音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」ウォーリー木下✕松下優也✕青野紗穂 インタビュー

三田誠によって描かれた魔術ミステリー、「ロード・エルメロイII世の事件簿」がついに舞台化。とある事情から謎多き城での遺産相続に巻き込まれたロード・エルメロイII世が、内弟子のグレイとともに事件に立ち向かう。かつてない音楽劇になるという本作の舞台に挑む3人に話を聞いた。


――公演は12月ですが、現在はどんな段階でしょうか?

ウォーリー「これから構想を詰めていくところなのですが、原作ファンの人はもちろん、原作を知らない人たちも『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』の世界観を楽しめて、かつ新しい解釈の舞台をお見せできればいいと思っています」

松下「僕ら今日、はじめて衣裳を着たんですけど、どうでした?」

ウォーリー「衣裳を着た状態でほぼ初めてお会いしたので、普段の松下さんと青野さんをよく知らないから、私服よりも衣裳の方が自然に感じます」

青野「フフフ」

松下「ということは、衣裳は変じゃなかったってことですよね!」

ウォーリー「はい。いい感じだと思います」


――ウォーリーさんは総合演出ということですが?

ウォーリー「社会やお客さんにとって(この舞台が)どういう意味を持っているかを考える部分を僕が担って、実際の舞台を完成までもっていく“演出”の部分は元吉庸泰くん(舞台『僕のヒーローアカデミア』など)が担当します。役割分担してやろうと思っています」


――ファンタジーなので世界観が重要ですよね。

ウォーリー「実はファンタジーだからこそ引き受けたんです。僕は演劇ってなんでもできると思っているので、その“なんでもできる”を証明するためにやってみたいなと。今、戯曲は半分くらいできているのですが、(実現に関して)無理難題も多くて、それをどうやって具現化していこうかと考えているところです。難しければ難しいほど演劇は面白いものになると思っているので楽しいですね」


――『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』の魅力は?

松下「やっぱり世界観だと思います。アニメも拝見しましたが、絵も綺麗で、登場人物たちのバックボーンも描かれている。気になっているのは長いセリフが多そうなところ(笑)」

青野「めっちゃ長いセリフありましたよ?」

ウォーリー「ありますね」

松下「…そうなんだ」

青野「私は小説を原作とした舞台に出るのははじめてなのでテンションがあがっています。髪の毛も綺麗な銀髪だし、衣裳撮影のときに持った武器もめちゃくちゃ大きくてウキウキしました。」

松下「あの武器、重いの?」

青野「重いです。本番で振り回せるのかなあ?」


――松下さん演じるロード・エルメロイⅡ世は、知識が豊富でクールなキャラクターです。

松下「ビジュアルで見ていたよりも、原作を読んでみると意外と人間味がある感じのキャラクターなのかなと」


――青野さん演じるグレイはロード・エルメロイⅡ世の弟子なんですよね?

青野「グレイちゃんは本当に師匠(ロード・エルメロイII世)のことが好きで、気配りのきく可愛い女の子。それにふたりともなんかおっちょこちょいだし、いいコンビなんです」


――ウォーリーさんはロード・エルメロイⅡ世とグレイのコンビをどのように思われているのですか?

ウォーリー「松下さんと青野さんだからこそできることっていうのがたくさんあって、そういう舞台になっていくと思います。具体的な演出は元吉くんの作業になると思いますが、僕はふたりが抱える闇を感じられる仕組みを提案できればいいなと。やはりロード・エルメロイⅡ世とグレイがドライブをかけないと物語は進まないですからね」


――見どころは?

ウォーリー「原作の重要なポイントには必ず“戦い”がありますので、そこは見どころになると思います。動ける俳優さんが揃っていますしね」

松下「オレ、動くんですか? あんまり動かなくてもいいかと思ってました」

ウォーリー「戦うだけじゃなくて、歌も踊りもあります」

青野「私も戦いますか?」

ウォーリー「戦いますね。戦わざるを得ないですね(笑)」

青野「はい! 私、戦います! 殺陣とか武器を振り回すのははじめてなので楽しみです。今までのお芝居ではビール瓶を振り回したくらいなので(笑)」

ウォーリー「じゃあ自信がある?」

青野「ないです! やったことないから(笑)」

松下「オレ、動くのか~」

ウォーリー「ただ、ロード・エルメロイⅡ世は頭脳派のキャラクターなので、表だって戦いはしないですね」

松下「できる限り動かない方向で(笑) 動かずに強く見えるのがいいなあ」

ウォーリー「あまり動かないと思うけど、だいたい僕の舞台に出る俳優さんは“こんなに動いたことはない”と言われますよ(笑)」

松下「ハハハ。でも、動くのは嫌じゃないですよ!」

ウォーリー「ロード・エルメロイⅡ世が物語の世界のなかでどのくらい頭が良くて、頭脳で切り抜けていくかって理念を見せることが重要だと考えています」


――戦いのアクションを支える“魔術シーン”の演出はどのようなものになるのでしょうか?

ウォーリー「基本的には光と影で魅せることをベースにしつつ、奥行きがわからない黒いステージにしたいと思っています。今回はマジシャンの方にマジック監修に入って貰う予定なのですが、お客さんには “あれ? 今、どうなったんだろう”と思うような不思議なことを体験して貰おうとも思っています」


――原作で使わている魔術が目の前で見られるわけですね!

ウォーリー「僕は舞台を作るとき、基本的には戯曲に描かれていることでイメージを作っていきます。原作やアニメとは違うと思われるかもしれないけど、そこは舞台なので、舞台を観に来てもらった醍醐味として喜びを与えられたらいいなと思っています」


――ミュージカルではなくて、音楽劇というのも気になるところです。

松下「歌はけっこう歌うんですか?」

ウォーリー「歌うか歌わないかでいうと歌います。何を歌うかはこれからですけど、歌わない部分も音楽が物語を引っ張っていく構造にします。この物語は、ある文脈がわかっていないと理解できない単語がたくさん出てくるので、その単語がわからなくても楽しめるように音楽を使おうと思っています」


――現実離れしたキャラクターを演じるに当たって思われていることは?

松下「僕は原作モノをやるときはアニメやマンガなどの原作を見て、その作品を好きで愛してくれている人たちのイメージに寄り添いたいなと思っています。新たな提示をするというよりはキャラクターを研究して稽古に臨もうと思っています」

青野「私はこれまでミュージカルが多かったので、戯曲を自分たちで解釈して、それと同時に違和感のない歌を届けるという作業が多かったんですけど、今回は原作もあるし、ファンの方々もいらっしゃるので、その期待を裏切らないように原作のイメージを壊さないように演じたいですね」


――公演は12月から1月まで全国ツアーがあります。

松下「2020年のあけましておめでとう公演が九州の久留米なんですね。地方公演もあるのでキャストのみなさんとご飯に行ったりしたいですね」

青野「私、食べることが好きなので地方公演では、その土地の美味しいものを食べたいですね。空気だったり食生活だったり、道幅の広さだったりを体感して、その町の舞台に立つのが楽しみです。なかでも、ご当地グルメは絶対です!あ、なんか私、食いしん坊みたいですね(笑)」

ウォーリー「長い公演は健康管理やクオリティのキープも大変だなと常々思っていますが、そのぶん多くのお客さんとの出会いの場が増えるのは嬉しいです。一緒に応援するというか、お客さんも舞台の一部になって盛り上がれるものになると思うので、気軽に足を運んでください」

 

取材・文/高畠正人