
©松木いっか/小学館 ©舞台『日本三國』製作委員会
青輝は、役者冥利に尽きる役です
松木いっか原作による人気漫画『日本三國』が舞台化される。物語の舞台となるのは、文明が崩壊した近未来の日本。大和、武凰、聖夷の三国に分裂した日本を再び統一するべく、主人公・三角青輝が立ち上がる。
「一言で言うと、日本版三国志。もちろんフィクションなんですけど、もしかしたらこの先の未来でこういうルートを辿ることも本当にあるのかもしれないと思わせられるリアルさがあって。原作を読んですぐに『すごい面白い作品に出会ってしまった……!』という衝撃を受けました」
そう語るのは、三角青輝役を演じる橋本祥平。武力ではなく、知識と弁を武器に道を切り開く、新しいタイプの主人公だ。
「役者を続けて十数年になりますが、知識で戦うキャラはあまり演じてこなかったので新鮮です。課題は、膨大な台詞量。舞台なのでテンポ感を意識しつつ、言葉の意味を一つ一つ明確にお客さんに伝えていかなければいけない。きっと今回は、体ではなく脳をいっぱい動かすことになる気がします」
愛する妻と幸せな生活を送っていた青輝。けれど、その幸福はある日突然崩れ去る。国政を牛耳る大和の内務卿・平 殿器に向かって、青輝が弁舌をふるうシーンは、本作の見せ場の一つとなるだろう。
「この作品の中で特に好きな場面です。あのシーンで殿器は『彼の目は私ではなく、遠い先を見とるようやった』と言う。どうしたら相手に訴えかけるようで、さらにその先を見据えている目ができるだろう、というのは今から考えていて。そんな難しさも含め、役者冥利に尽きる役だなと思っています」
豊富な知識を持ちながら、大志とは無縁だった安定志向の青輝の人生を変えたのは「勇気」だった。本作の描く「勇気」に橋本は何を感じただろうか。
「何かを成し遂げるには勇気が必要。じゃあ、勇気ってどうやったら出せるんだろうというと、やっぱり大切な人の存在が大きいんだなと思いました。一人では立ち向かえなくても、大切な人の想いや言葉が背中を押してくれることがある。そこは、今を生きる僕たちにも通じるところなんじゃないかな」
個性的な登場人物も『日本三國』の魅力の一つ。青輝と共に、大和の辺境将軍・龍門光英への仕官を目指す〝ツネちゃんさん〟こと阿佐馬芳経を演じるのは、赤澤 燈だ。
「燈くんの目はブラックホールみたいで、目を合わせて芝居をすると思わず吸い込まれそうになるんです。僕から見ても、燈くんのツネちゃんさんはハマり役だと思います。すごく体のきく役者さんなので、「智」の青輝と「武」のツネちゃんさんという対比もしっかり出していけると思います」
その他のキャストも、実力者が名を連ねた。
「本当に濃い方たちばかりですが、中でも気になるのが平 殿器役の宮下雄也くん。あの殿器のピースが、もう雄也くんにしか見えなくなりました(笑)。しかも雄也くんは原作がめちゃくちゃ大好きなんですよ。きっと気合いを入れて稽古にいらっしゃると思うので、楽しみでありつつ、ちょっと怖くもありますね(笑)。」
原作ファンにとっても「間違いなく面白い作品になる」と橋本は胸を張る。
「ビジュアル撮影のときも、スタッフさんのこだわりがすごくて。青輝は七三分けですが、漫画でも1、2本髪がぴょんっと出てるんですね。その1、2本を再現するのにヘアメイクさんが全力を注いでくださって。そんな細かいところからも、僕たちみんなの本気の想いを感じていただけると思います。」
インタビュー・文/横川良明
※構成/月刊ローチケ編集部 5月15日号より転載

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【プロフィール】
橋本祥平
■ハシモト ショウヘイ
数多くの舞台に出演。近作に、ミュージカル『インサイド・ウィリアム』、舞台「鬼滅の刃」其ノ伍 襲撃 刀鍛冶の里など。