作は、世界的に評価される村上春樹の傑作長編『ねじまき鳥クロニクル』を、イスラエルの奇才 インバル・ピントと気鋭のアミール・クリガーの演出、アミールと藤田貴大(マームとジプシー)の脚本で舞台化し、音楽を大友良英が手掛けた創造性豊かな意欲作。2020年の初演時に、公演期間の短縮を余儀なくされた伝説のステージが、全編のリクリエイションを経て本日7日(火)に遂に開幕となる。
撮影:田中亜紀
演じる・歌う・踊る――
トップクリエイターたちの手で舞台化された村上春樹の代表作がついに再演!
主演を務めるのは成河と渡辺大知の二人。Wキャストではなく、二人で岡田トオルという人間の多面性を巧みに表現する。主に渡辺が現実世界のトオルを、成河が潜在意識のトオルを演じる。
”死”への興味を持つ風変わりな女子高生・笠原メイは門脇麦が演じ、観客を村上ワールドへと誘う。
圧倒的な悪として存在する綿谷ノボル役は、初演で衝撃的なダンスシーンを見せた大貫勇輔と、バレエダンサーとして世界的に活躍し現在は俳優としても多くの舞台に出演する首藤康之がダブルキャストで演じる。
トオルを不思議な世界へ導く加納マルタ・クレタ姉妹役は、昨年退団した宝塚歌劇団で娘役として歌・ダンス・芝居の技量が高く評価された音くり寿が新たに挑む。
さらに初演でこの壮大な物語をクリエイターと共に創り上げた松岡広大、成田亜佑美、さとうこうじ、吹越満、銀粉蝶が再演でも演じ・歌い・踊り、表現していく。
またインバル・ピントによる唯一無二の振付を、加賀谷一肇、川合ロン、東海林靖志、鈴木美奈子、藤村港平、皆川まゆむ、陸、渡辺はるか、8名の表現力豊かなコンテンポラリーダンサーが魅せ、大友良英、イトケン、江川良子の3名による生演奏が舞台をより鮮明に彩る。
上演時間は約3時間前後(途中15分休憩あり)を予定。
スタッフコメント
■インバル・ピント(演出・振付・美術)、アミール・クリガー(脚本・演出)
舞台芸術は今起きていて、絶えず変化します。
私たちの創作で重要なのは、「動き」は「時間」の具現化であるということです。
初演から約4年を経て、この作品は、携わる人たち全員のこの数年間の人生を映し出す鏡となりました。そして、独自の命を宿した作品を通して、私たちは新たな視点を持つことができました。
村上春樹の世界には多くの秘密と鍵が暗号化されています。村上作品の、豊かで無限の宇宙を旅できることに感謝します。
登場人物の一人が、ある場所を「あなたが今いる場所」と呼びます。
この場所を皆さんと共有できることを嬉しく思います。
それが再び、時間の流れの中へと消えてしまう前に。
出演者コメント
■成河(岡田トオル役)
初演時から、まだ誰も踏んでいない新雪の上を歩くような、ルールのない、不安と興奮が入り混じった創作を続けてきました。産みの苦しみを経て出来上がった初演という入れ物に、今回は丁寧に中身を詰めていく作業が出来ました。そうした中で、誰もが主体的に発言し、作品の隅々まで共有する意欲を持つ、そんな稀有で美しいカンパニーに成長出来た事が、今は何よりの誇りです。千秋楽までの1分1秒、この幸せを余す所なく全身全霊で感じたいと思います。
今回は手軽に観れる料金設定の努力もされていて、(東京芸術劇場の芸術監督である)野田秀樹さんの発案で¥1,000円で観られる高校生チケット(売り切れ)があったり、¥6,500のU-25チケットもあります。U25チケットを買える日はまだまだあります。一人でも多くの学生、若者のみなさんが私たちの『ねじまき鳥クロニクル』と出会ってくれることを、心から願っています。玄人演劇ファンの皆様におかれましては、是非このU25チケットを広めて頂き、一緒にこの畑を耕す幸せを共有出来たらと思います。品質は保証します。
■渡辺大知(岡田トオル役)
僕にとってインバルの舞台は言葉の壁を越えて切実で、舞台そのものに血が通っているみたいに生き生きとして見えます。初演の時、ダンスも音楽劇も初めての自分でも、その世界にずっとのめり込んでいたくなるくらい、たくさんの刺激をいただきました。稽古場がとにかく楽しくて、演者、スタッフさん、皆さんのアイディアが塊になっていく過程は本当に美しい作業です。自分もどうにかその中で自分なりにもがいていましたが、そのもがきこそが幸せな時間だったように感じます。
今回、こうして再演ができることを心から嬉しく思っております。再演でさらに深く、パワーアップしている自信があるので、ぜひ楽しんでいただき、たくさん考えていただけたら嬉しく思います。
■門脇 麦(笠原メイ役)
再演の素晴らしさを痛感する日々です。作品への解釈と精度の深まりもそうですし、この3年間で変わったこと。変わってしまったもの。でも変わらないもの。そんなものを感じながら稽古に臨みました。
こんな面白い舞台なかなかないのではないでしょうか。私もお客さんとしてこの舞台を観たかった!それだけが残念です。
インバルの溢れる世界観を皆さんにぜひ見てもらいたいです。お待ちしております。
取材会フォトセッション