ザ・プレイボーイズ 『ハロー、妖怪探偵社』|久保乃々花、田中祐希、 濱尾咲綺インタビュー

(左から、田中祐希、久保乃々花、濱尾咲綺)
撮影/堀山俊紀

善雄善雄が主催するザ・プレイボーイズの新作公演「ハロー、妖怪探偵社」が11月22日(水)より上演される。1年ぶりとなる本公演は、小さな探偵社を舞台に繰り広げるSF青春ミステリーコメディとなっている。本作に出演する濱尾咲綺、田中祐希、久保乃々花の3人に、作品に臨む想いなど話を聞いた。

――まずはご出演にあたり、どんなお気持ちか教えてください

濱尾 私はザ・プレイボーイズさんの作品は2回目の出演になるんですが、また呼んでいただけてとても嬉しかったです。前回もすごく楽しくて、善雄さんのお話もすごく面白いので、喜びが大きかったです。

田中 僕も嬉しかったです!善雄さんとは2014年にワークショップで知り合いました。それ以来、なかなかご一緒できる機会がなかったのですが、今年の夏にワークショップに誘っていただいたんですね。お誘いいただけたことが嬉しかったし、ワークショップの内容もすごく楽しくて。そしたら、その後に出演のオファーをいただけて、ワークショップで体験した面白さの先にあるものを公演でやれるのかなと思ってワクワクしました。

久保 私にとっては初めての舞台なんです。なので、嬉しい気持ちと不安な気持ちがずっとぐるぐる巡っています。舞台はいずれ絶対に挑戦したいと思っていたので、こんな機会をいただけて嬉しいです。ドラマなどでワンシーンずつお芝居することはあったんですけど、長時間ずっとお芝居することってドラマや映画ではあまりないので、そういうところにはちょっと不安がありました。声の張り方も違うのかな、とか…。でも、2年ほどまえにお芝居を始めて、友人の舞台も見たりしていると、生で感じるものってやっぱり違うと思っていたので、チャレンジしたいと思っていたんです。

久保乃々花

――役どころについて教えてください

久保 私はヒロインの一花ちゃんを演じさせていただきます。ある女の子と初めて人として関わる機会ができて、友人としても関われると思っていたんですけど、ツンデレと気の強さが邪魔をしちゃって思っていることを伝えられないような女の子です。一花ちゃんほどじゃないけど、共感できる部分もあるんですよね。誰しもちょっと隠したいことや言いづらいこと、見栄を張ってしまうことってありますよね。そういう共感できる部分を大きくして、一花として演じられたらと思っています。ちょっとツンすぎるんですけどね(笑)

田中 僕は小豆田という探偵社に入り浸っている何人かのうちの1人で、パソコンが得意だったり、知識が豊富だったりする役です。探偵社の身内の中では発言できるんですが、初対面の人や女性に対してはコミュニケーションが極端に苦手という困ったところがあります。人とうまく接することができないところや、そんな自分を変えたいと思っているけど今の居心地の良さに甘んじているようなところは、自分とも似ている感じがします。ただ、自分と離れているところも結構あるので、そこをどうやって近づけていけばいいかを稽古で探っています。

濱尾 私は雪ちゃんという女の子で、一花ちゃんの友達ですね。まだ掴み切れていないところはあるのですが、一花ちゃんとは正反対で、純粋で素直な女の子です。逆にいい人過ぎて損してしまうような子ですね。でも、素直ではあるのですが、自分の思っている気持ちを表現できないところもあって、そこは私も共感しています。言う前に考えすぎてしまって、結局言えなかったり、嫌われるのが怖くてみんなに優しくしてしまったり。そういうことって、私じゃなくても誰でもちょっとはあるんじゃないかな。嫌われるのが怖いから黙っておこう、みたいな。そういうところを膨らませて、とにかく純粋さを出していきたいと思います。

濱尾咲綺

――お話の印象についてお聞かせください

田中 まず、すごくしっかりとしたストーリーで、展開がきれいだと思いました。そして、何気ない台詞のやり取りの中に隠れた意味があって奥深いです。話の本筋の間に挟まれるその場を盛り上げたりする台詞にも、実はその言葉の裏に本人の思っていることだったり、フックになっていたりすることがあって、本当にすごく魅力的な本だなと感じています。

久保 ストーリーのわかりやすさもすごいんですけど、よく読んでいくと1人ずつにフォーカスされたセリフや役の名前とかにすごく善雄さんのこだわりを感じるんです。キャストが8人いるんですけど、誰が欠けてもいけない。1人ずつに物語があって、この人は誰?何してるの?って言う人がいないんですよ。そこがすごく面白いと思っています。

濱尾 まず、妖怪っていうのが新しいですね!そこに探偵が組み合わさることにワクワクしていたんですけど、読み進めていると、妖怪自身も妖怪のつもりじゃなかった、普通に生きていただけだったんじゃないか、という視点が…差別とかにも関わってくるように見えて。今、普通に生きている人もちょっとした特徴が100年後には”妖怪”になっているのかもしれない、と思ったりもしました。そういう考え方もあるんだ、と。

