手話を通じて心と心が繋がりあう、ミュージカル『ゆびさきと恋々』稽古場取材会

原作はanan漫画大賞など数々のマンガ賞を受賞し、全国書店員が選ぶおすすめの少女漫画1位を獲得した森下suu作の『ゆびさきと恋々』(講談社「デザート」連載)。
聴覚障がいのある女子大生・雪(豊原江理佳)と世界を飛び回る先輩・逸臣(前山剛久)が手話を通じて心と心が繋がりあう中で、お互いの知らない世界を知り、惹かれ合うというピュアなラブストーリー。逸臣との出会いにより、世界を広げていく雪の前向きな生き方と心情をミュージカルで綴る。
そのほか、雪の幼馴染 桜志(池岡亮介)、雪の親友りん(林愛夏)、逸臣の親友 心(中山義紘)、友人でありながら逸臣に恋心を寄せるエマ(青野紗穂)、皆が集まるカフェ・バー“ロッキン・ロビン”の店長 京弥(上山竜治)らが、憧れや恋心に翻弄されながらも、青春を謳歌する様も本作品の魅力。

この日、全キャストがそれぞれの心を歌い上げる作品のハイライト「わたしの手・あなたの手」を初披露。それぞれの思いが重なり合い、一つになって呼応しあうという感動的なナンバーで、本作の魅力がまさに凝縮された名ナンバーだ。歌唱披露後の囲み取材では主演の前山剛久・豊原江理佳らが意気込みを語った。

前山剛久は「最初に舞台化の話を聞いた時には映像の方が良いのでは?と思いましたが、心の声を表現できるミュージカルというかたちでやることにすごく意味があると思います。それと、この作品は個性を大切にすることの素晴らしさが描かれていてSDGsを実現する作品になっているし、その意味も込めて取り組んでいます。コロナ禍でエンターテインメントについて色々な議論があるけれど、エンターテインメントは心を治す仕事だと思います。是非この作品を観て生きていてよかったと感じて欲しいです。」と本作とエンタメへの強い思いを語りながら「逸臣とおなじ、銀髪にも注目して(笑)」と笑いを誘った。

豊原江理佳は「聾者(ろうしゃ)の役を演じて、最初は不自由なものなのかと思っていましたが、日々手話の練習や稽古を重ねて雪のキャラクターを知るうちに、それはひとつの個性だと、全然そんなことはないと思いました。この作品はそうした個性と個性が惹かれ合う温かいお話です。人と人との想いがつながること、心の声を歌で表現するところを是非劇場で観ていただきたいです。」と雪役への想いを熱をもって話した。

演出の田中麻衣子は「聾者が主人公のミュージカルということで、もちろん難しいことはたくさんありました。主人公のことを知ろう、分かろうとしても想像することしかできない。でもその想像力が一番大切なことだと思っていて、稽古場でも皆とコミュニケーションを取りながら毎日努力しています。」と創作過程について、手話指導の三浦剛は「ミュージカルの中でリアルな聾者の姿を見せるということを目標に日々稽古しています。聾者の話には感動ものが多い印象ですが、この作品は本当に聾者と聴者の壁が無くてなんて前向きな作品なのだろうと思いました。」と作品への印象を語った。

公演は6/4(金)より下北沢・本多劇場で開幕する。恋によって生まれる優しさと世界の輝きに浸り、ワクワクして、幸せになれるミュージカルをどうぞお楽しみに。