左から)古賀成美、上西恵、佐藤日向、野本ほたる、鳥居みゆき
2022年10月~12月に放送されたテレビアニメ『アキバ冥途戦争』が舞台化。本作は、1999年の秋葉原で、萌えと暴力に向き合う少女たちの熾烈な戦いと成長が描かれる。舞台では、メイドカフェ「とんとことん」で働く主人公・和平なごみが、福引で大阪旅行を当て、秋葉原を出てはならないというルールを破って大阪へ向かったことから、大阪・日本橋のメイドと対立することになるというオリジナルストーリーが描かれるという。
果たしてどのような物語となるのか、脚本・演出の川尻恵太と、佐藤日向(和平なごみ役)、野本ほたる(万年嵐子役)、上西恵(富美代役)、古賀成美(虎飼キズナ役)、鳥居みゆき(店長役)の6人に、意気込みなどの話を聞いた。
――まずはキャストの皆さんに、ご出演への意気込みをお聞きしたいと思います
佐藤 まずは川尻さんの脚本と演出は本当に面白いと思っていて、「アキバ冥途戦争」もリアルタイムで放送を見ていたので、“面白い”と“面白い”がかけ合わさったら、絶対に面白い!と思って、ぜひ出演させてほしいと思いました。「アキバ冥途戦争」の第一話の衝撃って本当にすごくて。でも、ぜんぜんこっちに説明してくれないんですよ(笑)。野球の回とか、本当に意味がわからないじゃないですか。死んでもまだ続けるんだ、とか。その世界観を、大阪舞台にしてやるのが、やっぱり見どころだと思います。実際に稽古に入ってみても、こうやって川尻さんは作品を作っていくんだな、と”面白い”の連続ですね。私が演じる和平なごみちゃんは、本当にメイドになりたくて来ている子。秋葉原から出られないにも関わらず全然絶望しないし、場に溶け込むのが早いんですね。一番後に来ているはずなのに、すぐに中心にいるし。本当に太陽みたいな存在だとアニメの頃から思っていたので、愛らしさやどこか憎めない感じを表現できたらと思います。
野本 とにかくもう、本当に楽しそう!が第一印象でした。川尻さんの演出っていうこともそうですし、「アキバ冥途戦争」について調べてみたときに、もう意味がわからない(笑)。自分がついて行けていない感覚で、意味わかんないけど、とにかく面白くて。これは、とにかく突き進もうと思いました。考えるスキを与えてくれない作品というか。でも、理解せずに進んだ方が、考えてたら乗り遅れる感じがリアルな時代の波のような感覚もあってそこが魅力でもあると思っていますね。万年嵐子さんは…もう、生きてきた人生が壮絶なので、それを自分に落とし込んで、そこを踏まえた上での正義感や、ブレずに立ち続ける、貫く姿を見せていくのが一番大事かなって思っています。普段の私は動きまくっちゃうので(笑)、お腹の位置を下に下げるような感覚で、動じない姿を意識していますね。でも動いていないけど、感情はちゃんと動いているので、そこも大切にしていきたいです。
上西 最初は、メイドさんたちが上を目指して戦っていくようなお話かと思っていたんですが、アニメを観たら想像以上に血が出たりするのでびっくり(笑)。え、本当に殺すの?って。今は、すごくハマってしまっているので、舞台ならではの作品に出来たらと思います。それに、関西出身でよかったー!って思いました。関西出身じゃなかったら、きっと選ばれてなかった役だと思うので。関西組のボス、っていう感じの役なんですけど、今まではあんまりそういう役をやってこなかったんですよ。どうやったら威圧感が出せるのか、研究中です。
古賀 私はもともとアニメを知っていて、こんなにも戦って、血が出て、もう狂ってるなって(笑)。めちゃくちゃ面白いって思ってて、それで舞台決定!ってなった時からすごく出たいって思っていたんです。そしたら、オリジナルキャラクターで出させていただけることになって、すごく嬉しかったです。でも、あの世界観を舞台でどう表現するんだろうとも思いました。そしたらいい意味で今、期待を裏切られまくっているので、本当に楽しいです!私はとにかく喧嘩っ早いので、何かあればすぐ殺すような役どころ。でも、普段は結構フレンドリーで二面性がある感じです。観光客の人には友達みたいな感じで、戦いのときはオラオラしていきたいと思います!喧嘩の時は、巻き舌が大阪っぽいなって思っているんですけど、巻きすぎないように気を付けます(笑)。
