黒沢ともよ、吉川友、星波 インタビュー|舞台『アクダマドライブ』

高度成長を遂げながらもアクダマと呼ばれる犯罪者がはびこる社会を描いた、オリジナルテレビアニメ『アクダマドライブ』。その舞台版が間もなく幕を開ける。演出を担うのは『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stageなどを手掛けた植木豪。主人公となる一般人をテレビアニメでも声優を務めた黒沢ともよが演じることも話題となっている。今回は黒沢のほか、医者役の吉川友、処刑課弟子役の星波の3人に、作品にかける想いをたっぷりと聞いた。

――出演が決まった時のお気持ちをお聞かせください。特に、黒沢さんはアニメの声優を務められ、そのまま舞台でも同じ役を演じることになりましたね。

黒沢 テレビアニメ最終話のオーディオコメンタリーの収録で、もしかしたら舞台をやるかも?くらいの感じで話を聞いたんですよ。私にとっては、すごく思い入れのある作品だったので、舞台に私も出たい!っていう話をその場でしたんです。そしたら、その2か月後くらいに、本当に舞台でもやってくれませんか、と言っていただけました。もう、願ったり叶ったりというか、本当にうれしかったですね。


――吉川さん、星波さんは出演が決まった時にどんなお気持ちでしたか?

吉川 私はやっぱり、不安はありました。ファンの方の反応といいますか、やっぱりアニメのイメージがありますし、主演もアニメでも主人公の声をやられていた黒沢さんということで、ここから参加する側としてはそこに追いついていかなければいけないというプレッシャーが大きかったです。でも、衣裳を着てみて…あの、なんかセクシーじゃないですか(笑)。すごく素敵に作っていただいていたので、そこでちょっと楽しみになりました。お胸とかも、自分の理想のものになるので、舞台の期間中、本番中だけは理想の自分になれるので、ありがたいです(笑)

星波 私はお話をいただいたときに、めちゃくちゃ動くことが大前提で、周りのキャストの方々も本当に動ける方ばかり。その中で、女子キャストの中でも多分一番動いていると思うんです。メンズに負けないくらい動かなきゃ、ってプレッシャーを勝手に感じていたので、大丈夫かなと思っていました。でも、私は黒沢さんがアニメから引き続き舞台でも一般人を演じてくれることが、逆に安心感がありますね。この作品を知り尽くしている方がいてくれる、世界観を引き継いで持ってきてくれるんじゃないか、と思って、迷ったときには相談できると思っています。


――アニメをご覧になった印象は?

吉川 私はなんか、将来の日本を観ているような感覚になりました。いつか本当にこうなっちゃうんじゃないか、みたいなリアリティがあって、フィクションというよりは現実的なものとして感じられましたね。

星波 私はアニメが好きで結構いろいろ観ている方だと思うんですけど、初めて見る感じがしました。意外と現実でもありそうな部分があったり…結末も意外で、すごく考えさせられました。自分が演じるキャラがわかっていたから、どうしても彼女が抱えるものとかも多くて…。裏切りとか、いろいろとめちゃくちゃ面白いと思いました。


――黒沢さんはアニメの印象をどのように感じていますか

黒沢 クリエイター陣が男性で、すごくメンズが作った作品だな、という感じは最後まで通してありましたね。1話が始まる段階では、まだ1話分しか知らなくて、先のキーワードとなるセリフだけいただいていたので、なんとなくの展開はわかったんですけど、世界観はファンタジックな感じだったんですね。でも芝居側はちょっとリアル目な感じが欲しいというオーダーがあったりしたので、人間ドラマ的な部分が強くなるのかも、と思いました。すごく派手でテンポよく、気持ちよく、ダイナミックに最後まで展開していった感じです。いい意味でカッチョイイおじさんたちが、思い切りふざけて笑いながら作った作品で、それぞれのおじさんが抱えているちょっとした疑問などが、シニカルな感じでいっぱいつぎ込まれていて、深みのある作品になったと思っています。


――稽古が進んでいる中かと思いますが、今の手ごたえはいかがでしょうか

星波 私が演じる処刑課弟子はとにかく一生懸命。唐橋充さんが演じている師匠の動きを見て、師匠を慕っている動きを出せるようにやってみたりしています。アニメのボスは舞台では声だけの出演になっていて、それでちょっと私の役のアニメでの立場とはちょっと違う感じもあるんです。そこは、ともちゃんにすごく頼って、アニメの世界観とかの話をすごく話してもらっています。私が演じるから、っていうだけじゃなく、きっと処刑課弟子は感情移入しやすいタイプのキャラクターだと思うんですね。だからあまり作りすぎずに、やっていく中で苦しいと思ったら、それを素直に出して、みんなからもらうものをしっかりと受け取って、役を全うしていきたいと思っています。でも、結構ずっと悩んでいますね。こうじゃなきゃ、っていうイメージを作りすぎていて、まだ葛藤も多いというのが正直な気持ちです。

吉川 医者はすごくセクシーで、色気がありますよね。女の人…なんですけど、性格はけっこう男っぽいんですよ。キャラクターのことをネットで調べていても、医者は男なのか女なのか、っていう議論があるんですけど、どうなんでしょうね?

