ミュージカル『デパート!』太田基裕×岡田亮輔×原田優一(演出)インタビュー

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三越劇場創立90周年記念
コメディタッチのオリジナルミュージカルで
太田基裕はヘタレ(!?)御曹司、岡田亮輔はチャラ警備員役に!

日本の老舗百貨店、日本橋三越本店の6階にある三越劇場。創立90周年を迎えた今年、演出の原田優一、脚本の登米裕一、音楽の伊藤靖浩ら30代の新進若手クリエーターを集結して新作オリジナルミュージカルを生演奏にて上演する。タイトルは『デパート!』。デパートの中でデパートの群像劇を見せるという“デパート・イン・デパート”のド直球な構図が大注目。出演の太田基裕と岡田亮輔に原田を交えたトリオインタビューが叶った。場所は三越劇場の中。大理石やステンドグラスといった豪華な装飾に薫る威厳と格式、客席と舞台がかなり近いキャパ514の親密な濃厚空間に、「演じる前に来れてよかった」と岡田、「初めて来ましたがかなり感動」と太田。演じる役者もワクワクする劇場内でのインタビューには新発見もあり!

 

――オリジナル作品ということで、まず概要・構想を教えてください

原田「デパートの中でやるデパート、“デパート・イン・デパート”のミュージカルです。従業員やお客さんがデパートの中で繰り広げるオムニバス風の群像劇を目指していて、いろいろな場所で起きるいろいろなことが最終的に一つにつながっていけばいいなと。ライトタッチのコメディで、さまざまなジャンルの音楽もふんだんに取り入れます。名作ミュージカル風な曲調を入れてみたり、新しい曲調にしてみたりの挑戦も構想中。豪華なパフォーマーの方々に集まっていただいたので、それぞれの腕を発揮してもらえればいいですね」

――“デパート・イン・デパート”とはストレートでおもしろいですね

原田「企画段階で三越さんと打ち合わせる中で、実話エピソードなどを伺いまして脚本や演出に活かしました。聞いていると本当におもしろいんですよ。デパートってただ買い物に来る場所じゃない、いろいろな人がいろいろな目的で来る場所なんだなと。従業員さんもそう。職種も違うし、売っているものも違うし、さまざまな立場で働いています。実話をそのままやるわけじゃないけれど、ヒントは多分にありました。デパートは、いろんな方の想いとドラマがある場所なんですよ」

――デパートや百貨店に対する個人的なイメージは?

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原田「埼玉県川越市の出身ですが川越の百貨店が日本一大きいと思っていました。親と一緒に行って、屋上で遊んだり、ごはんを食べたり、買い物したり。僕の中では、一日過ごせる総合エンターテインメントのイメージで、ザ・デパートの体験をしているので思い入れはありますね」

太田「両親が行きます。親=デパート、みたいな。格式が高く、大人になったらいく場所、あるいは自分が親になったら子どもを連れていく場所で、普段はなじみがないですが、この作品のPVを撮影する時、親に連れられてではなく、初めて自分で来た!という感じでした。素敵な建物でびっくりしたし、上に劇場があるとも知らなくて。今日初めて劇場に入りましたが、かなり感動しています。もしかしたら一番好きな劇場になるかも。この世界観、なんというか、包容力がありますよね。やっぱり歴史があるからかな」

岡田「ブロードウェイとか、こういう雰囲気じゃないですか?」

原田「似ているよね」

岡田「ですよね。装飾とか、照明とか。もっくん(太田)が言うように、僕もすごく好きな劇場です。芝居を見に来たことはあるけれど、出るのは初めてなんですよ。さっき舞台に上がってみましたが、下から見ると広く感じたのに、上に立つと不思議で、意外とコンパクトなんですね。客席も近いし、暗転から照明がついた時にどんな景色が見えるのか……、今からワクワクします。で、僕はわりとデパートに行くんです。子どもが一歳半なんですが、生まれた時、直接肌に触れる肌着はオーガニック100%がいいんじゃないかって売っている店を検索すると、取扱店にはやっぱりデパートが出てきた。いい物はデパートなんだなって思いました。それなりのお値段はするけど、物に間違いがない。信頼性が高いんです」

――信頼性の高い場所で作るお芝居だから、その質も高く信頼性のあるものにする、と。

原田「それ、間違いないです(笑)。脚本は登米裕一さん。彼の本や演出で僕は役者としても出た経験がありますが、人間の関係性や会話を本当におもしろく書かれる方なんですね。音楽にのせる時にその質感を壊さないようにしたい。デパートでの人間関係をコメディタッチで描きますが、ただのドタバタではない、人間関係を大事にした物語になります」

――太田さん、脚本の感想や、ご自分の役についてはどうですか?