鳥居 私は、私で店長の良さを出せるのかな?って思ってたんですけど。店長って、外道だけど慕われているんですよ。私も稽古場で、慕われたい(笑)。でも、本当に店長がいないとストーリーが回っていかない場面が結構あって、そういう意味ではトラブルメーカーでもあるんですよね。店長がトラブルを起こすから、みんなが何とかしよう、って。その辺は、うちのマネージャーと私の関係性と一緒ですね。最初は店長を真似しようと思ったんですけど、真似だと店長の良さは出せないから、私の中にある店長と同じ部分を出していけたらいいなと思ってます。意外とあるんですけどね(笑)。すぐどっかいっちゃうとか、やりたいことやっちゃうとか。
――上西さん、古賀さんはNMB48で一緒に活動していたこともあり、卒業されてまたこういう形で共演できることも嬉しいんじゃないでしょうか
上西 めちゃくちゃ嬉しいです。今までも共演はあったんですけど、こういう仲間みたいな役どころは無くて。やっぱり話しやすいし、相談もしやすいですから。
古賀 そう!だからめちゃくちゃ嬉しいです!もう、頼りまくってますし(笑)。本当にありがたいですね。舞台では、関西弁ではあるんですけど自分たちも普段は絶対に使ったことの無いような関西弁でしゃべるので、いろいろ相談しないと(笑)。
上西 カッとなった時には使うかも?くらいなので。「やったろか!」みたいな(笑)。
――川尻さんは、本作の脚本、演出にあたりどのようなところを意識されていますか?
川尻 まず、アニメ本編を見ると、こんなめちゃくちゃなアニメ、本当にあるのかよって思いますよね(笑)。本編が結構カッチリとしたパッケージになっていて、それを舞台でやるにはちょっと長い。それでオリジナルでやりましょう、という流れになりました。ただ、オリジナルを作るにしても、普通だと後日談とかになったりすると思うんですけど、「アキバ冥途戦争」に関しては、重要な登場人物を出せなくなってしまう。それに、秋葉原の中での話にしてしまっても、本編の世界観に干渉してしまって、矛盾が出てしまうかもしれない。そこで、苦肉の策じゃないですけど、アニメのエピソードとエピソードの間にほんの一瞬、大阪に行っていました、という形にしました。世界観を大切にしつつ、の魅力である”萌え”と”暴力”をバランスよく入れられるよう、考えましたね。
鳥居 いや全然、苦肉の策じゃない!めちゃくちゃいいですよ。爪痕残しに来てるな~って感じしましたよ!
古賀 私も、舞台は大阪になっていますけど、世界観は一緒ってすごく感じます。
上西 本当に、アニメの中にいるキャラクターが大阪に遊びに来てる、って感じになっていて違和感は無いですよね。
鳥居 アニメを見ていない人も、ここを導入にするのもいいんじゃないかな、って私は思ってます。間口が広がるんじゃないかな。
――稽古場の雰囲気はいかがですか?
佐藤 すごくみんな、仲がいいんですよ。キャストのみんなも、アンサンブルの子たちも含めて、すごく仲良し。初めての方もいますし、中には初舞台の方とか、別ジャンルの方とかもいて、最初はどんな雰囲気になるのかな?って思っていたんですけど、鳥居さんが中心になってくださって、すごく盛り上げてくださっています。
鳥居 川尻さんが顔合わせの時に「優しい雰囲気、楽しい雰囲気じゃないとコメディは作れない」っておっしゃっていたんですよ。私は真逆に思っていて、笑わせるためには苦しまなきゃいけないって思ってた。ピリッとしてた方がいいと思ってたんです。もう目から鱗で、その雰囲気に乗っかっていたら「鳥居さんって意外とフランクなんですね」なんて言ってくれて。なんだか心が洗われてきてて、めっちゃ楽しいです。
川尻 お菓子の差し入れで踊ってましたよね(笑)。でも、僕も若いころはストイックな現場が多かったので…自分が作るときは、楽しくやりたいなっていうのはあったんです。もちろん大変なこともあるけど、最終的に、またみんなでやりたいよね、って感じで終われるといいなって。それに、気持ちが乗ってるかそうじゃないかって、意外と見る側にもバレてるんですよ。表情もセリフも同じようにやってるはずなのに、観客の反応がなんか違う。この”なんか違う”の部分がそこなんじゃないかって思うんですよね。
野本 本当に皆さんが自然体なんですよね。すごく居心地がいいんです。
古賀 川尻さんがすごく笑ってくださるんですよ。それがすごく稽古場の雰囲気を良くしてくれていて、ほかの皆さんもいい人しかいないんです。
