昨年10月に上演した「The last night recipe」が第65回岸田國士戯曲賞にノミネート、また今年4月に上演した「逢いにいくの、雨だけど」が第29回読売演劇大賞上半期作品賞ベスト5に選出されるなど、今、ますます勢いを増すiakuの最新作を10月に東京、11月に大阪で上演いたします。
今回は、俳優、コメディアンとして活躍するモロ師岡、映画やドラマで注目される初舞台の杉田雷麟をW主演に迎え、元・噺家の父とその息子の関係を描く家族の物語をお送りします。
【本企画について】
iakuは2012年に劇作家の横山拓也が大阪で立ち上げた演劇ユニットです。緻密な会話が螺旋階段を上がるようにじっくりと層を重ね、いつの間にか登場人物たちの葛藤に立ち会っているような感覚に陥る対話中心の劇を発表しています。主に関西弁を用いたセリフ劇を多くつくっていますが、今回はいわゆる標準語でのやりとりで紡ぎます。
元噺家のダメ親父役にベテラン俳優・モロ師岡さん、その息子役に今回が初舞台の新進俳優・杉田雷麟さんを迎えます。父と息子のドラマを中心に、現代社会で起こり得る、あまたの問題を抱えたリアルな家族関係を描きます。
他に、劇団俳優座に書き下ろした横山作品に2度出演の清水直子さん、iaku常連の橋爪未萠里さん、iaku立ち上げ前から横山が熱視線を送っていたザンヨウコさん、劇作家・演出家としての高い評価とともに俳優としても魅力溢れる平塚直隆さん、過去に何度も出演依頼をしてきてようやく出演が叶った長橋遼也さん、今年2月のENBUゼミナールの公演(横山演出)で見出した鈴木こころさんが出演。iakuならではと言えるこのキャストの並び。活躍のフィールドも、活動地域も、キャリアもバラバラ。ですが、作品に集い、作品に貢献してくれるメンバーが揃ったと思っています。
会場は、いつかここでやれたらと思っていた憧れのシアタートラム(東京)と、いつかiakuとしてここに戻って来られたらと思っていたABCホール(大阪)。規模的なチャレンジもありますが、この数年培ってきた中劇場での上演の集大成として取り組みます。
【あらすじ】
二間続きの向こうの部屋から、くぐもった声が襖越しに聞こえてくる。何度もつまずきながら、小さくボソボソ繰り返される。一人になれない狭い市営団地。布団にもぐって耳を塞ぐ。たったひとつのネタすらまともに覚えられない、噺家くずれのダメ親父。
誰もが希望を持てた1980年代を謳歌しながら、自らの夢を雑に扱った父と、苦難の2000年代に生まれ、シビアな毎日で夢を見る暇もなかった息子。反目してきた親子が2020年代を迎え、大きく変化した家族の形を改めて見つめる。