太田「僕の役名はモリスで、デパートの社長の息子、御曹司です。モリスは未熟な若者で、今回の僕も大先輩に囲まれ、間違いなく未熟者なので、役と自分をいい意味でリンクさせながら、役も自分も作品の中で成長出来たらいいなと。読んでいてすごく気持ちのいい台本でした。ふと考えさせられたり、ポッと心が温かくなったり。共感していただける描写もたくさんあるので、素敵に演じられたらいいなと思います」

――御曹司ということは、事件のタネになることも?

太田「それもありますし、父親からのプレッシャーや、周囲に御曹司と見られていること、そういう中でどうしたらいいかわからなくなっちゃうとか。でも、そういうことって普通でもあると思うし、自分に重ねて繊細に演じられればと思っていて」

――岡田さんは、そこにどう絡んでいきますか?

岡田「僕の役はイギーという名前で、役者志望の警備員。アルバイトでたまたま派遣されてデパートに来ているんです。もっくんにも絡んでいくけど、立場的に“アンチ”なんですよ」

原田「デパートなんていらないじゃん、インターネットでいいじゃん、という現代人ですね」

 

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岡田「だから、本気でがんばっている人、働いている人をハスに見ている感じ。台本にしっかり描かれているので台本通りに演じれば色は出ると思いますが、そこからイギーがどう成長するかを演じたいと思っています。アンチだったのが、なにを気づかされ、どう変わるのか。僕の友人が一人、百貨店で働いていると最近知って、いまってどうなの?といろいろ聞いてみました。お客さんは外国人が多く、若い人もいなくはないけど親と一緒がほとんどで、自分からデパートにくる若者はほとんどいないとか。ヒントになりますよね。そういう目線をキャッチできたら、イギー役もおもしろくできるんじゃないかと」

原田「ものすごくチャラチャラした警備員です」

岡田「マジですか(笑)」

原田「だから岡田さんに頼んだ、と(笑)。キャラクターそれぞれが事件の火種を持っていて、燃え上がるか、くすぶるか。岡田さんは結構な火種を持っている役ですよ」

――太田さんのモリスが火消しに走る?

原田「そう、火消し係、かな。だけど、若いので消しきれない」

岡田「本を読んでいると、もっくんにすごいぴったりなんですよ」

太田「未熟感が(笑)」

岡田「もっくんって、本番前に、どうしようどうしよう、大丈夫かな、トイレいったほうがいいですかって言うような人で」

原田「ええー、ぜんぜん見えない」

太田「気が小さいんです……(ボソリ)」

岡田「そういうところ、ほんとモリスっぽいの。絶対におもしろいですよ。台本を読みながらもっくんがセリフ言うの想像できたから」

太田「ぴったりです。未熟なんで」

岡田「じゃなくて(笑)、性格が。めちゃいいヤツってところ」

太田「余計なこと悩んだりするし」

原田「本当?いや、器用かと思った。なんでもそつなくこなすイメージだったから、この役本当に合ってるかなあと思ったけど、合ってるんだ、よかった」

太田「出来のいい従業員だったらぜんぜんできなかったです」

岡田「出来るけど、作らなきゃいけなくなるんだよね」

太田「そうですね、無理が生じます。ロボットみたいになる」

原田「そっかあ!本当にナイスキャスティングなんだ、いま確信しました。PVがしっかりしていたし、コメントもちゃんとしていたから、しっかりした役がいいのかなと思ったけど」

太田「ヘタレがいいです。(劇場の立派な)空気も感じると、ここならいいヘタレ感がより出るなと思いました」

原田岡田「(爆笑)」

――太田さんと岡田さんは共演経験ありですが、今回の共演も楽しみですね

岡田「共演は7年前ですね。その時のもっくんは金髪におっぱいの完全に女役で、僕に言い寄る役でした。今回はぜんぜん違うもんね。男として、男同士で初めて共演するので楽しみです」