黒沢 それは…言えない!

吉川 原作を見ていても、疑問に思うポイントですよね。何が本当かわからない。そういうミステリアスな奥ゆかしさは、存分に出していきたいと思います。私は稽古にちょっと遅れて参加になってしまって、まだ探り足りないところはあるんですけど、観ていただいた方に“どっちなんだろう?”って思わせるような部分はどんどん作っていきたいと思います。

黒沢 私は、もともと声優の仕事も舞台の仕事も両方やってきたんですけど、2.5次元の作品はこれが初めてなんですよ。俳優として、2.5の作品を見るとき、すごく面白いし、楽しいし、いつもワクワクさせてもらっていました。一方で、役者として、そこまで近づけなくてもいいんじゃない?と思うことも。その役を舞台で演じた方にも、その人の人生があって、その方が担うことによって出るその役のキャラクターもあるはずなのに、もったいない!って感じることもあったんです。もちろん、演出家さんの意向とかもあると思うんですけどね。


――舞台ならではの部分をもっと大切にしてもいいのではないか、と。

黒沢 稽古が始まってすぐ、演出の植木豪さんにこの作品のテーマについて話をしたんです。何がやりたくて、舞台にするのか。そうしたら、まず再現ということを目標にはしない、とおっしゃっていました。アニメはすごくカッコいいと思うし、すごくイケてるし、自分もこういうことをやってみたいと思わせてくれる価値観がいっぱい詰まっているから、それを模倣していきたいとは思っている。そこをしっかりと活用したうえで、このキャストだからこそできる世界観にしたい。そうおっしゃったので、この作品は再現ではなく、この脚本と土台を使って舞台を新たに作るんだ、と思いました。そうなったときに、私がアニメ通りのラインをなぞると、みんなやっぱりアニメをなぞった人が来ちゃう。


――アニメとキャスティングが同じであることに、ある種の葛藤ができてしまった

黒沢 稽古に入って「アニメを5回も6回も観ました!」って言ってくださるキャストの方もいてくれたんですが、私はそれが逆に不安になってしまいました。だからこそ、私は一度もアニメを見返すことなく、この脚本だけを読んで作品に挑むことにしました。この舞台から作品を観た人が、この舞台だけを観た人がついてこられるような感情のラインを作っていこう、と思ったら、アニメの時には涙がこぼれなかったセリフで、舞台では涙が止まらなくなったり、逆にアニメの時は涙が出てなかなか言えなかったセリフを堂々と言えるようになったり、自分の中で解釈がまったく変わっていって、すごく面白いです。ストーリーは同じなので、ご覧いただいたときの印象はアニメと同じだし、同じでなければいけないと思うんですけど、舞台という空間でお客さんと共有して進んでいくと、こんなにも言葉って彩りが豊かになるのか、と感じています。


――舞台になったからこそ感じられる、新しい解釈や発見がありそうですね。今回はキャストの中でも女性3人に集まっていただきましたが、ガールズトークなど、稽古場ではどんなお話をしているんですか?

吉川 実はあんまり話さないんですよ

星波 稽古場の席も離れていて、さらに今は距離をとっているので…。役的にもそんなに絡みがなかったり。

吉川 実はあんまり仲良くない?(笑)


――撮影はあんなにワチャワチャ楽しそうだったのに(笑)

黒沢 私は、みんなが出てきたときに膝カックンしたりとか(笑)

一同 (笑)

星波 基本的に、私やきっかさんに黒沢さんがカックンしてきます(笑)

黒沢 でもきっかさんからの反撃がすごいんですよ!

吉川 私は裏でもメスを持ったままなので、それで切りつけたり(笑)

黒沢 私がちょっとだけツンツンってしたら、もうウワ~!って。今回、子役ちゃんたちがいるんですけど、3人目の子役って言われています(笑)

吉川 ほんとそんな感じ!

星波 割とともちゃんは誰とでも話している感じはしますね。空いた時間とか、自分が出ていないシーンの時は、自分から積極的に話しかけに行っているイメージです。そうしてくれることで、稽古場の雰囲気をひとつあげてくれる感じはしていて、ありがとうございます、って思っています。


――毎日、稽古やお仕事で忙しいかと思いますが、毎日欠かさずやっていることや癒しになるようなルーティンなどはありますか?

