ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.2 -大英帝国の醜聞- 久保田秀敏&大湖せしる インタビュー

左:久保田秀敏 右:大湖せしる
©竹内良輔・三好 輝/集英社 ©ミュージカル『憂国のモリアーティ』プロジェクト

歌と生演奏で彩られた本格クライムサスペンス、再び

 

その高い歌唱レベルと圧倒的なクオリティで衝撃を与えたミュージカル『憂国のモリアーティ』の続編が決定した。アルバート・ジェームズ・モリアーティ役の久保田秀敏をはじめ主要キャストは全員続行。さらにアイリーン・アドラー役の大湖せしるら新キャストが加わった。

久保田「前作で思い出深いのは、兄弟3人の歌唱シーン。当初は半分くらいの尺だったものが、みんなで意見を出し合っていくうちにどんどん歌詞が追加されて。結局、7分くらいの長いナンバーになったんですけど、あのシーンがあるからこそ3兄弟のドラマが色濃く見えた。この間、久々に見返したときも、グッと来て涙が出ました」

大湖「前作を観させてもらったのですが、単純に面白くて、いい意味で2.5次元ミュージカルっぽくないなと思いました。歌で始まり、歌で終わると言っても過言ではない。久保田さんのおっしゃった歌唱シーンを観ながら、私も舞台に立ちたいと思いました」


アルバートはモリアーティ家の長男。MI6の指揮官として優れた頭脳を発揮する。

久保田「アルバートは家督を継ぐ者として大切に育てられてきた。その貴族らしい雰囲気を出すためにも、背筋を伸ばしたり、形から入っていったのですが、稽古中に演出の西森(英行)さんから『もう少し人間らしく』とオーダーをいただいて。紳士的な物腰の中に人間らしさを出すのが難しくて、苦労しました」


大湖が演じるアイリーンは、米国出身の女優。劇中では男装も披露する。

大湖「宝塚では11年間男役をさせていただきました。男性の格好をするのは、そのとき以来。本当に久しぶりなので、少し恥ずかしさもありますが、アイリーンはいろんな引き出しを見せられるキャラクター。しっかり研究しながら、役を掘り下げていければ」


別作品で共演経験のあるふたり。だが、板の上でしっかりと絡むのは今回が初めてだそう。

久保田「せしるさんの舞台上での華やかさは、普通の人には真似できないものがある。アイリーンはまさにハマり役。どれだけ押されるだろうっていう恐怖感があります(笑)」

大湖「前作を観たとき、久保田さんのアルバートはカッコよくて原作のイメージにぴったりでした。その久保田さんに引けを取らないように私も頑張ります(笑)」


本作は、鈴木勝吾、平野良ら華と実力を備えた俳優たちが名を連ねている。

大湖「鈴木くんとは以前ご一緒させていただいたのですが、自由な感性を持った方。私も彼も日によってお芝居が違うんです。ここでこの台詞を言う、というような決め込んだ芝居を一切しない。おかげですごく自由にお芝居できた記憶があります」

久保田「勝吾と良くんが飲むと、演劇論のぶつけ合いで話が白熱するんです(笑)。でもそんなふたりだからこそ、ベクトルが合致したときはとんでもなく強力。僕から見れば憧れの存在だし、ふたりと一緒に芝居ができる環境がこの上ない幸せです」


思考の裏を読むような駆け引きや頭脳戦が本作の魅力。ちなみに素のふたりはと言うと?

久保田「僕は単純なので、そんな三手も四手も先を読むことはできません(笑)」

大湖「私も考えていることが全部顔に出ちゃうので、すぐにバレると思う(笑)」

久保田「キャストの中で一番頭脳派なのは、良くん。良くんは、以前、知り合い一人ひとりに自分がどう見えているか調査して、ノートにまとめたことがあるそうです。それぐらい分析家だし、思考を明確化するのが得意。お芝居にもそんなところが出ている気がします」

大湖「私は人に興味がなさすぎて、鏡前で隣の人が話していても、自分と関係のない内容だと一切入ってこないタイプ。むしろ平野さんの観察力を分けていただきたいです(笑)」


コロナ禍に揺れる演劇界。当事者のひとりとして、本作にかける想いも格別だ。

久保田「こんな時期だからこそ、エンタメで何ができるかを考える必要があると僕は思っています。今はコロナが収束してみなさんと劇場でお会いできることを願って、本番に向けて準備をするのみ。いい作品にできるよう稽古に励むので、ぜひ劇場へお越しください」

大湖「10代の頃から当たり前のように舞台に立ってきましたが、決して当たり前ではなかったんだなと実感する毎日です。だからこそ、舞台に立てるありがたみを感じていて。今のこの想いを本番で皆さまにお届けできれば」

 

インタビュー・文/横川良明

 

※構成/月刊ローチケ編集部 6月15日号より転載

掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
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【プロフィール】
久保田秀敏
■クボタ ヒデトシ ’87年生まれ。福岡県出身。近作に舞台『血界戦線』、舞台『バレンタイン・ブルー』など。

大湖せしる
■ダイゴ セシル ’16年に宝塚歌劇団を退団。近作に舞台『ジョーカーゲームⅡ』、舞台「どろろ」など。