 

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太田「デビューしてすぐくらいでした。当時はいまより周りが見えていないし、必死な自分だったから、ダメなところもぜんぶ、岡田さんには僕のほぼすべてを見られています。そういう意味では安心だし楽だしで、成長したところを見せたいですけど、甘えられるなと正直思って(笑)」

岡田「そんな風にはぜんぜん思わなかったなあ。緊張してるな、とは思ったけど。緊張でお腹痛いとか言っておもしろいなって。でも、舞台に立ったらまったく違うよね」

太田「やるしかないから。舞台に出たらお腹痛いとか言えないし(苦笑)」

原田「落ち着いて、地に足がついているイメージでしたよ」

太田「必死に着けようとして、足がぷるぷるしているんです」

原田「いろいろわかりました(笑)。これからの演出が無理なくいけます。今回は、このキャラクターだからこの方にお願いしたい、を踏まえてのオファーですから、キャスティングの段階で皆さんの持ち込み材料や道具は揃っているんです。技術はもうわかっているので、あとは、皆さんが出してこられるアイデアや、こういうシーンを作りたいというものを、うまくまとめ、料理していくのが僕の演出の仕事。気持ちのいい方ばかりなんですよ。アイデアはなんでも出してもらって、引っ込めておきますなんてもったいないことはせず、稽古場に恥ずかしいはなし。どんどんぶつけてみましょうと」

岡田「僕は原田さんの演出を2回受けていますが、ほんと、そういう方ですよ。僕たちが自由にやって、原田さんが自由につないでいく感じ。前に別の作品で、こうしてやろうって稽古場で試したことがありますが、やりすぎは“too much”、普通でいいんだよと言われました。特に今回はオリジナルだから、結構な当て書きもしてくれていると思うし、だったら台本にのっかっちゃったほうが得をするなって思うんです」

太田「オリジナルを一から作る芝居に参加するのは初めてなので、すごくエネルギーが必要そうだなと思います。でも、原田さんの話を聞いていると、人間が大好きで、ちゃんと向き合ってこられた方だと思うから。真正面から話してくださるので安心しています」

原田「僕自身が役者でもあって、いろんな演出家さんを経験していますけど、結局、役者のやりやすさ、どうすれば物づくりの環境がうまく働くか、なんです。役者にもスタッフにも言えることですが、大事にしていますね」

――芝居も、劇場空間も、お客様に楽しんでほしいですね

原田「本当にそうですね。外国の劇場みたいで、劇場自体がセットのよう。三越でお買い物して、6階に上がって観劇して、終わって出たら百貨店を見る目がちょっと変わっている、従業員さんを見る目も変わる。そうした雰囲気が味わってもらえたら、“デパート・イン・デパート”の意味がぐっと出るかなと思います」

 

インタビュー・文/丸古玲子

【プロフィール】
太田基裕
■オオタ モトヒロ ‘87年、東京都出身、俳優。2009年、ミュージカル『テニスの王子様』で初舞台。以降『弱虫ペダル』シリーズ、『メサイア』 シリーズ、ミュージカル『刀剣乱舞』、『ジャージー・ボーイズ』など人気作で活躍。11/18には写真集『月刊太田基裕』が発売。

岡田亮輔
■オカダ リョウスケ ‘83年、東京都出身、俳優。劇団四季ミュージカルからブロードウェイミュージカル、『ライブ・スペクタクル NARUTO-ナルトー ~暁の調べ~』『1789 バスティーユの恋人たち』など幅広い舞台で活動。

原田優一
■ハラダ ユウイチ ‘82年、埼玉県出身、俳優、演出家。ミュージカル『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』など有名作に俳優出演する一方で、オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』、ミュージカルレビュー『KAKAI歌会』の演出を手掛ける。

【公演概要】
ミュージカル『デパート!』

日程・会場:
11/1(水) ~ 11/7(火) 東京・三越劇場(日本橋三越本店本館6階)

脚本:登米裕一
演出:原田優一
音楽:伊藤靖浩
出演(五十音順):出雲綾、太田基裕、岡田亮輔、シルビア・グラブ、染谷洸太(※Wキャスト)、橋本真一(※Wキャスト) 、畠中洋、浜畑賢吉、前島亜美、愛加あゆ