とお芝居をやってみたいという思いがあったのだと思います。いつという明確なきっかけがあるわけではないですが、徐々に積み重なって、いざ進路を考えるという高校3年生のタイミングで、やりたいことを考えたときに、「舞台が好きだ。舞台でダンス以外の表現をするとしたら演劇だ」と頭に浮かんで。じゃあ、お芝居をやってみようと思って始めました。


――ところで、主人公の町子が図書館職員をしているということにちなんで光嶌さんの読書にまつわるエピソードを教えてください。

私、図書館の空気感がすごく好きなんです。引っ越しをするときに、「家の近所に図書館がある」を条件にするくらい(笑)。図書館にフラッと行って、飾ってある絵本を立ち読みしながら“準備体操”をして、何を読もうかなと考えてから、大人向けの分厚い小説に入るのがマイ・ルーティーンです。家ではあまり本を読まないので、図書館に何時間もいて、図書館にいる時間で読み切れるだけ読んで借りずに帰ってくるということが多いですね。


――では、普段は見られない「意外な一面」が明らかになっていくという本作にちなんで、光嶌さんの人にあまり見せない「意外な一面」は?

私は大阪出身なので、実家では関西弁なんですよ。それは意外と言われることが多いです(笑)。東京にきてからは、控えめに見られることも多いのですが、中高と運動部だったこともあって、勝負事になると本気で向き合ってしまいます(笑)。心の底は体育会系なのかもしれません。


――すごくおとなしいイメージがありました。

よく言われます(笑)。


――ありがとうございました! 最後に改めて公演に向けての意気込みや読者にメッセージをお願いします。

不器用な人たちが図書館に集まってきて、意外な一面が次々と見えてくるというお話です。不器用な人ほど共感するところも多いと思いますし、見終わった後に、自分の周りの人たちに対する見方が少し変わるのではないかと思います。奏那ちゃんは中学生の思春期の女の子ですが、その年代ならではの敏感さ、繊細さ、小さなことにも悩んでしまう様子を、大人になった私が客観視して演じられたらと思います。

 

インタビュー・文/嶋田真己
スタイリスト:森保夫(Leinwand)
ヘアメイク:谷口ユリエ