上西 すごくワイワイしている稽古場なんですけど、皆さんシッカリされているんですよね。みんなでいいものを作っていこう、っていう意識が同じなので、良い作品になるんだろうなって確信しています。
川尻 例えば、アイドルの子たちで全員初舞台、みたいなお仕事をやらせていただくこともあるんですけど、お芝居の技術とかは長くやっていればきっと身についてくる。でも、お芝居が好きだとか、楽しいだとかの感情って、最初のほうに作っておかないとって思うんですよ。言われたからやってます、じゃ違うと思うので。あくまで、やりたいから、自分が面白いからやっているっていう部分がすごく大事だと思うんですよね。
鳥居 そういう意味でも、川尻さんの現場の雰囲気作りは素晴らしいと思います。みんな緊張はしてない。でも川尻さんに尊敬の気持ちはあるから、リラックスしすぎてもいないんです。
――楽しい雰囲気だけど、ちょっとだけ背筋をのばしているような感覚でしょうか
鳥居 そう!それが私にはありますね。
川尻 本当に、良い温度感でやりたいんです。言葉を選ばずに言うと、別に僕が権力を持っているとかは無くて、やっぱりみんなで作る舞台だから。本番中に僕は舞台には居られないし、そういう意味では全員が等しく責任を持っているわけで。だから僕がこうと言っても、私は私でこう思います、っていうのをちゃんと話せるっていうことはすごく大事だと思ってるんです。1人の脳みそだけで作ったものは、まとまりはいいけど突き抜けられなかったりするので。みんなで作った方が、どうやって作ったのコレ?ってワクワクするんですよ。毎回役者さんの力を借りて、作っていってます。
佐藤 稽古である場面をやっているときに、川尻さんが突然、台本に無かったキャラクターのセリフをしれっという時があるんですよ。もう、自然に入りすぎていて”あれ?今の追加のセリフ?”ってなっちゃうくらい。稽古数日にして、こんなに真っ赤な台本ないですよ。
野本 そうそう。でも、その稽古がライブ感があって楽しいですよね。川尻さんって、いろんな役の方になり切ってみていらっしゃるのかな?って思います。川尻さんがその役になりきっていて、このセリフを受けたから今、セリフが出てきたんだ、って感じるときあります。台本を読んだ時も完璧だと思ってましたが、まだまだ上に行けるんだって思いましたね。
古賀 コメディの部分は本当にすごく勉強になります。間の感じとか、組み立て方の部分で、面白い部分が稽古の中でどんどん追加されていくんですよ。まだ稽古も何回かの状態なので、これからどんどん追加されていくんだろうな、と思って楽しみにしています。
上西 メインだからしっかりやる、とかじゃなくて、全部を丁寧に作ってくださるんです。だから私たちも安心してお芝居ができる。台本に無いこともどんどん足されていっているので、最初の台本よりもボリュームのある作品になるんじゃないかと思っています。
――演出面で大切にしていることはどんなことでしょうか?
川尻 今回に限らず、2.5次元の作品をやる時って、再現性ももちろん大事なんですけど、役者さんの持っている個性もすごく大切で、入れていきたいんです。2.5次元のジレンマなんですけど、完璧に再現していけばいくほど、誰がやってもいいってことになっちゃうんですよね。でもそこは、この人がやるこのキャラクターだからいいよね、っていうところに持っていきたい。
鳥居 2.7とか2.8に収まるんじゃなくて、もっと4次元とか5次元とかになるくらいにってことか!
川尻 まぁ、そういう感じです。決して物まねショーではないってことなんですよね。
鳥居 また川尻さんの脚本が面白いんですよ。アニメをリスペクトして書いてるんですけど、川尻さんのオリジナリティもあって、稽古場でも川尻さんのいろんな色が出まくってるんです。それが、良い方向にしか向かっていないから。
川尻 せっかく生身の人間がやるんだから、アニメを観てればいいじゃん、ってならないように。その時に観に来てくれた人が、その時間を楽しめるように作っていきたいですね。
――今まさに、稽古場で台本以上のものが練り上げられている最中なんですね。「アキバ冥途戦争」は秋葉原のメイドカフェが舞台になっていますが、みなさんはいわゆるメイド喫茶のようなコンセプトカフェに行ったことはありますか?