田中祐希

――脚本・演出の善雄善雄さんの印象についてお聞かせください

久保 初めてお会いしたときは、ピシッとして入っていらして脚本の説明をしてくださったり、すごく真面目な方という印象でした。でも、稽古場でお会いすると、すごくお優しくて、フニャッとした顔で笑う方なんですよね。そこはすごくギャップを感じました。初日も、稽古を始めます!みたいな感じじゃなく、ゲームしよっか、って感じで。自作のカードゲームを用意していらして、場を盛り上げてくださったんです。第一印象とはかなりのギャップでした(笑)。すごく楽しい方です。

田中 本当にお優しくて、柔らかい方だと思います。作りたいものにしっかりと芯があって、台本について思っていることをちゃんと話してくださいます。そして、僕らの言葉もすごく汲み取ろうとしてくれるんです。ちなみに、共演の村田和明さんは、善雄さんと高校の同級生なんですよ。このお二人のやりとりは長年の信頼関係の上で夫婦喧嘩のように思いをぶつけ合っているような感じがして、そんなお二人が一緒に演劇をしているってとても素敵だなと思います。

久保 すっごい面白いんですよ、2人のやりとりが。笑っちゃダメなんですけど、2人のしゃべり方がすごくツボで…。なんというか、癖が強すぎてコントみたいな。そういうやりとりを見ていると、平和だなって思います。

田中 そういう輪にもちょっと近づいていきたい気持ちはありますね。

濱尾 善雄さんはすごく人の気持ちがわかっていらっしゃるんです。この人はここが気になっているというのを、きっと善雄さんは分かっていらっしゃる。ゲームとかを考えてやってくださっているのも、面白さを混ぜながらも真剣に稽古をやる時は考えて、みんなで一緒に作りあげていく雰囲気を作ってくださるんです。すごく素敵なところだと思います!

――お話の舞台となる探偵社は、本当に困っている人しかたどり着けないような場所になっているそうですが、みなさんは困ったことや悩み事が起こってしまったときにどのように対処されますか?

久保 私はなるべくその日のうちに解消したいタイプですね。引きずってしまうのが嫌で…ケンカとかはあまりしないですけど、意見が食い違ってしまったときも、絶対にその日のうちに仲直りしたいです。気持ちの面で何か残っていても、ガーッと悩んで、お風呂入ってスッキリさせて、キャンドルとか焚いて、思っていることを全部考えたら、もうOK、って感じです。リラックススペースはお風呂ですね。割とこの業界に入ってから、そうするのを意識するようにしています。実は、落ち込んでしまうとずっと落ち込んじゃうタイプだったので…リラックスできる場所を作って、気持ちをその日のうちに整えてしまうように意識しています。

田中 僕は悩みからは逃げがちです。2歳の甥っ子がいるんですけど、嫌なことがあると、ずっと目をつぶっているんですよ。ジュースをこぼして怒られる!とか思ったら、目をつぶってじっと直立したまま動かない。自分が目をつぶっていれば、周りの人も目の前のことが見えないと思っているんだと思います。妹や母はそれを見てすごい笑っていたんですけど、僕は自分も同じだ…と思って笑えなかったんですよね。悩み事から目を背けてどうにかやり過ごそうとしてしまいます。

濱尾 私はすごく悩みやすくて、これは後悔するなとか、こうすればよかったとか考えちゃうタイプなんです。そういう時は、お母さんにしゃべったり、妹としゃべったり、とにかく話して発散して忘れるようにしています。起こってしまったことはどうしようもないし、終わったことだし、って思うようにしています。一緒に住んでいるので、何気ない会話の中でいろいろお互いに話している感じですね。

――それぞれに悩みへの向き合い方があるんですね。最後に、今回の作品を楽しみにしていらっしゃる方々にメッセージをお願いします

濱尾 本当にキャストのみなさんが素敵な方ばかりで、善雄さんの面白い本、心強いスタッフの方々、信頼できるみなさんと作るものは、絶対に面白いものになると思っています。それぞれのキャラクターが違っていて、飽きることの無い作品になっていると思うので、何度も観に来てくださったら嬉しいです!

田中 キャストのみなさんが本当に素敵で、キャスト同士の掛け合いがすごく面白いです!「ハロー、妖怪探偵社」というタイトルにも色んな意味があり、見に来て下さる方がこのタイトルを知った時から物語が始まっているように思います。お話にどのように関わってくるかそこにも、ぜひご注目下さい。暗いニュースがたくさんありますが、下北沢でこの舞台を観て、帰りに美味しいものを食べて、少しでもハッピーになってもらえるように、元々ハッピーな方はもっとハッピーになってもらえるように頑張ります!

久保 私にとっては初めての舞台で、舞台だからこそのいろいろな学びもある機会になっています。善雄さんと出会えて、すごく面白い台本と出会えて、みなさんとも出会えて、この「ハロー、妖怪探偵社」という物語が1人1人に共感していただける内容になっていると思っています。ぜひ、みなさんにお越しいただきたいです!

(左から、田中祐希、久保乃々花、濱尾咲綺)

撮影/堀山俊紀
インタビュー/宮崎新之