創作の葛藤と救いを描く、新作音楽劇の挑戦
7月24日(金)よりユーロライブにて、音楽劇『あわせて』が開幕する。本作は、作・演出・美術を池田亮が、音楽を小西力矢が手がける。ゆうめい初の音楽劇。東京公演を皮切りに岐阜県のこどものほんやピースランドのほか、9月に開催される豊岡演劇祭の公式プログラムでも上演。3都市を巡る新作音楽劇の構想と展望について、池田亮に話を聞いた。
――岸田國士戯曲賞、読売演劇大賞優秀演出家賞を相次いで受賞後、10周年を迎えた昨年には全国6都市ツアー『養生』を上演。次なる新作は初の音楽劇ですね
この作品は、音楽を担当して下さる小西力矢さんが2022年までやっていたしあわせ学級崩壊という劇団のリーディング公演内で上演された『かつて』という短編が元になっています。自分が書き下ろした戯曲を小西さんの音楽に合わせて俳優さんに朗読していただく企画だったのですが、すごく面白い体験で、「また小西さんと作品を作りたい」と思い続けてきたんですよ。4年を経て、再び小西さんの音楽から新たなインスピレーション受けつつ、演出や美術にも工夫を凝らし、長編音楽劇としてバージョンアップした作品にできたらと思っています。
――作品のテーマや物語のあらすじも教えていただけますか?
登場人物は、ある学園漫画の熱狂的信者である男・長谷川(宮崎吐夢)とその原作者・八木(村山新)の二人。漫画のアニメ化が決まり、長谷川は心を躍らせるのですが、ほどなくして、主人公を演じる声優がかつて自分をいじめていた同級生・真美であることを知る、というところから物語が始まります。過酷な現実から逃れるために漫画の世界に没入し、その物語やキャラクターに心を救われてきたのに、そんなことになったら、人はその運命をどう受け止めるのだろう、と考えて書き始めました。『かつて』は短編だったので、『あわせて』では、当時描き切れなかった、その先の物語を描きます。僕自身もアニメや漫画に関わるなかで、声優さんの声を聞きながら仕事をすることが時々あって…。刺激や影響を受ける一方で、「女性の主人公を描く時に、どうしてこんなにも“男性に愛されるキャラクター像”に寄せなくてはならないのだろう」という葛藤もあり、表現者として信じる創作と、世の中を喜ばせるためのエンタメとの狭間で様々なことを考えたことが今作のきっかけになりました。
――過去作でも丁寧に描かれてきた被害や加害、表現の葛藤といったテーマにも通じるお話です
言葉だけだとシリアスな作品に思われるかもしれないのですが、小西さんの明るい音楽の力もお借りしながら、ユーモアも交え、笑っていただける作品にしたいと思っています。僕自身にも心当たりがあるのですが、悲惨な出来事を前にした時って、笑うしかなかったりするんですよね。だから「この話でどこまで笑えるのだろう」と思いながら作っていますし、お客さんにも「どこまで笑っていいのかな」と思ってもらいつつ、“それでもどうしても笑ってしまう瞬間”を追求したいと思っています。
――最後に3都市ツアーへの意気込みをお聞かせください
昨年のツアー公演を経て、「劇場だけでなく、いろんな場所や空間に持ち運べる作品を作りたい」という気持ちがより強くなりました。ユーロライブは170席程の劇場で、岐阜のこどものほんやピースランドは満席でも20人に満たない空間、さらに豊岡演劇祭では廃校になった校舎や漁港の神社といった野外での公演になります。どこで観るかによって手触りが変わる。そんな演劇体験も本作の魅力だと思っています。

インタビュー・文/丘田ミイ子
Photo/村上宗一郎
【プチ質問】Q:手土産を選ぶポイントは?
A:最近はお菓子かお酒ですね。その中でもピカピカにひかっているものを選ぶ傾向があります。家族に買う時も劇場に差し入れする時も、ちょっと光るもの、視覚的に惹かれるものを選びます。日本酒でも「金賞受賞」みたいなものばかり買っています。お菓子は視覚的なもの以外では自分が食べて美味しかったものも買いますね。選ぶのはお酒に合うものなので、お菓子もしょっぱいものが多いですね。子どもも好きだけど、お酒のつまみにもなるようなお菓子を選びますね。
※構成/月刊ローチケ編集部 6月15日号より転載
※写真は誌面と異なります

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【プロフィール】
池田亮
■イケダ リョウ
2015年に「ゆうめい」を結成。劇作家、演出家、脚本家、造形作家と幅広く活躍する。2024年に『ハートランド』で岸田國士戯曲賞を受賞。