吉川 えー…、私、無いかも?

黒沢 えーっ!なんかあるでしょ、曲聞くとかさ。

吉川 なんだろう。逆に、なんかあります?

星波 私はやっぱり食べることになっちゃいますね。最近はサクラのフレーバーのものが増えてきて、それを買ってきて食べています。あと、夜は1人でマリオパーティとかゲームしています

黒沢 稽古場、ゲーム好きいっぱいいるから、一緒にやればいいのに。

星波 みんなすごいゲーマーで、信じられないくらいずっとゲームしているから、きっと強いんと思うんですよ!コンピューターに負けるのはまぁいいけど、人間に負けると悔しいので、私は一人でやります(笑)

黒沢 私の場合は、舞台とかが立て込んでくると、食べ物を選ぶことや消化することがすごく億劫になるんですよ。なので、稽古場が変わったり劇場に入ったりすると、1日目に周りを散策してひとつ好きなパンとか食べ物を決めると、毎日それだけ食べています。飽きるまで、というか稽古や舞台が終わるまで。家の中でも、玄米ご飯と豚汁。それに納豆か卵か。それを延々と食べています。普段は食べるものを選ぶのも楽しいんですけど、舞台中はその判断力を舞台に使いたいんですよね。だから本当にルーティンというか、何を着て、何時に出て、お茶とかコーヒーとか途中で買うものとかが全部決まっちゃうんです。


――天才肌の経営者みたいな感じですね。それを聞いてみて、吉川さんのルーティンは…

吉川 んー…、無いです!(笑)


――ありがとうございます(笑)。今回はローソンチケットということで、コンビニのローソンでよく買うものとかはありますか?

吉川 からあげクン!ほんっとにお世話になっています!救世主ですよね。短時間で食べられるし、シェアもできるし。いろんなフレーバーもある。忙しい時に、ついつい買っちゃいます。移動中とかでも、ちょこっと食べられますし。本当にありがたいです。

黒沢 私は駅に向かう途中にローソンがあるので、マチカフェでアイスコーヒーを買っています。絶対に毎朝買っていますね。あとは、疲れた日には、もち食感ロールを買って帰ります。もち食感ロールと無糖のヨーグルトを一緒に食べるのがすごく好きで、すっぱい、あまい、すっぱい、あまい…で、気づくと1本なくなっています(笑)

星波 私もデザートなんですけど、もちぷよが大好き。シュークリームとかになっちゃうと、ちょっと罪悪感があるんですけど(笑)、ちょうどいい量でお手頃な価格で大好きです。あと、一時期すごくポイントを貯めるのにハマっていて、例えばお水でも、このお水はPontaポイントがプラス20ポイント、みたいなのがあると、そればっかり買っていました。気に入ったらポイントが増えているうちにまとめ買いしたり(笑)


――みなさんローソンを活用してくださっていてうれしいです。ローソンのホットスナックやスイーツを食べて、公演も頑張ってください!最後に公演を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。

星波 本当に見どころがたくさんある作品になってきていると思っています。こういうご時世なので、ケガなどもなく、無事に千穐楽までお届けできるように頑張りたいと思います!子役のみんなもかわいいので、そこに癒されつつ、みんなで一丸となってアクダマドライブの世界をお届けします。劇場でお待ちしています!

吉川 本当に、無事開幕できる、そして千穐楽を目指すというのが一つの願いです。まだみんなともあんまり話せていないので、千穐楽までにはちゃんと仲良くできたらいいな、と。(横からの黒沢の強い視線を感じながら)特に、主演の方とはストレスなく(笑)、千穐楽まで頑張ります!ちょっと大変そうですけど(笑)

黒沢 私すごい楽屋楽しみにしているの!どうしよう、これで本当に1人楽屋とかになっちゃったら(笑)

星波 私も楽屋楽しみなんです

吉川 さぁ、どうかな~?(笑)


――このやり取りの息はピッタリですね(笑)。最後に黒沢さんの意気込みもお聞かせください。

黒沢 今回は植木豪さんが演出で、本当にフィジカルをたくさん使った痛快、爽快、疾走感のあるエンターテインメント作品になったと思っています。あんまり気負いせずに楽な気持ちでお越しいただければ。歌もあるし、ダンスもあるし、アクションもアクロバットもあって。アクションが得意な星波ちゃんはめっちゃアクションシーンがあるし、きっかさんの歌やセクシーさなど、役者それぞれの特技がそのまま凝縮されている作品でもあるので、いろんな味がするアクダマドライブをぜひ楽しんでいただきたいです!


――楽しみにしています!本日はありがとうございました


ライター:宮崎新之
カメラマン:村上宗一郎