特集!マーベラスのステージの魅力!!
プロデューサー 古川由隆 インタビュー

パイオニアとして2.5次元舞台を引っ張ってきたマーベラス作品の数々。その人気の秘密を、プロデューサーの立場から舞台製作に関わってきた古川由隆さんに聞いた!

 

マーベラスが手掛ける舞台の公演中、劇場の入り口に立つ姿をよく見掛ける男性スタッフがいる。それが古川由隆プロデューサーだ。

古川「舞台は(料金を)前払いなんです。お客様はまだ見ぬ作品に投資してくださっているんです。製作側はチケットが完売したからといって喜んでいてはいけない。数字だけ見ていてはクオリティの高いものは作れませんし、次につながらなくなってしまいます」

 

古川の前職はアミューズメントセンター用ゲーム機の営業。ゲームを縁にしてマーベラスに入社したが、配属先は舞台関係を取り扱う音楽映像事業部だった。とはいえ、古川が入社した当時は宣伝業務やDVDなど映像制作をメインとしており、舞台製作は手掛けていなかった。

古川「自分たちが扱っているものの本質を知らないのは良くないのではないかと。自社でも舞台を作ろうと提案した時は反対の声もありましたし、2.5次元舞台自体が新しいジャンルだったので前例も少なくて。試行錯誤から始まりました」

 

日々劇場にて他社作品を観劇しつつ、原作とする作品をリサーチした。現場のノウハウを持たない古川たちをサポートしてくれたのは、衣裳やヘアメイク、舞台監督や演出家……数々の舞台裏を支えてきたクリエイター陣。

古川「スタッフの方々が、すごい職人さんばかりなんですよ。とても感謝していますし、今でも刺激を受けています」

 

プロデューサーとは、各セクションのスタッフがすることを俯瞰で見て舵取りをする仕事。だが古川は「特殊な能力は何もいらない立場です。むしろ僕は、演劇の常識を知らないので無茶を言ってみんなを困らせてばかり(笑)」と苦笑する。

古川「ミュージカル『薄桜鬼』の立ち上げでは“殺陣とダンスを歌いながら演劇をやるなんてとんでもない!”と反対がありました。(歌は)誰もが口ずさめるキャッチーなものにして欲しいから歌詞に英語を入れてくれと頼んで、目を丸くされたりも(笑)。暗黙のルールも分からないので、役者の出てくる場所がおかしければツッコミを入れてしまうし、雨を降らせたいと言い出したこともあります。でもクリエイターの方々も役者のみなさんも、まずトライしてくださる。有り難いです」

 

その結果、殺陣×ダンス×歌で新選組を表現するミュージカル『薄桜鬼』や、ライブの演出で観客がペンライトを振りながら声援を送る、超歌劇(ウルトラミュージカル)『幕末Rock』など、話題作が誕生した。
システム面においても新たな視点で切り拓いていったところがある。今では当たり前となっているが、劇場の外でパンフレットなどの舞台グッズを販売するようになったのは古川の発案だ。

古川「クローズな空間のままでは勿体無いですし、仲間はずれを作りたくなかった。せめてグッズだけでも欲しいと思ってくださるお客様に出来ることをしたかったんです。ライブビューイングやDVD&Blu-rayの販売もその気持ちに拠るところが大きいです。演劇の信念とは違ってしまうのだと思いますが、僕はエンタメ業界から来ているので、どうやったら大勢のお客様が喜んでくださるのかということが先にきてしまう」

 

開始当初は賛否両論だったというツイッターの公式アカウントの開設や、グッズ付きのプレミアムチケットの販売もすっかり定着した。「目標としてですが」と前置きして「真似される側でいなくてはいけない」と語る。新しいことを常に探し続けている。

古川「舞台の見せ方ひとつにしても、同じことを繰り返していてはシュリンクしていくだけ。幸いにして、2.5次元舞台作品は新しいことを受け入れてもらいやすい環境があると思います。取り扱わせていただいている原作については内容も濃く、舞台の重要な要素である本(=脚本)の面白さが担保されます。原作を預かるという責任とプレッシャーもありますが、原作への忠実さをマストにしつつ、新しい試みで新鮮な“驚き”をお客様に提供していきたい。課題は尽きませんが、その先を見据えたものをやることが僕らの仕事だと思っています」

 

インタビュー・文/片桐ユウ

 

※構成/月刊ローチケ編集部 7月15日号より転載

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