――『DEVIL』日本公演への出演オファーがあった時は、どんなお気持ちでしたか。
日本では、中川晃教さんやほかの日本の俳優さんたちと一緒にコンサートを(『ニューイヤー・ミュージカル・コンサート 2021』2021年)一度、そして『ジーザス・クライスト=スーパースター in コンサート』(2021年)でも行きました。つまり今まで日本ではコンサートしかやっていないんです、『ジーザス~』はミュージカル半分、コンサート半分といったタイプのショーでしたので。ですので今回、一つのミュージカル作品を皆さんの前でご披露できることが嬉しく、楽しみに思いました。韓国生まれの作品を、日本の地で公演できることも楽しみ。『DEVIL』はとてもユニークなミュージカルであり、正直なところ、難解でもあります。でも日本のお客さまは非常に洗練されてます。だから『DEVIL』についても深く理解してくださるだろうし、この難しい作品を愛してくださるのではないかと期待しています。
――マイケルさんは『DEVIL』には韓国の初演から関わっていらっしゃいます。Xのナンバーはマイケルさんの声質にあわせて作られた、というお話もありますが、この作品との関わりは?
はい、初演に出演していますが、実は出演経験はそれだけで、今回が10年ぶりです。
この話は『ファウスト』を下敷きにした物語ですが、根本にあるのは、ひとりの人物がどう自分の人生を設計していくのか……環境や様々なものに良い影響、悪い影響を受ける中でどう自分の人生を探していくのか、という話だと思っています。
――ちなみに初演でマイケルさんが演じた“X”というキャラクターが、その後“X-White”と“X-Black”に分かれています。新しくなったバージョンはご覧になっていますか?
まだなんです(笑)。なので新しい気持ちで今回挑むことができます。
――現時点でX-Whiteはどういう存在だと捉えていますか? また初演で演じたXとは役作りの上でどう変わってきそうでしょうか。
初演は、今のX-WhiteとX-Blackの要素を一人で演じました。それは、人間の本質には善いものも善くないもの、両面があるということでそこまで難しくはありませんでした。今回はX-Whiteのみ。X-Whiteはポジティブな存在ですが、どの面を伝えていけばいいのかすごく悩んでいます。現状で思うのは「希望」。先日まで僕は『ジーザス・クライスト=スーパースター』に出演していたこともあり、そのジーザスを想像しています。ジーザスは善人ですので。ビジュアル撮影もその気持ちで挑みました。
――『ジーザス・クライスト=スーパースター』のジーザス役もとても印象的でした。存在感が違うというか、説得力があるというか……。マイケルさんのその品の良さはどこからきているのか気になります。
ありがとうございます(笑)。僕の本質に「人を愛する」ということがあると思うんです。いつも、僕をとりまくスタッフさん、共演する俳優さんを尊敬している。その感謝の念があるからでしょうか。今回も大好きな晃教さんや、信頼している韓国の俳優仲間など、愛する人たちがまわりにたくさんいるので、自然とX-Whiteとしての演技ができるんじゃないかなと思っています。
――“X”を演じる3人の俳優さんたちに関しても教えてください。中川晃教さん、ハン・ジサンさん、イ・チュンジュさん、全員と共演経験があるのはマイケルさんだけです。
晃教さんはエナジーに溢れていて、ステージに立った瞬間それが伝わってくる方。舞台に立つことが彼の天性なんだろうなと感じる素晴らしい俳優さんです。僕も彼のエナジーにとても影響を受けます。
ジサンさんは僕が2013年に韓国にきた時から共演をしている方。ほかの俳優さんももちろんそうなのですが、僕は特にジサンさんを信頼しています。彼は何かキャラクターを演じる時、キャラクターそのものになる、そこが素敵です。韓国でトップのミュージカル俳優の一人だと思っています。
チュンジュさんと初めて共演したのは約10年前、そのころはまだ幼かった(笑)。僕に対して憧れを抱いて、頑張っていた姿を覚えています。当時は“いちミュージカル俳優”だったのが、今は“イ・チュンジュ”という俳優としての魅力を発揮されています。その成長を見れたことも嬉しいし、これからは僕の方が彼に教わることもたくさんあると思います。
――改めて、『DEVIL』日本公演への期待をお願いします。
僕は今回、X-Whiteを英語で演じます。基本的に英語で準備をするので、キャラクターに対しさらに深く理解し、挑むことができると思っています。また、一緒に舞台に立つ皆さんは違う言語(日本語)で演じる。異なる二つの言語でやりとりすることで、演劇的に象徴的なものも生まれてくると思うので、そこも楽しみですし、稽古場で様々な言語が飛び交い、様々な意見が出てくるであろうことに対しても楽しみにしています。
――作品とは切り離し、来日することについて、楽しみにしていることは。
韓国にも、日本のファンの方々が、わざわざ海を越えて観にきてくだいます。そういう熱心なファンがいる日本で、観客の皆さんのエナジーを感じられることを楽しみにしています。また、初めて日本に行った2021年はコロナ禍の真っ最中で、劇場で仕事をする以外に何もできなかったんです。その時はまだ、日本を少し(精神的に)遠く感じていました。今年はそろそろ感染状況も落ち着いてきて、もう少し皆さんを近く感じることができそうです。お会いできるのを楽しみにしています。
取材・文/平野祥恵