ミュージカル「スリル・ミー」日本初演から10年の進化を遂げていよいよ開幕

栗山民也演出、男2人とピアノ1台のみで繰り広げられる緊迫の100分間が東京芸術劇場シアターウエストにて開幕。

 

1920年代に世界中を震撼させたアメリカ・シカゴで実際に起きた事件を基に作られた究極の心理劇ミュージカルは、2005年、ニューヨーク、オフ・ブロードウェイで開幕以降、世界中で上演され続けている。
日本では2011年に100名の小劇場からスタートし、私と彼、男二人だけの空間を覗き見るような劇場体験は、一度観たら虜になる衝撃のミュージカルとして、これまでに6度の上演を重ね、日本初演から10年目の今年、更なる進化を遂げて開幕した。
出演は、日本初演から10年を記念して9年ぶりのペア復活となる、成熟した表現でありながら醸し出される純粋さが魅力の田代万里生(私)と新納慎也(彼)。卓越した技術と人間の深層心理までをも掘り起こすような、2018年公演から引き続きの出演となる成河(私)と福士誠治(彼)。そして、演出の栗山民也によってオーディションで選ばれた、若さ故の脆さ、危うさ、未知なる進化を予感させる松岡広大(私)と山﨑大輝(彼)で上演。
それぞれのペアが魅せる二人の世界、この二人が求めるものは何なのか。台詞のように語られる歌とピアノの旋律と共に、3組6名が創り出す全く異なる「スリル・ミー」を是非体感して欲しい。

開幕にあたり、演出の栗山民也、そして、キャスト6名からコメントが到着。

演出 栗山民也

あぁ、10年続いたんだ

老朽化で取り壊しになる寸前の麻布にあった「アトリエ・フォンテーヌ」、その100席ほどの何もない空間が、私たちの初演の劇場でした。ピアノが一台、とにかく二人の俳優とピアノを弾く音楽家だけで、とても豊かでとても危険な世界が創れると勇んではじめた作品です。あっという間に10年が経ちました。
そして本日、3組それぞれの公演の初日が無事開きました。3組といっても、どこか違った3様のドラマですが。
舞台ってライブだから何が起こるかわからないね、とはよく言われることですが、その時その場所に居合わせたことの奇跡だけを信じるしかありません。それがなんと心躍ることか。人と人が出会い、ぶつかることで起こるその時だけのスリルを、全身で体験してください。このコロナでの荒涼とした状況が続く中、人間であることを忘れないために、私たちの中に住む無数の感情だけはしっかりと動かしましょう。

栗山民也

田代万里生

個人的には10年前の初演から、劇中の台詞「5度目の正直」ならぬ「5度目の出演」となります。作品のモチーフは今から97年前の1924年にシカゴで起きた事件。終身刑プラス99年の懲役と判決された2人ですが、もうすぐ本当に99年を迎えるということもあり、演じていて今回はよりリアルに感じています。再び「私」として舞台に立てること、そして栗山民也さんの演出のもと、超人・新納慎也さんと再びペアを組める奇跡に感謝して、皆様に最高の『スリル・ミー』をお届けします。

新納慎也

9年ぶりの僕と万里生のペア、そして日本初演10周年を迎える記念すべき『スリル・ミー』がとうとう開幕しました!まさか4回目の『スリル・ミー』が出来るなんて思っていなかったので本当にありがたく思っています。しかも相手役が初演と変わらずに万里生で、あの時を再現するかのように、そしてあの時を超えるかのように二人で日々切磋琢磨して頑張っています。
僕ら二人が『スリル・ミー』を演じていることを感慨深く思って観てくださるお客様も多いと思いますが、純度100%、最初に出来た純正ver.1.0.0 が僕らの『スリル・ミー』です。その後色々な方が『スリル・ミー』を演じ、ペアによって見え方違ったり、別作品に見えたりすることもこの作品の魅力ではあるのですが、これが純正品だと誇りを持っています。10年前、稽古の始めに演出 栗山民也さんが開口一番でおっしゃった「これは壮大なる愛の物語だ」という言葉を大切に、10年経っても追及し続けています。この作品ほど劇場で観られて良かったと思える作品はないと思いますので、ぜひ劇場でしか体験出来ない緊迫感を味わいに来てください。

成河

待ちに待ったこの日、とうとう開幕しました。2年前に演じた時とは情勢も違いますが、お客様とどのような時間が共有できるのだろうとすごく前向きにわくわくしています。劇場内しっかり対策しているので感染症対策的には安全ですが、演劇的にはとても危険な場所を用意しましたので、人間が危険に身を置く、ということをお客様も一緒に体験していきましょう。

福士誠治

2年前演じた『スリル・ミー』。今回また新しい『スリル・ミー』が出来上がったと感じております。成河くんという「戦友」とまた出会えたことはとても嬉しく財産です。3組の色々な『スリル・ミー』が繰り広げられますが、まずは自分たちの世界を作って、演劇の楽しさやお客様との一体感、『スリル・ミー』ならではの緊張感を味わっていただけたら嬉しいなと思います。

松岡広大

初日、無事に開幕しました。「私」役の松岡広大です。個人的には本当に色々とまだまだだな、と思うこともありますが、本日出来る限りのことをお客様に向けて、そして「彼」に向けて存分に演じられたと思います。これからも慢心せず、邁進していきたいと思いますので、どうかどのペアも愛していただけたらと思います。

山崎大輝

無事初日を終えることが出来まして、今までで一番緊張する作品でした。今回、やれる限りのことは出来ましたが、もっと詰めていくことはたくさんあるので、今作ったものをさらに突き詰めていきたいと思います。ここから約1ヶ月以上ありますが、どのような風に僕たちのペアが進んでいくのか、ぜひ皆さま気にしてくださると嬉しいなと思います。

撮影:田中亜紀