川尻 すごく昔ですけど、ありますよ。でもなんかメチャクチャ態度が悪くて…。ジェンガでこっちが負けたら全員分のドリンク、勝ったらチェキが撮れる、みたいな感じだったんですけど、メイドさんが熱くなりすぎて、僕らが勝ったらむくれちゃったんですよね(笑)。ただ恥ずかしがり屋なんで、また行くとしたら…気持ちにかなりのエンジンをかけないと”萌え萌えキュン”とかできないです。
鳥居 監獄バーみたいなのとか、そういうのは行ったことあるんですけどね。そしたら店員さんと間違えられました。メイドカフェにもし行くとしたら…なんかテンションをちょうどいい具合にできないんで。こっちもメイド?ってくらい、声をつくっちゃうと思うんですよ。声も大きくなっちゃいそう(笑)。
古賀 だいぶ昔に、1回だけ行ったことがあります。いわゆる映像でみたことがあるような、本当にそのままの感じでした。オムライスに文字を書いてくれたり、萌え萌えだったり、現実だったんだ!ってテンション上がりました(笑)。でも初めて緊張していたので、次に行くことがあれば、盛大に声も出して、メイドさんと一緒に何か言いたいな。
上西 私はまだ行ったことが無くて…。メイドさんとチェキが撮れたりするんですよね?だったら推しメイドさんを作って、その子に貢ぎたい!その子をスターにできるくらいにしたいです。グループで活動していた時から、推しを作ってグッズを集めるのとかが好きだったんですよね。なので…ハマったら危険だと思います(笑)。
野本 私も意外と無いんですよ。でも行くなら、サ・メイド喫茶みたいなところに行きたい!オムライスを作ってくれて、一緒にパワーも注入してくれて…。
佐藤 私もチェキ撮りたい(笑)。けど、私自身はそういう感じのタイプじゃないんですよね。日々、なごみを演じていると、すごくお腹が空くんですよ。すごくエネルギーを使うんです。だからきっと、メイド喫茶のメイドさんも、すごくエネルギーを使って萌え萌えしてくれているんだろうな、って今は思います。
野本 こんなにはっちゃけてキラキラ可愛いひーちゃん、ほかでは見られないと思います(笑)。
佐藤 確かに、こういう役はあんまりやったことないからね(笑)。
――本作ならではの皆さんのご活躍を期待しています!公演を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします!
上西 アニメを観たことが無い方は、いい意味で期待を裏切る作品になっていると思います。ポスターの印象だと、メイドのカワイイ女の子たちが戦うのかな?って感じだと思うんですけど、その想像を超えてくるはず。私がアニメを観て受けた衝撃と同じ衝撃をお届けできると思っています!アニメをご覧になっている方も、新しいお話になっているので…実は、舞台には出てこないアニメの登場人物と私の役との関係性も描かれていたりして、きっとお楽しみいただけるストーリーになっているんじゃないかと思っています。
古賀 メイド服を着た女の子が真剣に殺し合うので、そこが刺さる人には絶対来ていただきたい!男性だけじゃなく、女性の方にもたくさんご覧いただきたいと思っています。本当に面白い舞台になっているので、ぜひいろんな方に来ていただきたいです!
鳥居 私がめったにしない土下座がいっぱい見られると思います!どうか、どうかよろしくお願いいたします…って、今は絶対、土下座しませんからね!!!今は頭も下げません(笑)。
川尻 ガールズ舞台で、バトルもあると思うんですけど、どぎつい暴力、どぎつい殺し合いもしっかり見せようかなと思っています。若い女性たちがフリフリの衣装で殺し合ってる姿なんて、なかなか見れないと思いますので、ぜひ楽しみにしていてください!
野本 9月になって、暑さに疲れたころだと思いますが、さらに暑苦しいメイドの世界に来ていただいて、汗を流してデトックスしてスッキリできるくらいの作品になっていると思います!アトラクションに乗るような感覚で、ジェットコースターのような疾走感を味わいに来てください。個性豊かな強い女どもがいますので!
佐藤 舞台は秋葉原から大阪になりますが、大阪に行ったからと言って世界観が変わるわけでもなく、むしろ延長戦のように楽しめる作品です。舞台とアニメの両方の面白さが全部詰まっているので、舞台を初めてご覧になる方にも、アニメと同じ衝撃をグサッと感じていただけると思います。メイドと言えば推しも必要かと思いますので、ぜひ推しメイドを見つけて、グッズもご覧いただけると嬉しいです!
インタビュー・文/宮崎新之