舞台『魔法使いの約束』第3章 山田ジェームス武&橋本汰斗 インタビュー

【左】橋本汰斗【右】山田ジェームス武

2人だから築けた“愛憎”の関係性

公演を重ねるたびにその世界観を深めている舞台『魔法使いの約束』がついに第3章を迎える。第1章から出演し続けるシャイロック役の山田ジェームス武とムル役の橋本汰斗にとっても思い出がいっぱいの作品となった。

山田「中でも第2章の月蝕の館の場面はすごく印象的でした。あそこでシャイロックはムルの欠片と対峙する。シャイロックの中にある見透かされたくないけど見透かしてほしい曖昧な部分が、思い切り見透かされる。それが悔しいような嬉しいような複雑な感情で、演じていて面白かったです。どれが正解かわからない中、毎公演、その場で感じとったものを出せたらという気持ちで演じていました」

橋本「その後、シャイロックだけが台詞を喋るシーンがあるのですが、そこはいつも袖で聞いていました。ジェーくんの言う通り、毎回違うんですよ。『今日の《インヴィーベル》こわっ!』とか、公演ごとの変化を感じているのが楽しかったです」


稽古中から何度も話し合いを重ねて、シャイロックとムルの“愛憎”と呼ばれる関係を築き上げた。

山田「第2章でムルを欠片に戻した後、湧き出てくる感情が毎回違って。切なさもあれば愛しさもあるし虚しさもある。すごく頭がいいし、人間っぽくない立ち位置だけど、実は人間らしいのがシャイロック。だから、シャイロックを演じるのが面白くて仕方ないんです」

橋本「自分がシャイロックだったらこの関係性は絶対耐えられないと思うんですけど、ムルはただ自分の興味のあるものを純粋に追い続けているだけなんですよね。そこが面白いし、怖いなという気もします」


そんな愛すべき役を、2人共にこだわりをもって演じ抜いている。シャイロックはその色気がファンの間でも話題を呼んだが…。

山田「色気は特に意識していなかったです。心がけていたのは、いかに動きにキレをなくして、できるだけ大きくふわっと流れるような所作ができるか。舞台上にどれだけ人がいても、シャイロックだけ雰囲気が違うような、そういうイメージでいたのですが、もしかしたらその異質な感じをみんなが『あれ、セクシーだな』と勝手に補正してくれたのかも(笑)」


ムルは、得意のダンスでキャラクターを表現した。

橋本「エンディングの間奏で舞台上に魔法使いが全員出てくるのですが、間奏中は歌も振りもないので、そこでどれだけムルらしい動きを出せるかというのは大事にしたところのひとつです。振りがあるところもオープニングと振付自体は同じ。でも、オープニングではオンビートで体をキレさせているのに対し、エンディングではオフビートでちょっと猫っぽい動きを意識したり。ダンスは自分が引っ張っていけるところかなと思っていたので、いかに遊びながら雰囲気を出せるかにはこだわりました」


原作ファンも納得のシャイロックとムル。第3章では、どんな“愛憎”を見せてくれるだろうか。


インタビュー・文/横川良明
Photo/山本倫子

※構成/月刊ローチケ編集部 3月15日号より転載
※写真は誌面とは異なります。

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【プロフィール】
山田ジェームス武
■ヤマダ ジェームス タケシ ’90年生まれ。千葉県出身。近作に「怪盗探偵山猫 the Stage~船上の狂想曲~」、ミュージカル「ヘタリア」など。

橋本汰斗
■ハシモト タイト ’91年生まれ。兵庫県出身。近作にWBB vol.19「ウエスタンモード」、Sanrio Kawaii ミュージカル『From Hello Kitty』など。